質問主意書

第62回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

日米共同声明と安保・沖繩問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十四年十一月二十九日

春日 正一      


       参議院議長 重宗 雄三 殿



   日米共同声明と安保・沖繩問題に関する質問主意書

 佐藤総理とニクソン大統領との会談で発表された日米共同声明は、安保条約と沖繩問題という日本の主権と安全、アジアの平和にかかわる重大な内容をもつている。しかも、きわめて重要な問題について、日米両国の見解が異なるなど、看過できないものがあるので、その全容をあきらかにするため以下、当面解明することの必要な若干の問題について質問する。

一、「極東の安全」問題について

1 共同声明では、佐藤首相が極東における米国の防衛条約上の義務を「十分に果たしうる態勢にあることが極東の平和と安全にとつて重要であることを強調」し、「米軍の極東における存在がこの地域の安定の大きなささえとなつているという認識」を表明した。そして、「極東の諸国の安全は日本の重大な関心事である」として、沖繩の施政権返還にあたつては、「日本を含む極東の諸国の防衛のために米国が負つている国際義務の効果的遂行の妨げとなるようなものでない」ことを条件とされている。米政府筋は二十一日、「今度の佐藤・ニクソン共同声明全体の文脈からいえば、事前協議はいつも否定的とはいえない」とのべている。
 共同声明で佐藤首相が表明している以上のような立場からいえば、米国が事前協議をもちだすのは、当然、極東で負つている国際義務の遂行上の必要を理由としてくることは明白であり、日本政府がそれを拒否すれば、米国が「防衛条約上の義務」を「十分に果たしうる態勢にある」とはいえなくなる。したがつて、事前協議で拒否することは実際上できないのではないか。
2 佐藤首相はナショナル・プレスクラブでの演説で「事前協議について、日本を含む極東の安全を確保するという見地に立つて同意するか否かを決めることが、わが国の国益に合致する」とのべている。これは、これまでの政府見解と明らかにくいちがつている。すなわち、一九六〇年五月十二日、当時の岸首相は、「事前協議にあたつての日本の態度は、日本の平和と安全に直接に、また極めて密接な関係をもつ事態に対しては米軍に基地使用を認めるが、そうでない場合は拒否する考えである」(衆議院安保特別委員会)と答弁し、愛知外相も本年六月十七日「国家の安危に関するもの、そうして、日本国の安危に直接関係するような周辺の事情、こういうことが国益の基準として、ケース・バイ・ケースに判定されるべきではないか」(参議院外務委員会)とのべている。今回の佐藤首相の発言は、これまでの事前協議における応諾を与える基準についての、政府見解を大幅に拡大し、極東の安全、即日本の国益として、米軍の自由行動の道を大きくひらいたものと言わなくてはならないと思うがどうか。また、これは、安保条約第六条の実施に関する交換公文で取決められた事前協議制度の実質的変更であり、したがつてまた日米安保条約の事実上の改定を意味するものではないか。
3 佐藤首相は、本年六月十九日の衆議院内閣委員会で「沖縄返還後、事前協議でイエスをいえば沖繩の米軍だけでなく東京も攻撃をうけることになるから、事前協議に対するイエス、ノーはよほど慎重でなければならない」と答弁しているが、佐藤首相のナショナル・プレスクラブにおける事前協議に関する見解は、あきらかに「イエス」ということである。これは佐藤首相の先の発言にてらせば、米国が戦争する相手国から日本が攻撃される危険を意味していると思うがどうか。
4 今回の日米首脳会談を前にして続けられていた秘密交渉のなかで、米国側は返還後の沖繩を含めた日本からの米軍の自由発進の保証について、緊急時を想定した百ちかくにものぼる膨大な具体例をリストにして日本側に提出して検討を進めたと報じられているが、その全容はいかなるものであるか。
5 共同声明で日本が米国の防衛条約上の義務を「十分に果たしうる態勢にあること」を重要であると認め「米国の負つている国際義務の効果的遂行」をうたつたことは、日本が調印していない米国の相互防衛条約の義務の遂行を保障する役割りをはたす約束をしたことを意味するものではないか。このような重大な約束をおこなつてくることは、許すことのできない越権行為であると思うがどうか。
6 共同声明でうたつている「韓国の安全は日本自身の安全にとつて緊要である」、「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとつてきわめて重要な要素である」との見解は、沖繩の施政権返還後はもちろん、それ以前、すなわち、現在の日米安保条約の運用にたいする日本政府の態度をも示したものであると考えるがどうか。
7 韓国、台湾、サイゴンのかいらい政権をアメリカの軍事行動に追随してあくまでも守ろうとする共同声明にうたわれた政府の態度は、朝鮮人民、中国人民、ベトナム人民の民族自決の権利にたいする不当な侵害であり、内政干渉ではないか。
8 共同声明では、日米安保条約の堅持とともに、「両国政府の日本を含む極東の平和と安全に影響を及ぼす事項及び安保条約の実施に関し、緊密な相互の接触を維持すべきことに意見の一致をみた」ことを明らかにしている。これは、「日米共同作戦」態勢の質的な強化、拡大のために、日米統合司令部などの設置を含む広範な軍事協議の恒常化を意味するものではないか。
 もし、愛知外相の説明どおり「これは今までと同様」であるとするならば、今日まで、「日本を含む極東の平和と安全に影響を及ぼす事項」について「緊密な相互の接触」を行なつていた協議機関、その構成、協議の内容について明らかにされたい。
9 有田防衛庁長官は、本年十月八日、衆議院内閣委員会で、外国の攻撃にたいして、自衛隊を「公海、公空で排除する体制」にしたいと言明し、他の場所では「公海や公空でこれを排撃できるのは当然であり」「今後は陸上も大事だが、海空に力を入れなくてはならないと考え、そういう方向で四次防を作れと指示した」(十一月六日付「朝雲」紙)とのべている。
(1) いつたい自衛隊が公海、公空まで出動できるとする根拠は何か。
(2) また、その際の公海、公空の範囲はどこに限度があるのか。
(3) 防衛庁はすでに護衛艦への艦対艦、艦対地ミサイルの装備、原子力潜水艦の保有やファントムジエット戦闘機に爆撃装置をつける必要について検討していると報じられているが、これらは、有田防衛庁長官のいう方向での四次防の方針にそうものかどうか。
(4) また、「国家安全保障会議」を設置する考えはあるか。
(一) 朝鮮問題について
1 共同声明では、「朝鮮半島に依然として緊張状態が存在する」ことに、佐藤首相とニクソン大統領は一致して「注目」している。しかし、この「緊張状態」はプエブロ号事件、EC121型機事件などで明らかな通り、アメリカの日本を拠点とした侵略的軍事挑発行為と、朝鮮「国連軍」という名の在「韓」米軍と、「韓国」軍の挑発策動によつてひきおこされたものにほかならない。にもかかわらず、政府はこの明白な事実をおおいかくし、「北朝鮮の武力統一方針」なるものを宣伝して(総理府発行「日本の安全を守るには」)、その責任を朝鮮民主主義人民共和国におしつけようとしている。だが、朝鮮民主主義人民共和国は、最近の金日成首相の発言(昨年九月の共和国創建二十周年記念報告、本年九月のフィンランド民主青年同盟代表団の質問にたいする回答)などでも示されているように、一貫して、「自主的、民主的原則にもとづく、平和的統一」の方針を明らかにしており、「武力統一方針」などは、一度もとつたことがない。いつたい政府は「朝鮮半島の緊張」の根源は何であると考えているのか、またその根拠を具体的に明らかにされたい。
2 佐藤首相は共同声明で、朝鮮における「国際連合の努力を高く評価」している。そして、「韓国の安全は日本自身の安全にとつて緊要である」とのべ、ナショナル・プレスクラブでの演説では、「万一韓国に対し武力攻撃が発生し」米軍が日本国内の基地を使用する際には、「事前協議にたいし、前向きにかつすみやかに態度を決定する方針である」と公言している。また帰国直後の記者会見で佐藤首相は朝鮮での事態を「対岸の火災視できない」との前提から、「国連軍が攻撃された場合には、日本の立場と国際協力の立場から対処する」旨を表明している。いうまでもなく「韓国」の「国連軍」とは事実上、米軍と変らない。
(1) このことからして、政府は「韓国」における「国連軍」としての米軍には、他の地域の米軍との間に区別を設け、事前協議における諾否の基準をさらにゆるめ、事実上「イエス」を予約していると考えられるがどうか。安保改定当時、岸首相は「国連軍」の場合は「ある種のゆとりをもつて考えるべきである」(一九六〇年五月一二日衆議院安保特別委員会)と答弁しているが、佐藤内閣の態度はどうか。
(2) さらに「日本の立場」で国連に協力するという場合に、自衛隊の協力をも含めていると思うがどうか。「国連協力」という名での自衛隊の海外派兵は絶対にないと断言できるかどうか。また、「公海、公空で排除する」という有田防衛庁長官の発言があるが、海上自衛隊、航空自衛隊が朝鮮海域、空域に出動することはありえないか。
3 政府はこれまで「韓国」における「国連軍」が軍事行動を起こすには国連における新しい決議が必要であるとしてきたが、国連軍の「自衛権の行使」としての軍事行動は、国連の決議をまたずに起こすことができると考えるか。
4(1) 「国連軍」が「自衛権の行使」として軍事行動を起こした場合、政府は、「国連軍」(米軍)の在日米軍基地の戦闘作戦行動での使用を事前協議で認めるか。
(2) 国連の新しい決議にもとづいて「国連軍」が軍事行動を起こした場合はどうか。
(3) また、米韓相互防衛条約第三条(武力攻撃に対する措置)が発動した場合はどうか。
 各々について明確に答えられたい。
5 佐藤首相は「韓国に武力攻撃が発生し」た場合に、米軍の基地使用を「前向き、かつすみやかに態度を決定する」とのべているが、もし「韓国」軍が休戦ラインをこえて「北進」した場合にも、同様の態度でのぞむのかどうか。
6 朝鮮で「国連軍」(米軍)が軍事行動を起こした際、「国連軍」(米軍)による日本の基地の自由使用に制限を加えることは、「米国が負つている国際義務を米国が十分に果たしうる態勢にある」ことにならなくなるのではないか。
(二) 台湾問題について
1 佐藤首相は共同声明で「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとつて「きわめて重要な要素である」とのべ、ナショナル・プレスクラブでは、米台条約が発動されるような事態は「わが国を含む極東の平和と安全を脅かすものとなる」として、事前協議では「日本を含む極東の安全を確保するという見地に立つて同意するか否かを決める」という「認識をふまえて対処して行く」とのべている。このことは、米台条約発動の際は米軍の日本からの戦闘作戦行動を認めることを意味するものと考えざるをえないがどうか。
2 かつて岸首相は、「金門、馬祖のような事態であるならば、日本の平和と安全に直接密接な関係があるとは考えない」(一九六〇年四月一日衆議院安保特別委員会)と答弁したが、今回の共同声明の「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとつてきわめて重要な要素である」との文言とは明らかに相違がある。台湾地域に関して事前協議の解釈を拡大したものと考えるがどうか。
3 米台条約が発動した際、米軍の日本の基地使用に制限を加えることは、「米国が負つている国際義務の効果的遂行」を妨げることにならざるをえないではないか。
(三) ベトナム問題について
1 現在、米軍による南ベトナムのクアンガイ省ソンミ村での大量虐殺事件が全世界に衝撃を与え、アメリカのベトナム侵略戦争の本質があらためてさらけだされている。ところが、佐藤首相は共同声明において、米国のベトナム政策を全面的に支持し、ナショナル・プレスクラブでは「米国が払つてきた犠牲」と「誠実な努力」に敬意を表するとともに、米国の立場に深い理解を抱いた」とのべている。首相は帰国後の記者会見でも「十一月三日のニクソン大統領の演説をはつきり確認してきた」とのべている。
(1) 政府はソンミ村の大量虐殺事件におけるアメリカの凶悪な残虐行為をも支持し、敬意を表するのか。もし、この残虐行為を認めないならば、ただちに米国政府に抗議すべきだが、その意思があるか。
(2) このような大量虐殺事件はソンミ村だけにとどまらない。アメリカのベトナム戦争そのものが、ベトナムの全住民を敵とする非道、邪悪な侵略戦争にほかならない。今回の事件はこのことをだれの目にもはつきりと露呈したが、日本政府はなおかつ残虐行為をかさねるアメリカのベトナム侵略戦争を支持し、協力しつづけるつもりか。
2(1) B52による無差別爆撃、毒ガス、細菌兵器、ボール爆弾その他の凶悪兵器の使用などは、ソンミ村大量虐殺と同じベトナム人民にたいする非道、凶悪な残虐行為にほかならない。わが国の領土沖縄からB52出撃をただちにやめさせるべきだが、政府はいかなる措置をとつたか。
(2)共同声明では、B52の沖繩からの発進に反対する意思表示すらされていない。沖繩の施政権返還にあたつても、「南ベトナム人民が外部からの干渉を受けずにその政治的将来を決定する機会を確保するための米国の努力に影響を及ぼすことなく」との留保条件がつけられているが、現在、ベトナム爆撃をつづけているB52の沖繩からの発進を日本政府は「米国の努力」として評価しているのか。
3 佐藤首相はナショナル・プレスクラブでの演説で、インドシナ地域における役割りとして「国際平和維持機構にも、求められれば日本の国情に合致した方法で参加、協力すべきもの」とのべているが、この「国際平和維持機構」とは具体的にいかなる内容のものをさしているのか。また「日本の国情に合致した方法」とはどういう方法か。
4 共同声明では日本政府の「アジアに対する援助計画の拡大と改善を図る意向」と、「べトナム戦後におけるベトナムその他の東南アジアの地域の復興を大規模に進める」ために「相当な寄与を行なう」意図を明らかにしているが、その具体的構想を明らかにされたい。

二、沖繩問題について

1 沖繩は、サンフランシスコ「平和」条約第三条を唯一の根拠にして、アメリカに全面占領されてきた。しかるに、同条項は「領土不拡大の原則」をとりきめたカイロ宣言、ポツダム宣言に完全に違反し、国連憲章にさえ、明白に違反したものであり、アメリカの沖繩占領はまつたく不法、不当なものである。したがつて、日本国民は、沖繩の即時、無条件、全面返還を要求する完全な権利をもつている。
 ところが、共同声明では、「極東の諸国の安全は日本の重大な関心事である」との日本政府の認識を表明し、「沖繩にある米軍が重要な役割を果たしている」ことを認めたうえで、「日本を含む極東の安全をそこなうことなく」、また、極東で「米国が負つている国際義務の効果的逆行の妨げとなるようなものではない」ことを条件に、「一九七二年中に沖繩の復帰を達成するよう」「具体的取決め」に関して協議することに合意している。
 ここには、一九七二年返還が明記されていないばかりか、この時期までにべトナム戦争が終結しない場合には再協議するとの留保条件がつけられている。しかも、「沖繩の局地防衛の責務」を日本が負うことや、膨大な米軍基地の存続とその「機能を有効に発揮すること」(愛知外相説明)の承認が欠かせない前提とされている。
 これは、条件つき返還ではないか。これらの条件、前提が満たされなかつた場合、「七二年の施政権返還」は延期されるのか。
2 共同声明において、沖繩の施政権返還は「日本を含む極東の安全をそこなうことなく」との条件がつけられているが、カイロ宣言、ポツダム宣言にてらせば、沖繩はいかなる条件もつけず、日本に全面返還されてしかるべきものである。不法なサンフランシスコ「平和」条約第三条においてさえ、沖繩返還に「極東の安全」の条件をつけるなんらの根拠もない。
 いつたい、共同声明において、「日本を含む極東の安全をそこなうことなく」との「条件つき」で沖繩の施政権返還の協議をはじめることに合意した根拠はどこにあるか
3 共同声明では、「沖繩返還予定時」にべトナム戦争が継続している場合には、「米国の努力に影響を及ぼすことなく」再協議することに合意している。この協議は、沖繩の施政権返還の時期をさらにおくらせるか、それとも復帰後の沖繩からのB52出撃など米軍の基地の自由使用をひきつづき認めるかのどちらかにならざるをえない。
(1) もし、政府のいうように「七二年返還」が確実ならば、この協議で米軍の基地自由使用を認め、日本がアメリカのベトナム侵略戦争の公然たる参加国となることを意味している。また、この際、もし、B52の出撃をはじめ米軍基地の自由使用を拒否すれば、「米国の努力に影響を及ぼす」ことになり、さらに「米国が負つている国際義務の効果的遂行」の妨げとならざるをえない。したがつて「七二年返還」により、政府は、沖繩の米軍基地からの出撃を認めざるをえないと考えられるがどうか。
(2) もし、施政権返還後の「沖繩からのB52など米軍のベトナム出撃を認めることがあるとするならば、それは、日米安保条約の「フィリピン以北」とされている「極東の範囲」を拡大することになると思うがどうか。
4 米台相互防衛条約の付属交換公文では、「両国の共同の努力及び貢献の所産である軍事力は、相互の合意なくして、第六条に掲げる領域の防衛力を実質的に低下させる程度までその領域から移動しないものとする」と明記されている。いうまでもなくこの交換公文にいう「第六条に掲げる領域」には、現在、沖繩が含まれている。したがつて、米国は沖繩の「防衛力を実質的に低下させる程度まで」「移動しない」義務を負つており、ニクソン大統領は共同声明において「中華民国に対する条約上の義務」の順守をうたつている。しかも、佐藤首相は、共同声明で、米国の極東における「防衛条約上の義務」を「米国が十分に果たしうる態勢にあることが極東の平和と安全にとつて重要である」ことを強調し、さらに、沖繩の施政権返還が「米国が負つている国際義務の効果的遂行の妨げとなるようなものではない」との見解を表明している。
(1) 以上のことからして、米台条約上の義務について、日本政府は無関係ではありえず、また、沖繩の施政権返還においては、現在の沖繩の米軍基地と米軍の全機能をそのまま維持することが前提条件にされていると考えざるをえないがどうか。
(2) 愛知外相は、沖繩基地の「整理統合」をいつているが、現在、沖繩では米軍基地の増強工事があいついで行なわれており、そのなかには、核基地の強化、拡大工事も含まれているといわれている。
 政府は、これら米軍基地の増強工事をやめさせる意思はないか。
(3) 共同声明では、沖繩の施政権返還にあたり、「日米安保条約及びこれに関連する諸取決めが変更なしに沖繩に適用される」とされているが、この「諸取決め」とは具体的になにをさすか。そのすべてを列挙されたい。また、当然、「地位協定」も「変更なしに」適用されると思うがどうか。
(4) さらに、安保条約と関連取決めを現在の沖繩の米軍の「機能をそこなわない」ように「適用」するために、国内法の改訂を考えていると思われるが、防衛二法、警察法その他の改訂を考えているかどうか。また「機密保護法」その他の治安立法の制定はありえないと断言できるかどうか。
5(1)共同声明において、佐藤首相は「復帰後は沖繩の局地防衛の責務は日本自体の防衛のための努力の一環として徐々にこれを負う」意図を明らかにした。これは、愛知外相の説明では「最善のペース」で実現されるとしているが、共同声明によれば、沖繩の施政権返還は「日本を含む極東の安全をそこなうこと」は許されないのであり、「日米両国共通の安全保障上の利益は、沖繩の施政権を日本に返還するための取決めにおいて満たしうることに意見が一致」していることからして、当然、今回の日米交渉において、「沖繩防衛」の構想や日本の「防衛力」増強計画が提示されたものと考えられる。その「沖繩防衛」構想、「防衛力」増強計画、および日米間で協議されている「日米共同防衛」態勢について具体的に明らかにされたい。
(2) また、沖繩の施政権返還に関する「具体的な取決め」には、軍事的内容、すなわち、これら日米間で協議された「沖繩防衛」構想の内容も含まれると考えるがどうか。
6 二十四年間にわたるアメリカの沖繩占領は、沖繩県民の生命、財産に重大な危害を加えた。沖繩返還にあたつて、政府はなによりも沖繩県民の意思を尊重し、利益を擁護しなければならない。しかるに、共同声明では、沖繩県民の即時、無条件、全面復帰の声を無視しただけでなく、施政権返還の準備作業は、「日米協議委員会」に責任をおわせ、それへの「報告及び勧告」を行なう「日米準備委員会」に「琉球政府」主席を“顧問”として加えているにすぎない。
(1) これは、沖繩問題のなによりの当事者である沖繩県民の意思が、復帰にともなう諸措置の決定過程からあらかじめ排除されていることを示すものではないか。
(2) また、沖繩の施政権返還にともなう「財政及び経済上の問題」においては「米国企業の利益」についてのみ明記し、完全に弁償すべき沖繩県民の損害については、なんらふれられていない。政府はこれまでに沖繩県民が被つた損害の補償についていかなる措置を考えているか。
(3) 沖繩の施政権返還の「取決め」を締結する際、アメリカにたいする正当な請求権を放棄した「小笠原返還協定」のような、卑屈な対米従属の態度は許されない。当然、アメリカに損害補償を請求すべきだが、どうか。
(4) また、沖繩における米国資産の「買い取り」は認めるべきでないと考えるが、どうか。沖繩米軍基地の建設費はじめ、極東侵略のための投資、不当な占領下で沖繩県民が搾取された結果の米国資産などを、日本国民が「買い取る」ことは、二重、三重の米国への従属的行為ではないか。

三 核問題について

1 政府は、共同声明によつて、「本土の非核三原則がそのまま沖繩に適用される」「沖繩の核ぬき返還が明らかにされた」「有事核持ち込みはありえない」とのべている。
 しかるに、共同声明第八項では、総理大臣が「日本政府の政策」を説明し、大統領がこれに「理解」を示したというにすぎず、沖繩からの核兵器撤去も、非核三原則も明記されてはいない。佐藤首相もまた、「あるともないともいわないのが核だ」と「核かくし」の態度をくりかえし明らかにし、沖繩における核兵器存続の道をのこしている。
 さらに、「日本政府の政策に背馳しない」という大統領の「確約」にしても、「日米安保条約の事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく」との条件がつけられている。
 このことは、米国務省筋が「これは緊急時に米国が再び核を持ち込み得ることを意味するものだ」と説明し、米政府筋も「緊急事態発生のさい、事前協議で日本側がいつも否定的な態度をとるとは限らない」と発言していることから明らかなとおり、日本政府が「有事核持ち込み」を容認したことを示しているといわざるをえない。
 いつたい、沖繩からの核兵器撤去、施政権返還後の核兵器持ちこみ禁止に対する保障はどこにあるか。
2 佐藤首相は、ニクソン大統領に説明した「日本政府の政策」が「非核三原則」であるかのようにのべている。
 しかし、これまで政府が国会を通じて、明らかにしてきた「核政策」とは、けつして「非核三原則」だけが単独でうちだされたものではない。
 すなわち、昨年一月、佐藤首相が表明した「核政策の四本柱」では、とりわけ「日米安保条約に基づくアメリカの核抑止力に依存する」ことが優先されており、「非核決議」をすることは、「安全保障条約の中身について拘束を加えることになる」「アメリカの行動を制限することになる」(昨年三月二日衆議院予算委員会、松本善明衆議院議員に対する佐藤首相答弁)とまで、公言し、共産、社会、公明三党が共同提案した「日本の非核武装と核兵器禁止に関する決議案」に反対している。また、本年一月には「沖繩を含めて、米国の核抑止力があつたから非核三原則をうち出せた」との見解を積極的に明らかにした。
(1) いつたい佐藤首相は、ニクソン大統領との会談で、「アメリカの核抑止力に依存する」との政策は放棄し、「非核三原則」だけを「詳細に説明した」のかどうか。
(2) また、もし、政府が「非核三原則」をきびしく守る立場であるなら、いつさいの核武装と核兵器および核運搬手段のいつさいの使用、実験、製造、貯蔵と、外国からのあらゆる形のもちこみを禁止する「核兵器禁止法」を制定すべきであるがどうか。
3 共同声明にいう「日米安保条約の事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく」とは、愛知外相の説明によれば、核兵器の日本への導入は「事前協議の対象となるべき性質の問題であること」を確認したものであるとし、その際、日本政府は非核三原則により「これを断わる」との方針をのべているが、それが明らかになつているなら、米政府筋が、この項に関連して「佐藤首相も愛知外相も事前協議はイエスもノーもありうるとしばしばいつている」と言明するはずもない。
 ここでは明らかに、核兵器の持ちこみについては事前協議ですべて拒否するとのこれまでの政府の方針をくつがえし、応諾することもありうることを認めたとしか考えられない。
(1) もし、そうでないなら、なぜ共同声明に核兵器の日本導入を拒否すると明記できなかつたのか。
(2) また、米政府筋が公言していることが、共同声明の内容に相違しているというのであれば、なぜ米国政府に公式に抗議し、その発言を取り消させないのか。
4(1) 現在、沖繩に存在する核兵器のうち、旧式になつたメースBを近く撤去し、これによつて政府は「沖繩に核がなくなつた」と宣伝しようとしている。しかし、「あるともないともいわないのが核だ」と佐藤首相自身は言明している。「絶対に核がなくなつた」ということを、政府は具体的に何によつて証明できるのか。また「返還時に核がなくなる」ということを、政府はいかなる方法で確認できるのか。
(2) また、「施政権返還にあたつては、日米安保条約及びこれに関連する諸取決めが変更なしに沖繩に適用される」とされているが、今日本土に適用されている「諸取決め」においても、政府は「現在公表していない基地はない」としながら、「軍事的性格により、一部公表しないこともありうることと予想していることは事実である」(岩間正男参議院議員の質問主意書にたいする本年一月十六日の政府答弁書)と答弁している。
 したがつて、「諸取決め」上は、沖繩の施政権返還時に、公表されない米軍基地もあり得ると解されるが、政府は沖繩の施政権返還時に米軍に提供するすべての基地を公表すると公約できるか。
(3) さらに、事前協議は、すべて国民の前に明らかにすることが、国民に責任を負う政府のとるべき態度である。しかるに、一九六〇年の安保改定当時、政府は「差し支えない範囲内で国会に明らかにしようと考えている」「原則として明らかにする」(岸首相)とあいまいな態度を示している。
 政府が核兵器の持ち込みをいつさい認めないとの立場をつらぬくならば、米国側から事前協議の申し出があつた際、核兵器持ち込みの場合であろうとも、そのつどすべてを公表すべきであり、また、できるはずだが、佐藤内閣にすべて事前協議を公表する意思があるか。公表できない場合があるとすれば、それはいかなる理由の場合であるか。
 佐藤首相は、核の所在を知つてもこれを国民に知らせる必要はないと考えるか。
(4) 核については、米原子力法で「原子兵器の設計、製造または利用」を「機密資料」の第一にあげ、「原子兵器の軍事利用に重要な関係があると決定した機密資料」の最終決定権は大統領にあり、外国にたいする通報権も大統領にあるときめている。従つてニクソン大統領が核の所在を明らかにしない限り、日本は核の有無について知ることはできないのではないか。

  右質問する。