質問主意書

第60回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質六〇第一号
  昭和四十四年一月十六日

内閣総理大臣 佐藤 榮作      


       参議院議長 重宗 雄三 殿

参議院議員岩間正男君提出在日米軍基地に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員岩間正男君提出在日米軍基地に関する質問に対する答弁書

一、在日米軍基地の公表について

1について
 現在、米軍に提供している「施設及び区域」については、すべて公表している。
2について
 公表しない「施設及び区域」はなく、したがつてその基準もない。
3について
 政府が昭和三十五年三月二十五日国会に提出した「合同委員会合意書に関連し実施されている主要事項」は、文字どおり合同委員会における合意に関連し実施されているもののうち主要な事項であつて必ずしも合同委員会における合意そのものではない。
 この「主要事項」中「刑事裁判管轄権に関する事項」のうち第五「施設又は区域の標示等に関する事項」(一)後段は、「区域又は施設の一覧表及び法律上の記述は、できるかぎり日本国の官報及び合衆国軍隊の公刊物に公表する」旨記述しているが「できるかぎり」という文言が米軍の使用する「施設及び区域」の軍事的性格により、一部公表しないこともあり得ることを予想していることは、事実であるが、しかし、問1に対する回答でも明らかなように、かかる「施設及び区域」は、一切存在しない。

二、「個々の施設及び区域に関する協定」について

1について
 締結している。
2(1)及び(2)について
 行政協定発効後九十日以内に日米両国政府間で合意に達しないまま、米軍が使用することとなつたものは五十箇所であつた。
 これらの施設のうち行政協定期間中に使用解除となつたものが十五箇所あり、提供の合意をみた三十五箇所についても行政協定期間中に十六箇所が返還されている。したがつて十九箇所が他の施設とともに地位協定第二条一項(b)の規定により新協定における「施設及び区域」とみなされたものであり、これら「施設及び区域」もそれぞれ「実施取極め」が締結されている。
3について
 「個々の施設及び区域に関する協定」では、施設番号、施設名、所在地、参照されるべき合同委員会合意覚書番号を、また、「実施取極め」では、施設番号、所在地、財産の明細、使用期間、引渡期日、引渡期間、受領機関等を明らかにしている。
4について
 「個々の施設及び区域に関する協定」及び「実施取極め」は、合同委員会関係文書であり、合同委員会関係文書は原則として非公表扱いとすることが日米間で合意されているので、その全文を公表することはできない。
5及び6について
 「施設及び区域」は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条の目的に即して米軍の使用に供されているものであつて、通常、その使用目的を細かくきめていないが、演習場、射爆撃場のように周辺住民の安全に影響の強い「施設及び区域」については、米側と協議のうえその使用条件を明細にしている。
 キャンプ王子については、一般陸上施設として米軍に提供しているので、米軍が病院として利用したことは、その使用目的に反するものとは考えない。
 なお、「施設及び区域」はその主たる用途に即した名称で表示されることが適当であるので、現在提供中の「施設及び区域」のうちその名称が不適当なものについて検討中である。

三、米軍の海域使用について

1について
 地位協定第二条一項(a)にいう「施設及び区域」には日本政府が提供した公有水面を含む。
 提供水域の範囲については、地上の標点からの距離、又は緯度、経度等によつて、その範囲を明示して公表する方法をとつている。2について
 別添資料一のとおりである。
3及び4について
 別添資料二のとおりである。
5について
 海上演習場のうちわが国の領海にあたる部分は、日本政府が提供した「施設及び区域」である。

四、米軍の空域使用について

1について
 問二の4と同様の理由により、日本側の一存で全文を公表することはできない。
2(1)について
 米国政府については在日米軍司令官(第五空軍司令官)、日本政府にあつては防衛庁長官を指す。
(2)について
 「防空識別圏」は、現在ない。
 ご質問の趣旨のような「制限空域」及び「基地の離陸及び基地帰投に必要とみなされる圏若しくは区」はない。
 「空域制限」については、米軍機の飛行のために特定の飛行空域を予定し一定時間その経路及び高度を他の航空機が飛行しないように隔離する管制上の措置をとつている。米軍からこの要求があつた場合には、一般の航空交通に混乱を生ぜしめないよう経路を調整し或いは時間及び高度を最少限にしぼつて許可を与えている。
 したがつてこのような制限は通常経常的なものではなく、時間の経過とともに消滅するものである。
3及び4について
 米軍は米軍に提供された飛行場の周辺において進入管制業務を行なつているが、この空域は日本政府が提供した「施設及び区域」ではなく地位協定第六条十項に基づく「航空交通管制に関する合意」によつて米軍が進入管制業務を事実行為として行なうことを日米間で認めている区域にすぎない。したがつてこのような空域についても必要があるときには、いつでもわが国は進入管制業務を行ないうるものである。

五、在日米軍基地の「近傍」について

1について
 「路線権(Right of Way)」は、他人の土地を通過し若しくは通行することを内容とする地役権の一種であると解される。
2について
 「必要な措置」は、米側の要請に基づき「関係法令の範囲内で」とられるものであるが、具体的には、「施設及び区域」への出入のための地役権がある。
3について
 「必要な措置」としては、例えば地位協定第六条一項に基づく「航空交通管制に関する合意」によつて米軍が行なつている進入管制業務がある。
4について
 米側から要求されている航空障害制限地域及び弾薬庫周辺保安区域設定については、引続き慎重に検討中である。
5について
 米側から要求されている電波障害緩衝地帯設置要求については、電波障害に関する特別分科委員会を設け引続き慎重に検討中である。

六、米軍の民間空港等の使用について

1について
 地位協定上、米国の船舶及び航空機は日本国の港又は飛行場に出入することができるとされているがその解釈上合意議事録において日本国の港とは、通常「開港」をいうが、不開港への出入を禁じた趣旨ではない。
2について
(イ) 紋別、釧路、十勝、苫小牧、室蘭、函館、乙部、小樽、留萌、稚内、青森、大湊、八戸、久慈、大船渡、秋田船川、館山、千葉、船橋市川、波浮、京浜、新潟、両津、伏木富山、七尾、敦賀、三国、熱海、伊東、下田、沼津、清水、蒲郡、名古屋、四日市、宮津、舞鶴、阪南、大阪、神戸、和歌山下津、境、浜田、岡山、宇野、水島、呉、江田島、広島、徳山下松、宇部、萩、関門、徳島、小松島、坂出、高松、宇和島、八幡浜、松山、今治、高知、博多、唐津、長崎、水俣、三角、別府、大分、佐伯、細島、油津、鹿児島、名瀬の七十四港。
 (ロ) 稚内、帯広、函館、秋田、花巻、山形、新潟、東京国際、大島、三宅島、名古屋、大阪国際、広島、宇部、高松、松山、高知、大分、大村、福江、宮崎、鹿児島、屋久島、奄美の二十四空港。
3について
 地位協定第五条にいう「公の目的」とは、アメリカ合衆国政府の目的をいい、その認定は、協定の両当事国が行なう。
4について
 「日本国の当局」とは港湾管理者又は港長であり、「適当な通告」の内容は、船舶の名称、トン数、長さ、吃水及び出入港の日時である。
 「通常の状態」でない状態とは、合衆国軍隊の安全のため又は類似の理由のため必要とされる例外的な場合に限られる。
 航空機の場合は、船舶とはその運行形態を異にするので、同様の通告義務は課さず、外国から飛来する一般の航空機と同じく飛行計画を事前に航空管制機関(運輸省)に通報させることにより措置している。

七、米軍、自衛隊による基地の「共同使用」について

1(1)について
 別添資料三のとおりである。
(2)について
 地位協定第二条四項(a)の規定に基づき日本政府又は国民が「施設及び区域」を使用する場合にも、米側は、「施設及び区域」の当該部分に対し、地位協定第三条に定めるいわゆる管理権を行使しうると解される。ただし、かかる共同使用に関する日米間の取極に従い日本側が必要な措置をとる場合には、米側の管理権の行使は、その限度で実際上排除される。
(3)について
 地位協定第二条四項(a)に基づく共同使用が長期にわたつた場合であつても、必ずしも米軍が当該部分を将来とも必要としなくなつたものと断定はできない。
 また、地位協定第二条四項(a)にいう「一時的」とは、実状に応じて考慮されるべきものであつて具体的にどの程度の期間を指すかは、あらかじめ一概にはいえない
2(1)について
 別添資料四のとおりである。
(2)について
 自衛隊が「施設及び区域」を使用するのは、地位協定第二条四項(a)による場合に限定されてはいない。地位協定第三条一項によつても使用することができる。
3(1)について
 別添資料五のとおりである。
(2)について
 地位協定の適用条項については、現存の当該「施設及び区域」に関する合意において、米軍の使用中は地位協定のすべての必要な条項を適用する旨規定されている。
(3)について
 地位協定第二条四項(b)中の「一定の期間」とは個々にきめられる期間を指すのであつて、具体的には、「個々の施設及び区域に関する協定」において、米軍の使用期間は年間何回何週間等明記されている。
(4)について
 東富士演習場については、最近の使用実態に徴すれば、自衛隊の使用が増大し、米軍の使用頻度は極めて少ない。このような実態にかんがみ、演習場の管理は自衛隊とし、米軍も今後使用する計画があるので、これを地位協定第二条四項(b)により使用せしめることとして、地元の同意を得たうえ、今回、使用転換の措置をとつたものである。
(5)について
 北富士演習場についても、自衛隊の演習場として必要であり、引続き米軍も使用の計画があるので、使用転換の措置を講じたいと考えている。
 なお、この使用転換については、地元関係者の同意を得て円滑に措置したいと考え、目下鋭意折衝中である。

別添資料一 提供施設関係水域の面積(昭四四、一、八現在)

別添資料二 米軍海上演習場の位置及び面積等(昭四四、一、八現在) 1/7
別添資料二 米軍海上演習場の位置及び面積等(昭四四、一、八現在) 2/7
別添資料二 米軍海上演習場の位置及び面積等(昭四四、一、八現在) 3/7
別添資料二 米軍海上演習場の位置及び面積等(昭四四、一、八現在) 4/7
別添資料二 米軍海上演習場の位置及び面積等(昭四四、一、八現在) 5/7
別添資料二 米軍海上演習場の位置及び面積等(昭四四、一、八現在) 6/7
別添資料二 米軍海上演習場の位置及び面積等(昭四四、一、八現在) 7/7

別添資料三 地位協定第二条四項(a)関係共同使用施設の面積及び使用内容等(昭四四、一、八現在) 1/8
別添資料三 地位協定第二条四項(a)関係共同使用施設の面積及び使用内容等(昭四四、一、八現在) 2/8
別添資料三 地位協定第二条四項(a)関係共同使用施設の面積及び使用内容等(昭四四、一、八現在) 3/8
別添資料三 地位協定第二条四項(a)関係共同使用施設の面積及び使用内容等(昭四四、一、八現在) 4/8
別添資料三 地位協定第二条四項(a)関係共同使用施設の面積及び使用内容等(昭四四、一、八現在) 5/8
別添資料三 地位協定第二条四項(a)関係共同使用施設の面積及び使用内容等(昭四四、一、八現在) 6/8
別添資料三 地位協定第二条四項(a)関係共同使用施設の面積及び使用内容等(昭四四、一、八現在) 7/8
別添資料三 地位協定第二条四項(a)関係共同使用施設の面積及び使用内容等(昭四四、一、八現在) 8/8

別添資料四 地位協定第三条一項による使用施設の面積等(昭四四、一、八現在) 1/2
別添資料四 地位協定第三条一項による使用施設の面積等(昭四四、一、八現在) 2/2

別添資料五 地位協定第二条四項(b)関係共同使用施設の面積等(昭和四四、一、八現在) 1/2
別添資料五 地位協定第二条四項(b)関係共同使用施設の面積等(昭和四四、一、八現在) 2/2