質問主意書

第71回国会(特別会)

質問主意書


質問第一号

水産加工団地の排水処理に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十七年十二月二十五日

峯山 昭範      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   水産加工団地の排水処理に関する再質問主意書

 昭和四十七年十一月十三日に提出した水産加工団地の排水処理に関する質問主意書に対する政府の答弁書の内容については多くの疑点がある。よつて左記の諸点について再度質問する。

一、一についての答弁のうち
(一) 排水処理施設がその機能を発揮することができなかつた理由として、当初設計上の排水の水質および量と実際の排水の水質および量との間に大きな差があつたことをあげているが、実際は水質調査の時点で、公害防止事業団において誤りがあつたのである。即ち事業団は、水の汚染度は二、一三〇PPMと誤認し、これに基づいて排水処理施設を建設し、塩釜市に引渡したが、実際には水質の汚染度は一〇、〇〇〇~三五、〇〇〇PPMであつた。このため排水処理施設は効用のないものとなつた。塩釜市団地水産加工業協同組合はその施設改善に一億六千万円の自己負担を行なつたほか、これにより一億三千万円にのぼる営業損失を出している。このように地元においては莫大な経費がかかり組合は倒産に追い込まれている現況である。これは事業団が義務を誠実に履行しなかつたところにより、有形無形の損害を地元に転嫁しているものである。まずこの責任の所在を明確にしなければならない。
 また「加圧浮上機およびフロス処理機をつけ云々」と述べているが、これは排水処理施設が効用をなさないため、厚生、通産、農林各省係官、学識経験者をもつて構成する「基本構想検討委員会」を設け、排水の恒久的処理方法を検討し、その答申に基づいて取り付けられたものであるが、この工事費二億一千万円のうち、国、県の補助は七千万円であるのに対し、地元の市が三千五百万円、組合が一億円という大きな負担を行なつている。これも当初のずさんな調査、設計のミスに起因するものである。このよらなミスがなければ、地元に以上のような一連の負担はかからなかつたのである。政府答弁はこの点も明確にしていない。これを明確にするとともに、これらの負担は当然国が償うべき措置をとるべきではないか。
(二) 「当初建設した排水処理施設費について市の負担にならぬよう措置した」と述べているが、これも使用に耐えないものを転用するということで二千九百万円で市が引き取らせられたものである。これでも市に負担にならぬよう措置したといえるのか明確に見解を述べられたい。

二、共同処理施設の中に併設した化成工場にも欠陥装置の問題がある。この施設は一連の公害防止施設として付設したものであるが、稼動時より故障続出し、予期の生産効率を挙げることができず、結果的には解体処分して新しいプラントに代替している。この原因も事業団の機器選定が間違つた結果によるものと思うが、これに対する事業団の責任を明らかにすべきである。

三、二についての答弁で「排水処理など公害防止施設の費用は本来事業者が負担すべきものである」と述べているが、この排水処理施設は、全国初のテストケースとして国、県の提案指導のもとに建設されたものであり、これが機能しないことによつて地元において莫大な損害を蒙つたのであるから、市は当然これについて補償を受ける権利があると思うが、政府の見解を明らかにされたい。
 また産業一般において技術革新をするには実に膨大な研究費が必要であり、これの支出は群小企業では到底できるものではなく、また注目すべき技術上の新発明の少なからぬ部分は巨大企業によつているというのが実情であり、常識となつている。わが国は勿論、世界でも未開発な領域にある水産加工業からの排水処理施設について、市ならびに零細企業が命運を賭して取り組んでいる事業に対し、本来事業者が負担すべきものであるという原則論で片付けることはできない。政府の見解を再度明らかにされたい。

四、三についての答弁で「これまでの実験結果では、商品価値のある良質なものが得られている」と述べているが、商品価値のある良質なものが得られているとはどのような根拠に基づいているのか。魚油にしても、ソリューブルも粗悪品と思われるが良質であるという具体的な根拠は何か。実験結果の正確な資料を明らかにされたい。

五、塩釜の水産加工団地の排水処理施設は、その機能不全によつて地元水産加工業者は窮地に立つている。これも事業団の調査、設計のミスによるものであることは先に述べた。政府は、五についての答弁で「中小企業者に対しては、金融その他にわたつて公害防止のための施策を実施している」と述べているが、塩釜の場合は、組合の倒産により地場産業の壊滅に至つた後では手遅れであり速やかに特別な救済措置がとられて然るべきである。政府の見解を伺いたい。またこの施設が全国初のテストケースとしての役割をになつており、その成否が全国の水産加工業の振興に重大な影響を与えることを考えると、国の研究開発の一端として実施しても然るべきものともいえる。政府はこの塩釜の排水処理施設に関し、今後いかなる施策を実施していく方針か、具体的に述べられたい。