質問主意書

第67回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質六七第一号
  昭和四十六年十二月十日

内閣総理大臣 佐藤 榮作      


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員塩出啓典君提出イオン交換膜法による製塩に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員塩出啓典君提出イオン交換膜法による製塩に関する質問に対する答弁書

一 合成樹脂は、ある種の化合物が、平面的あるいは立体的にいくつも化学的に結合してつながつたものであつて、このような重合現象によつて分子量が大きくなるにつれて硬質強靱で水不溶性のものとなる。一般には分子量が六千以上にも重合したものは強靱で溶解性が全くない。
  現在海水の濃縮に使用されているイオン交換膜は、スチレンとジビニルベンゼンを高分子重合(分子量百万以上)させたものであり、海水濃縮の過程においても物理的、化学的に極めて安定度は高く、溶解するおそれはない。又、イオン交換膜製造の過程で使用される可塑剤、重合触媒についても有機溶剤等による長時間の抽出及び洗浄によつて、イオン交換膜の製品化の過程で十分取り除かれている。
  これらのことから、海水の濃縮に使用されるイオン交換膜が人体に悪影響を及ぼすおそれはない。

二 イオン交換膜の構成成分は一に述べたとおり水に溶出しないため、人体に悪影響を及ぼすおそれはないので、イオン交換膜法は、すでに欧米諸国においても飲料水の製造、牛乳、ジュースの加工等の分野で広範に利用されている。

三 イオン交換膜法による塩は人体に安全であるうえ、最近の海水汚染に対しても、イオン交換膜法は、イオン交換膜の性質を利用して有害金属成分を大幅に減少させることができるという点で塩田法にない利点を有する。
  したがつて、政府としては、従来の塩田法からイオン交換膜法への転換を延期する必要はないと考える。

四 公社は国内の並塩及び食塩の需要に対し、今後、イオン交換膜法による塩を供給することとしているが、原塩、粉砕塩、精製塩、食卓塩等の需要に対しては、従来どおり、塩田法によつて製造された原塩を輸入し、原塩のまま、又はこれを加工精製して販売することとしている。

五 なお、イオン交換膜法と塩田法との差異は、塩田法においては、海水中の水分を太陽熱と風力により蒸発させて塩分の濃厚なかん水をつくるが、この工程を、イオン交換膜法によれば、海水中にイオンとして存在している塩等の成分を電気エネルギーにより移動させ、その際海水中の中間にイオンを選択的に透過させる性質をもつているイオン交換膜を置くことにより、海水を濃縮してかん水をつくる点にある(かん水をかまで煮つめて塩の結晶をつくるせんごう工程は両方法とも同じである。)。
  上記のイオンの移動は物理現象であり、したがつて、イオン交換膜法は、塩田法と同様、化学的合成や化学的処理により塩を製造するものではない。