質問主意書

第68回国会(常会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質六八第一号
  昭和四十七年二月一日

内閣総理大臣 佐藤 榮作      


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員鈴木一弘君提出財政経済運営に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員鈴木一弘君提出財政経済運営に関する質問に対する答弁書

一について

 内外の経済情勢にかんがみ、今後の経済運営に当たつては、当面の景気停滞をすみやかに回復するとともに、対外均衡と国民福祉の向上を基本として、均衡のとれた成長を図ることとしたい。

二(1)について

 右のような経済運営により、四十七年度の国民総生産は九十兆五千五百億円程度、成長率は前年度比実質七・七%程度(沖縄の本土復帰による増加分を控除すれば七・二%程度)となり、遅くとも四十七年度の後半には、経済を安定成長の軌道に乗せたいと考えている。
 この場合における国民総支出の各項目の伸び率と構成比は次のように見込んでいる。

GNP各項目の伸び率と構成比

二(2)について

 先般の多角的通貨調整等により、国際経済においては均衡回復が期待され、またわが国輸出の伸びは四十七年度は八・六%程度の伸びと見込まれる。
 その際、資源の輸入依存度の高いわが国としては、今後とも輸出の安定的拡大が必要であるが、輸出構造の高度化多角化などを図ることによつて、国際的な摩擦の回避に努めてまいりたいと考えている。

三(1)について

1 昭和四十七年度予算の編成に当たつては、福祉社会の建設及び国際経済との調和という財政金融政策の基本的方向にのつとり、各種社会資本の整備、社会保障施策の充実、物価対策、環境保全対策など国民生活の充実向上のための諸施策の推進に重点をおいている。
2 社会資本の整備については、住宅及び上下水道、公園、環境衛生施設等の生活環境施設の整備を重点的に推進するほか、道路、港湾、空港その他の交通施設の整備、治山治水等の国土保全のための施策についてもそれぞれ大幅な増額を図つている。
3 社会保障の充実については、老人医療の無料化の実施、老齢福祉年金の大幅改善、その他老人対策の飛躍的な拡充を行なうこととしているほか、社会福祉施設の充実、障害福祉年金および母子福祉年金の改善、生活扶助基準の引上げ、身体障害者、児童、母子等の福祉対策、特殊疾患対策の充実など各般の施策に配慮している。
4 物価対策の充実については、ひきつづき低生産性部門の生産性向上、流通対策、生活必需物資等の安定的供給、住宅および地価対策等の各般の施策を積極的に推進することとしている。特に、野菜をはじめとする生鮮食料品の安定的供給と円滑な流通を図るため、生産、出荷、流通の各面にわたる施策を大幅に拡充することとしている。また、関税面においても、生活関連物資を中心に関税率の引下げを行ない、物価の安定に資することとしている。
5 環境保全対策については、下水道、廃棄物処理施設等の生活環境施設の大幅な充実、水質保全、大気汚染防止、騒音防止等のための諸施策の推進、公害防止事業団、日本開発銀行等の公害対策関係融資枠の大幅拡大、税制面における公害防止準備金制度の創設、公害防止施設特別償却の範囲の拡大など各般の施策を講ずることとし、また、国立公園内の民有地の買上げを進めるなど自然環境の保全にも配意している。

三(2)および(4)について

 昭和四十五年五月に策定された「新経済社会発展計画」においては、適正な経済成長を維持しつつ、国際的視点に立つ経済の効率化を推進するとともに、国民福祉向上のための社会開発を行なうことを課題としている。
 しかしながら、問一に述べたような内外環境の変化に伴つて従来の経済成長パターンを修正し、住宅・生活環境の改善、公害の防止、社会保障の充実等国民福祉向上に一層重点的な資源配分を行なうことが強く要請されるに至つている。
 このような状況にかんがみ、政府としては、四十七年度において、国民生活の質的充実を最大の課題とした新しい長期計画を策定し、国民福祉の向上のための政策の方向を明らかにし、その内容を実現してまいる所存である。

三(3)について

1 社会福祉施設の充実については、厚生省としては、四十六年度以降五カ年間に約三千五百億円(調整費五百億円を含む)をもつて、ねたきり老人・重度心身障害児(者)の施設整備、老朽木造施設の建替え等を重点的に推進したい所存である。
2 また、生活環境整備等については、立ち遅れた社会資本を充実し、国民福祉の向上を図るため、経済社会の発展のテンポに即応しつつ長期的観点に立つて各種の長期計画を策定している。すなわち
(1) 昭和四十六年度を初年度とする第二期住宅建設五箇年計画に基づき、五箇年間におおむね一人一室の規模を有する九五〇万戸の住宅の建設を図る。
(2) 昭和四十六年度を初年度とする第三次下水道整備五箇年計画に基づき、昭和五十年度末における処理区域面積普及率は三八%、処理人口普及率は五五%とする。
等の諸計画がある。
 さらに、次の長期計画を策定して、生活環境整備を図ることとしている。
(3) 昭和四十六年度を初年度とする第三次廃棄物処理施設整備五箇年計画を策定し、人口の著しい都市集中化及び生活水準の向上に伴う廃棄物の排出量の量的質的変化に対応する。
(2) 昭和四十七年度を初年度とする都市公園整備五箇年計画を策定し、都市公園約千七百ヘクタールを建設して都市計画区域内人口一人当りの都市公園面積を約四・二平方メートルとする。

四(1)について

 公債政策については、従来とも、経済動向等に即応した適切な運用を図つてきたところであるが、今後においても、経済金融情勢等を十分勘案しつつ、弾力的な公債政策の運用を図つてまいる所存である。

四(2)について

 経済動向等に即応し、公債政策を弾力的に運用するため、従来とも、景気好況期には、極力公債依存度の引下げを図つてきたところであるが、今後においても、再び好況期を迎え、相当な税の自然増収が見込まれる状況となれば、再び公債依存度の引下げに努めてまいる所存である。

四(3)について

 昭和四十七年度も基調的には金融緩和傾向が続くものと予想されること等の事情を考慮すると、国債の消化に特に困難はないと考えられる。
 昭和四十七年度の財政資金対民間収支の見通しについては、現在推計中であるが、現段階での概算では、おおよそ一兆円程度の散布超過と見込まれる。

五について

 政府は、従来から経済運営の最重点課題の一つとして物価の安定に取り組んできたところであるが、今後とも各般の物価対策を推進し、国民生活の安定に資することとしたい。当面の物価対策の重点としては、円切上げの効果による輸入価格の低下を消費者物価の引下げに結びつけうるよう輸入品の追跡調査を行ない、その監視指導体制の強化に努めるとともに生鮮食料品その他生活必需物資等の安定的供給の確保、低生産性部門の近代化、流通機構の合理化等の施策を一段と拡充する。
 関税政策や輸入制度等の運用に当たつても、物価対策の観点から十分配慮するとともに、競争条件の整備を引き続き推進する。
 公共料金については、資源配分の適正化等を図る見地からやむをえない範囲でその改定を行なうこととするが、極力抑制的に取り扱うという方針には変りがない。
 地価対策については四十五年八月の地価対策閣僚協議会決定事項を中心に、その進捗を図る。