質問主意書

第47回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

昭和四十年度東北開発事業計画に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和三十九年十一月三十日

渡辺 勘吉      


       参議院議長 重宗 雄三 殿



   昭和四十年度東北開発事業計画に関する質問主意書

 東北開発促進の問題は、長い間地域的後進性によつて苦しめられてきた東北住民の切実な要求である。特に最近の状況は、おくれた地域をより積極的に開発し、東北の生活水準及び産業水準を全国平均並みに向上せしめるという積極的先行投資開発の精神に貫かれている東北開発三法の基本精神に反し、はなはだしい地域格差拡大を生じている。このような事実にかんがみ以下の諸点について政府の具体的かつ明確な答弁を要求する。

一、組織的な国土調査、資源調査の実施

1 地域開発を計画的に実施するにあたつて、国土調査法に基づく国土調査を全面的かつ早急に実施し各分野における土地利用区分を設定すると同時に、地下資源その他の資源調査を組織的に行なつて資源実態を正確に把握し、これに基づいて積極的な開発計画を樹立する必要があると思うが、政府にその計画があるかどうか、又、あればその概要を説明されたい。
2 以上の目的を達成するために政府は十分な予算を計上するとともに必要な法的措置を早急に講ずべきと思うが如何。

二、公共投資の大幅な増大

 東北の後進性の最も基礎的な条件は、産業基盤育成に対する投資がきわめて少なく、この面で他の地域と比較して著しく立ち遅れているということである。従つて、次の事項については重点的に大幅な予算並びに公共資本を注入し、短期間で最も基礎的な基盤整備を完遂せしめる必要があると思うが政府の施策を明示されたい。
1 東北縦貫高速自動車道の早期建設をはかるため、少なくとも来年度五十億円の予算を計上して着工し、向後五カ年間で東京・青森間の高速自動車道建設を完了すると同時に、関連支線の早期完成をはかるべきであると思うが如何。
2 広大な冬季積雪地帯をもつ東北は、道路輸送にのみ依存し切れない面が多く、特に冬季期間の輸送力増強と、最近ひんぱんになつた都市間の輸送、通勤通学輸送力の増強のための国鉄計画を繰り上げて、その電化及び複線化の全線早期完成をはかるべきと思うが如何。
3 以上の投資と並んで、東北における産業基盤形成上重要な一級、二級国道及び地方道の改修ほ装延長・港湾整備事業・河川改修事業等に対しては、他の地域に比して飛躍的な予算の増額を行ない従来に比べて少なくとも五割以上の年間促進をはかるべきと思うが如何。

三、農業の近代化促進と農業融資の拡大

 東北の産業において最も重要な産業は農林漁業である。それにもかかわらず、池田内閣以来の工業偏重政策によつて農業が最も政府施策のラチ外に置かれた産業として取り残されている。佐藤新内閣はその所信表明の中で農業の近代化及び地域格差の是正を述べているが、次の各事項についての具体的施策を明示されたい。
1 東北地域に対しては、地域経済問題調査会の農業近代化を促進するに必要な公共投資、大農業機械のサービスセンター、農産物市場の情報センター、試験研究機関、食品加工工場、農産物及び農業資材のストックセンター等の施設を有機的に設置するとともに、営農研修所の設置等にも必要な助成を政府は講ずべきと思うが如何。
2 経済審議会の農林漁業分科会の報告にもあるように、従来の全国画一的に進められてきた農業構造改善事業実施の反省の上に立つて、広域農業振興地域の設定が提唱されているが、この審議会の答申を尊重し、東北地方を広域農業振興地域に指定して新たなる施策を講ずべきと思うが如何。
3 従来の農業金融特に制度金融を超えて実態に即した諸施設運営に対する政府の補完措置として、政府はすみやかに北海道東北開発公庫法を改正し、農林漁業の近代化促進のため、従来の制度金融と融資率差、償還条件差等を内容とする長期低利融資の道を新たに開くべきと思うが如何。

四、東北開発株式会社のあり方

 東北開発株式会社はその設立以来、不良資産の引継ぎと経営不振により赤字が累増して巨大な金額となつている。同社の経営不振の責任は直接的には同社経営陣に帰すべきものであるが、基本的には政府の政策によつて左右される同社の責任は第一義的に政府がその最高責任を負わなければならない。政府はこの際如何なる方策でもつて局面にあたろうとしているのか、次の各事項について答えられたい。
1 同社が積極的に東北開発に資するために、現在のいわゆる事業縮小、分割切り売りを内容とする再建方針を根本的に再検討すべきと思うが如何。
2 地域開発に資する新規事業の積極的かつ具体的な開発構想については如何。
3 長い間の惰性として社内に瀰漫してきた情実人事、紐付き人事、無気力な事業意欲の低下という社内の弊風はすみやかに改善する必要があると思うが如何。

五、砂鉄事業について

 政府は青森県むつ市においてむつ製鉄株式会社の設立を認可したが、設立以来約二カ年になろうとする今日、いたずらにペーパー・プランの作成を繰り返すばかりでいまだに事業着手に至つていない。この間青森県及びむつ市は、工場予定地に工場敷地整備、港湾整備、その他工場設置に必要な関連工事を行ない、苦しい地方財政の中から多額の先行投資を行なつている。又、むつ製鉄株式会社は創立以来多額な創業費の外毎月一千万円ずつの経費赤字を累積して今日に至つている。政府は一日も早く事業開始の決定を指示するとともに明年度予算に必要な公共資本等を計上すベきと思うが、政府にその用意あるや否や。あるならばその具体的内容について詳細に明示されたい。

六、岩手セメント工場公害について

 岩手県東磐井郡東山町にある東北開発株式会社所有のセメント工場から発生発散する粉塵によつて東山町一帯における農作物及び生活環境悪化の公害ははなはだしいものがある。この事実を重視し、社会党東北開発特別委員会の公害問題小委員会は本年二月十五日から二日間にわたり現地調査を行ない、その被害状況を確認するとともに、東山町及び町民代表・会社側代表によつて構成する調査会を設置し、早急に損害の補償を行なうとともに、収塵装置を設備してこれの抜本的な改善を行なうべきことを申し入れた。これに対して当時それぞれ善処する旨約しながら、加害者の立場にある会社側が今日依然として誠意ある態度を示していないことははなはだしく信義に反するものである。このような会社側の態度について、四の項で述べた如く、最高責任者たる政府に対して本問題の早急かつ誠意ある答弁を要求する。

七、その他産業開発・企業誘致についての特別措置について次の各事項に対する政府の見解を明示されたい。

1 新産業及び農産加工コンビナート地帯における地価高騰を防止するための有効な抑制策を早急に講ずべきと思うがその具体策は如何。
2 企業誘致にあたつて一定限度の不動産取得税、固定資産税の減税措置をとつた自治体に対しては、国がそれを肩替りすべきであると思うが如何。
3 地域開発に資する特定の新規企業に対しては、電力料金の軽減を行なうための政策料金設定のための特別措置を講ずべきと思うが如何。