質問主意書

第24回国会(常会)

答弁書


答弁書第一〇号

内閣参質第一〇号
  昭和三十一年四月六日

内閣総理大臣 鳩山 一郎      


       参議院議長 松野 鶴平 殿

参議院議員須藤五郎君提出小笠原群島関係者に対する見舞金に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員須藤五郎君提出小笠原群島関係者に対する見舞金に関する質問に対する答弁書

一(イ) 政府として見舞金を支給することとしたのは、アメリカ合衆国が帰郷を認めないことにより小笠原島村民のこうむつている損失に対しては国内法上補償の途がないが、差し当り土地の権利及び漁業権の行使の制限を受けているため損失をこうむつていることを考慮して、アメリカ合衆国に対する補償要請の折衝の結果をまたず、見舞金を支給することとしたものであつて、すべての島民に対し直接見舞金を支給する趣旨のものではない。
(ロ) 見舞金の支給は、前記(イ)の趣旨によるものであるので、すべての島民に直接及ばないのは止むを得ないが、本措置により小笠原島民が相協力してその更正に資することを期待している。
(ハ) 見舞金の受給申請を受け政府が見舞金を交付したものの世帯数は六八二である。
(二) 一、五六六世帯は小笠原島帰郷促進連盟が見舞金配分に関連して調査した数であり、政府が見舞金の支給対象としたものは(ハ)のとおりである。
(ホ) 前記(イ)及び(ロ)に説明したとおり、すべての島民に直接見舞金を支給することは困難であるので、政府としては小笠原島帰郷促進連盟で協議決定する共同事業を行う等の方法により小笠原島民が相協力してその更生の途を図ることを期待している。
(ヘ) 小笠原島帰郷促進連盟においては将来アメリカ合衆国から小笠原島民に対し、補償又は見舞金が支給されることになつた場合に、不在地主に対しても支給されることを予想し、連盟内部の機関において協議の上、見舞金中より若干分を不在地主に配分することと決定したものと聞いているが、連盟委員長は、政府より見舞金が支給される場合の請求、領収、配分等に関する措置一切の権限の委任を受けており、それにもとづきかかる措置をとつたものと考えるので、必ずしも違法とは考えられない。

二 小笠原諸島に関しては、日米行政協定の適用がなく、これに基く基地利用等の場合の現行補償関係法令は適用されていないので、補償を支給することはできないこととなつている。

三 政府職員が小笠原島民の帰郷並びに損失補償の要請のため渡米した経費並びに政府の見舞金支給等に要する事務費は、見舞金とは別に予算的措置を行つたものであり、それらの経費を見舞金の予算の内から支出した事実はない。

四 質問の特別の認可については、新規許可と解されるが、遠洋かつお、まぐろ漁業は昭和三十年七月九日(以西機船底びき網漁業及び遠洋かつお、まぐろ漁業の許可等についての漁業法の臨時特例に関する法律(昭和二十八年法律第五十八号)失効の際、諸般の情勢に基いて新規許可は認めない方針であり、現在においてもなおその事情は変つていないので、本件について特別の措置を行うことは困難である。

五 島民の一部には現金のみの分配を希望している者もあるが、島民の大部分は、見舞金の一部を共同事業に出資することに賛成し、小笠原島帰郷促進連盟の内部の機関において協議の上そのきよ出を決定したと聞いている。これは島民の意思も反映していると思われるので適当と考える。
 なお、見舞金のきよ出とは見舞金の受給者が共同事業に出資することを意味する。