質問主意書

第26回国会(常会)

質問主意書


質問第一五号

わが国石油輸送に対する外国資本の支配力強化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和三十二年五月十八日

松浦 清一      


       参議院議長 松野 鶴平 殿



   わが国石油輸送に対する外国資本の支配力強化に関する質問主意書

 今般わが国石油業界において世界に前例のない八万五千D/W型及び一〇万D/W型の超大型タンカー二隻を十五年の長期にわたつてU・S・M・Cマイナス四五・五%の低レートによる傭船を企図してその許可を関係当局に申請している由である。
 右は左記事由によりわが国経済上好ましくないと共にわが国タンカー企業の存立に重大な影響があり、海運業界は一致してこれに反対している。戦争によつて壊滅したわが国海運を建て直し、国際収支改善のために外航船舶の建造に対してその利子を補給し、多額の財政資金の投入に対してこれを支持してきた国会としても、この事態に重大な関心をもつている。故にこの際政府に対し次の事項について質問する。速かに回答せられるよう取り計らわれたい。

一、緊急事態発生の場合、石油確保が困難になると考えられる。
 スエズ紛争の際わが国鉄鋼業者の傭船した外国船が契約を破棄した事実に鑑み、世界のいずこかに緊急事態が生ずれば外国船に依存できず重要エネルギー源である石油の確保が困難となる虞が極めて大である。この事は多額の財政資金の投下によつて計画造船を進めてきた必要条件の一であつたと思うが政府の見解を問う。

二、運賃外貨流出により国際収支の悪化を来すと考えられる。
 わが国タンカー船腹は関係会社の新造計画が完成すれば遠からずしてわが国輸入油の全量積取も可能となる見透しである。にも拘らず、手持外貨が減少し国際収支の危機が叫ばれている現在、長期にわたつて運賃外貨流出を是認することは国民経済上悪影響を及ぼすと思うが政府の見解を問う。

三、わが国タンカー企業を圧迫すると考えられる。
 わが国タンカー業界に対して重大な圧迫となつて、その存立を危くするものであり、又わが国石油確保並びに国際収支改善のため、多額の財政資金をもつてする計画造船の主たる目的に反すると思うが政府の見解を問う。

四、巨大な外国資本による石油支配が強化されると考えられる最近、わが国の丸善石油、大協石油等の会社が外国資本と共同して、大型タンカーを建造し、石油の自船輸送を営み、今また出光興産が右の如き超大型タンカーを長期に傭船して自船輸送の完遂を期そうとしている。外国資本との共同によるこの企ては、わが国の燃料油の輸送販売全行程に対する外国資本の支配化と考えられる。わが国としては、これに対して強い抑制策を樹てるか或いはこれに打ち勝つ助成策を講じなければ、わが国タンカー業は自滅すると思うが、政府の見解を問う。