質問主意書

第65回国会(常会)

質問主意書


質問第四号

中国産調整食肉輸入に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十六年四月二十日

木村 禧八郎      


       参議院議長 重宗 雄三 殿



   中国産調整食肉輸入に関する質問主意書

 中国の家畜衛生事情については前後三回にわたる調査が行なわれ、特に一九六六年の中国家畜衛生調査団・元農林省畜産局衛生課長田中良男氏の報告より判断すれば、一九六二年以降中国においては「口蹄疫」が消滅されている事実が確認されたばかりか、その防疫体制は完ぺきであることが証明されている。
 それにもかかわらず政府は禁止を解く何らの措置を講じないばかりか逆に過去無条件で許可してきた中国産「金華ハム」の輸入をも締め出す新たな妨害を加えてきている。

一、この妨害は神戸港において惹起された。
 即ち昭和四十六年二月九日付動物検疫所神戸支所指示書によつて、在神戸東栄商行の輸入した中国産「金華ハム」一〇トンについて、これを輸出国たる中国に積戻すよう命じたのである。
 当方の調査によればこの指示書は、昭和四十四年三月二十四日付畜産局長名の各港動物検疫所長宛通達に基づくものと判明した。
 本通達によれば中国よりのハム、ソーセージ、べーコンは、これをできるだけ輸入させない方向で業者を指導するよう要請しており、これにより従来外貨割当さえ保有していれば無条件に輸入できたものが、実質上輸入禁止品目となつたわけである。
 しかしこの通達は、完全に実施されてこなかつたのが現状である。
 事実、東栄商行は通達下達後、通産省よりライセンスを取得し、昭和四十五年九月に九〇〇キログラムの輸入を行なつている事実があるし、この他にもポルトガル、チエコ、ベルギー、西独、スイス等、輸入を禁止すべき地域の商品をも輸入許可しているのである。
 この事実に対する農林省の見解はどうか。

二、農林省畜産局は、神戸港に保管中の当該品目につき、日本国際貿易促進協会食肉委員会の抗議に際し、今回限り表面上の簡単な消毒により通関を許可するとの方針を持出してきているが、これは従来同省が主張する「口蹄疫ウイルス」は骨の部分に残存する可能性が強いという考え方と、根本的矛盾をきたすことにならないか。
 何故ならば、表面消毒のみでは、農林省の心配するウイルスの死滅は全く期待できないからである。農林省はこれと全く同じ発想で、アルゼンチンの煮沸肉を解禁した。
 参考までにいえば、煮沸肉はその中心温度が摂氏七〇度一分間に達すれば良いとの条件で解禁したが、同省監修の小冊子「口蹄疫」によれば摂氏八五度四時間の煮沸にも、「口蹄疫ウイルス」は耐えた事実のあることを報告している。
 この矛盾を如何に釈明するか。
 因みにアルゼンチンは「口蹄疫」の常在地区である。

三、以上の観点からすれば常に同省がいう
 「口蹄疫の侵入には万全を期す」
 「疑わしきは罰する」
 「万が一を考えての処置」
との方針を他国にはゆるく、中国については必要以上に厳格との不公平のそしりはまぬがれ難く省令と行政とが矛盾している。
 この点は如何に考えているか。

  右質問する。