質問主意書

第67回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

イオン交換膜法による製塩に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十六年十二月三日

塩出 啓典      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   イオン交換膜法による製塩に関する質問主意書

 専売公社は、昭和四十七年三月までに現在の塩田式製塩法を全面的に廃止して、イオン交換膜による製塩法に転換しようとしている。その理由は、イオン交換膜法による製塩の方が従来の塩田式製塩より生産コストが安く、国際競争に耐えることができるということであると考えられる。
 最近国民の一部から、イオン交換膜法による塩の人体に対する安全性についての疑問が出され、その安全性についての動物実験等を実施し、その安全性がはつきりと保証されるまではイオン交換膜法による塩を食用に用いるべきでないという声が出ている。
 専売公社より発行されている「塩と健康問題の解説」においては、イオン交換膜法による塩について、その成分の上から考えてもまたイオン交換膜成分の溶出という点から見ても全く危険はないと述べている。
 食品の安全性は、こと人命に関するものであり、もつとも慎重にとり扱われなければならず、とくに食塩のようにすべての人が毎日必要とするものにおいてはなおさらのことであると考えられる。ゆえに、イオン交換膜法による塩の安全性をただ成分の上からのみ考え、机上において断定することは、慎重さを欠いているといわなければならない。極めて微量の重金属が恐るべき公害病の原因となり、また、未精製の砂糖より精製したものの方が虫歯の発生の原因となりやすい等の事実からも明らかであるといえる。またイオン交換膜法により製造された塩が食用に用いられるのは世界各国に例をみないといわれている点からも、政府の慎重な態度が望まれるのである。
 以上のような趣旨により政府に対し次の質問をする。

一、イオン交換膜法による塩の安全性については、先にあげた専売公社の「塩と健康問題の解説」が述べているが、その内容は先述のとおり満足すべきものとはいえない。食品の安全性を担当する厚生省はどう考えているのか。

二、イオン交換膜法による塩の安全性についての動物実験等の調査研究のデータにはどのようなものがあるのか示してほしい。もし不充分ならば、このような実験研究を早急に実施すべきと思うがどうか。

三、イオン交換膜法による塩の安全性がはつきりと保証されるまでは、従来の塩田式製塩法からイオン交換膜による製塩法への転換は延期すべきであるとの意見があるがどうか。

四、イオン交換膜法による塩よりも少し高い価格であつても、従来の塩田式製塩法による塩がほしい人たちが、その塩を自由に購入できる道を残してほしいとの要望がある。しかし現在の法律ではそのような道は事実上閉ざされている。この問題についての政府の見解を聞きたい。