質問主意書

第65回国会(常会)

答弁書


答弁書第四号

内閣参質六五第四号
  昭和四十六年四月二十七日

内閣総理大臣 佐藤 榮作      


       参議院議長 重宗 雄三 殿

参議院議員木村禧八郎君提出中国産調整食肉輸入に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員木村禧八郎君提出中国産調整食肉輸入に関する質問に対する答弁書

一 ハム、ソーセージおよびベーコンは、その種類、規格が加工工程によつて極めて多様であり、骨付きのものや生肉に近いものもあり、口蹄疫ウイルス等の病原体が残存するおそれがある。

二 従来はこれらの輸入量は少なかつたが、昭和四十三年頃から輸入量および仕出国が増加する傾向にあり、口蹄疫等の侵入の危険性も高まつたので昭和四十四年三月に省令を改正して、ハム、ソーセージおよびベーコンを指定検疫物に加え、家畜衛生上の必要な規制を行なうとともに、検疫にあたつては、生肉の輸入禁止地域から輸入されるものについては、加工処理の工程において十分な措置が行なわれたことを確認することとし、当該措置の行なわれたことが確認されないものについては、病原体を拡げるおそれのある物として取扱うこととしたものである。

三 輸入割当をうけて輸入された物資であつても食品衛生法、家畜伝染病予防法等の関係法規の適用をうけることは当然であり、輸入割当が割当物資をすべて無条件に通関させることを保証するものではない。
  東栄商行が昭和四十五年三月に輸入した中国産ハムについては、家畜伝染病予防法第四十条の規定に基づく輸入の届出がなされず、同条の規定に違反してたまたま未検疫のまま国内に持ち込まれたものである。
  なお、ポルトガル、チエコスロバキヤ、ベルギー、西独、スイス等からの輸入については、万国博覧会用に供するものとして、厳しい監督のもとに会場内での消費に限り(骨等の残渣はすベて焼却)輸入を認めたものである。

四 今回輸入されたハムについての動物検疫上の取扱いについては、本国等への移送等を行なわなければ、家畜伝染病予防法第二十三条の規定により、焼却、埋却又は消毒することとしており、今までもかかる事例については、本国等への移送、焼却等を行なわせてきている。しかしながら、今回の事例については、省令改正の趣旨が徹底していなかつた事情もあるので、今回に限つて十分監視できる体制のもとに、特定の場所において骨付きのまま煮沸(骨の部分はすべて焼却)し、特定の用途にのみ使用するということで消毒の措置に代えることができないかどうか検討したことは事実である。なお、今後かかる事態が発生しないよう今年度に入つてからもさらに公報等によりその旨の周知徹底をはかつたところである。

五 口蹄疫ウイルスの耐熱性について、摂氏八十五度、四時間の煮沸に耐えた実験例を指摘されているが、これは口蹄疫にかかつている牛の病変部のみを実験した結果で、病変部以外の肉についての実験ではなく、このような事例は、特殊な条件のもとの試験事例としてはあり得ても、実際問題としては、現在アルゼンチン煮沸肉に付している条件(生前死後の検査で正常な家畜の肉の中心部位が摂氏七十度以上 一分以上となるよう、摂氏百度に近い温度で三時間以上煮沸すること等)が確実に実施される限りその安全性については全く問題がないと考えており、このことは国際的にも十分認められているところである。

六 わが国の口蹄疫等海外悪性伝染病の侵入防止措置については、ハム、ソーセージおよびべーコンの取扱いを含めて、諸外国における悪性伝染病の発生状況に応じて家畜衛生の技術的見地から措置しているのであつて、とくに、中国とその他の諸外国を区別しているものではない。