質問主意書

第59回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

東京都港区青山南町所在の国有地不当管理に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十三年八月三日

黒柳 明      


       参議院議長 重宗 雄三 殿



   東京都港区青山南町所在の国有地不当管理に関する質問主意書

 東京都港区青山南町五丁目九五番の九所在の土地は、元水路敷の国有地であるにもかかわらず、国の管理の手抜かりに乗じて、萬興業株式会社(東京都千代田区丸の内二の六、柳井陽代表取締役)が従来より権限なく自己の所有地として他人に貸付ける等の違法な行為を続けてきたが、昭和三十九年十月初旬、本件土地に不法にも許可なく鉄筋コンクリート三階建、建築の基礎工事を敢行したので、昭和四十三年六月その基礎工事物件を、法により撤去させられた。
 この間、東京都港区青山南町五丁目九五番藤田登は、昭和四十一年十月二十七日、木件土地に関し、刑法第二三五条ノ二の不動産侵奪罪容疑事件として、東京地方検察庁に前記萬興業株式会社を告発した(事件番号、昭和四十一年検第一二四、四五五号)。
 一方、国(建設省)は、昭和四十二年十二月建物収去土地明渡し等の請求事件として同社外一名を相手どり東京地方裁判所に提訴した(事件番号、昭和四十二年十二月(7)第一二、三四九号)。
 その後、本請求事件は、原告(国)被告(萬興業株式会社外一名)の合意により昭和四十三年七月十三日、訴の取下げをなしたのであるが、その条件として、被告訴訟代理人の裁判所提出の準備書面によれば、被告会社は、原告(国)に対し「原告国の所有権を承認し、明渡しを致します。即ち占有を放棄します」としている。すなわち、萬興業株式会社は本件土地について、国の所有権を承認し、かつ本件土地の明渡しを誓約すると同時に、国の請求する既往の地代の支払い義務もあわせて承認している。これは同社が、明らかに国有地侵奪の事実を認めているものと考える。
 一方、藤田登の告発事件は、昭和四十二年十二月二十二日不起訴処分になつている。
 右の事件に関し、次の諸点を質問する。

一、藤田登の告発事件につき、これを不起訴とした検察当局の処置はあまりにも消極的ではないかと考えられるが、不起訴にいたつた理由を明らかにされたい。

二、本件問題の経緯にかんがみて、この種の国有財産の管理処分について、当局の実態把握、登記管理のずさん等に乗じて悪徳者の横行することは、まことに遺憾の極みであるが、今後の国有財産管理について具体的改善方途を示し、あわせて本件について当局の責任を明らかにされたい。

三、萬興業株式会社は現在、宅地建物取引業者として当局の免許を受けているが、本件の不正行為は宅地建物取引業法にてらし、免許の取消し及び業務停止の処分の条項に該当しないかどうか、監督当局の処置を明示し、その処置の理由並びに根拠をも示されたい。