質問主意書

第49回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質四九第一号
  昭和四十年八月十一日

内閣総理大臣 佐藤 榮作      


       参議院議長 重宗 雄三 殿

参議院議員廣瀬久忠君提出国連強化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員廣瀬久忠君提出国連強化に関する質問に対する答弁書

1.国連におけるわが国の地位向上に伴い、わが国が国連の平和維持活動について単に財政的貢献を行なうに止まらず、人員の派遣を含む各種の貢献を行なうよう国連に要請される事態は十分に予想され、殊にわが国が平和維持のための国連の主要機関たる安全保障理事会のメンバーに選出されることとなれば、わが国は国際の平和と安全の維持に、より大なる責務を有することとなるわけであり、この責務上、何らかの形で国連の平和維持活動に実質的に参加するよう要請される可能性がある。政府としては、予想されるこれらの要請に応じて憲法の許容する範囲内で、とりうる方策につき慎重に検討を行なつているが、おたずねのように国連強化の責任を果たすために、憲法を改正しなければならないとまでは考えていない。

2.現在、アジアには、エカフェ(国連アジア極東経済委員会)のごとき地域内経済問題を審議し調整するための機関はあるが、地域内政治問題について話し合いをするための国連の機関は存在しないので、政府としても、アジアにおける平和と安全に関する諸問題調整のための国連の機関を常設するとの構想は十分意義を認めている。
 ただ、現在まで特定地域内の政治問題のみを取扱う国連の常設機関が国連本部(在ニューヨーク)外に設けられた例はなく、この事情からみても、前記構想にはその実現可能性の見地から問題なしとしない。
 しかしながら、政府としては、アジアの平和と安全のために国連がより大きな役割を果たしうるよう適当な機構を設けることは必要と考えるので、まず、アジアに紛争事態が生じた際、その事実調査を遂行するピース・オブザヴェーション・ポスト(平和観察官制度)の設立のごとき構想の具体化に努力したいと思つている。

3.国連国際大学の設立の構想は、かつて米国の一私人により提唱されたことがあるが、右は財政上その他種々の理由により実施困難と見なされ、その代案を検討中の趣である。
 政府は国連精神の普及徹底については、従来より、国連協会、エカフェ協会、ユネスコ協会等の各種民間機関の活動を援助するとともに、政府自身としても国連機関の行なう各種のセミナーをわが国に招致するなど努力してきているが、今後もかかる途を通じ、国連の活動を十分内外に理解せしめるよう尽力する所存である。

4.アジア地域内諸国の政治問題調整のための国連機関及び国連国際大学の所在地選定については、かかる機関の設立が決定されるなど構想の具体化をまつて検討すべきものと考えられるので、現在の段階においては御意見として伺いおくことといたしたい。