第59回国会(臨時会)
質問第八号 当面の外交問題に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。 昭和四十三年八月十日 二宮 文造 参議院議長 重宗 雄三 殿 当面の外交問題に関する質問主意書 一、核拡散防止条約について (1) 核拡散防止条約について昭和四十三年七月一日、米英ソをはじめ六十数カ国が署名したときに、日本は直ちに署名しなかつたが、その理由は何か。 (2) 従来日本政府は、核軍縮義務、非核保有国の安全保障、核平和利用の権利、条約の再審査ないし期限の問題等について要望を提起してきたが、これらの要望は、条約案文のなかでどう取り上げられたか。 また不満があるとすればどのような点か。 (3) 昭和四十三年八月六日参議院本会議で、総理は、多田議員の提唱する五大国の首脳会議について、やつても成果があがらないと答弁しているが、一方三木外相は核拡散防止条約に参加しない中、仏を含めた五大国首脳会議の構想を検討するとのべている(八月八日参議院外務委員会における社会党羽生委員に対する答弁)。総理は依然として検討の余地なしとの考えか。 (4) 政府は調印のメドをいつにおいているのか。 二、ベトナム戦後問題について (1) ベトナム戦後問題に関し、ベトナムの民生安定、経済復興等のための基金設置の構想について説明いただきたい。 またこの際、ベトナム地域の平和を維持するために、日本政府として基本方針を持つべきであると思うがどうか。 (2) 三木外相は、ジュネーブ協定に戻るよりほかないこと、民族自決を尊重すること、当分南北分割はやむをえない等の考えを明らかにしているが、ジュネーブ協定に戻るというなら、外国軍隊の駐留、基地設定を一切許さず、南ベトナムを中立化すべきであり、また民族自決というならベトコン(民族解放戦線)の政権参加を認めるべきである。 これらについて政府の考え方を明らかにされたい。 三、沖縄返還問題について (1) アメリカ合衆国国務省のスナイダー日本部長は、去る三月二十五日下院歳出委員会対外活動小委員会でパスマン委員長が、現時点で沖縄返還の時期は未定かと質したのに対し「佐藤総理が訪米されたときには、ジョンソン大統領は、沖縄諸島の返還についてなんのコミットもしていない。」と述べている。 この発言に対し、佐藤総理は、両三年内に返還のメドをつけることができるとの確信は変らないといつておられるが、その確信の根拠はどこにあるのか。 (2) 総理は、昨年十二月の第五十七国会で、この確信の根拠として佐藤・ジョンソン共同コミュニケを引用し、「『総理大臣は、両国政府がここ両三年内に双方の満足しうる返還の時期につき合意すべきであることを強調した。』これに対し大統領は『理解』を示した。そして『討議』の結果、『総理大臣と大統領は、日米両国政府が、沖縄の施政権を日本に返還するとの方針の下に、かつ以上の討議を考慮しつつ、沖縄の地位について共同かつ継続的な検討を行なうことに合意した。』とあるから、これが確信の根拠である」と答弁している。 しかし、共同コミュニケをよく読むと、ジョンソン大統領は「(沖縄の)本土復帰に対する日本国民の要望は、十分理解している」と述べたのであつて、必ずしも両三年内にメドをつけることに対して理解を示したとは述べていない。この点についてどう考えるか。 (3) 総理は去る五月二十四日婦人団体等からなる「沖縄返還実現三団体会議」の代表に対し、「本土なみの基地が世論の大勢である」と述べた旨、伝えられているが、その真意を明らかにされたい。 (4) 去る七月十九日に発表された「本土、沖縄一体化調査団報告書」は、従来から指摘されている問題点を拾い上げたにとどまり、どこから具体的に手をつけ、資金はどうするかといつた年次計画が示されていないと一般に批判されている。沖縄の野党も同様に批判している。 若し総理が両三年内に返還のメドをつける確信があるなら、本土との一体化について返還までのスケジュールを立て、一体化のための年次計画を策定し、資金の裏付けも行なつて、この報告書を生かす方向に努力すべきではないか。 右質問する。 |