質問主意書

第24回国会(常会)

質問主意書


質問第一一号

火力発電設備の輸入に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和三十一年三月三十日

田中 一      


       参議院議長 河井 彌八 殿



   火力発電設備の輸入に関する質問主意書

一、いわゆる火力設備の輸入については、昭和二十七年関西電力、九州電力、中部電力、続いて翌年東京電力と相次いで火力借款による輸入が行われた。この発電設備については、当時国内資金調達の関係と国産化困難などの条件からサンプル的性格のもとに輸入されたと承知している。ところで最近東京電力はじめ関西、中部電力が相ついで、火力借款による大規模、高性能の火力設備輸入を計画しているが、政府は、このようにつぎからつぎへと設備が輸入されるのに対して如何なる対策をもつているのか、具体的に明示せられたい。

二、今回輸入を要請せられているのは、
  東京電力(千  葉)  一七五千KW  一組
  中部電力(新名古屋)  一五六千KW  一組
  関西電力(中  央)  一五六千KW  一組
の三台で、既に本年一月電源開発審議会において三十年度着工分として決定し、その輸入についても主要な部分は諒承済だと聞いている。また三十一年度には一五万六千KW、二〇万KW各一台の輸入も申請されんとしている。
 ところで、わが国の火力発電設備の生産能力は年間八〇万KWであり、最近三ヶ年の生産実績は年間四〇万KWで、四〇万KWの生産余力がある。このため各メーカは海外に輸出するため懸命の努力を払つているにも拘わらず、わずかな性能の相違を理由にこの程プラントを輸入することは、欧米にも全く例がなく、国辱的な輸入であると考えるが、政府の見解をうけたまわりたい。

三、火力設備の大容量化、高温高圧化は国際的傾向ではあるが、今回輸入されるような設備は、まだ欧州諸国ではほとんど実例がないといわれる。アメリカにおいても現在建設中の火力発電設備一〇二台、二、二〇〇万KWのうち、一六九汽圧五六六度(摂氏)級の設備は六台で、一二〇万KWと五%にすぎない。イギリスでも一〇五汽圧級のものが圧倒的に多いのである。ところで、現在国産品(製作中)の最高のものは一二万五千KW、五三八度(摂氏)一二七汽圧である。
 しかも米英両国はともに火力本位の国であり、供給地域のせまい、しかも水力設備を主体とした日本で、この種の大容量ユニツト設備を輸入することは極めて疑問に思うが、政府の見解を聞きたい。

四、前の世銀借款でも明らかなように、アメリカからの輸入品は極めて割高である。とくに四、〇〇〇万ドル以上にのぼる今回の輸入方法は各社とも特命発注でこの種プラント輸入の場合の国際的慣例を無視した方法がとられている。極端にいうなら米国業者のいうがままで買入れようというわけであるが、公益事業である電力事業が、このような態度であつてよいかどうか。政府の見解をただしたい。

五、輸出振興を経済自立のための重要国策とし、国産愛用を公約してきた政府は、これらの発電設備を輸入することが多額の国費を支弁している重機械プラントの輸出に大きな障害となることを果して十分検討されているのかどうか明示せられたい。また政府は電力会社に対して国内産業育成の立場から電機製造業者と忌憚なく相談し、これを指導するよう善処すべきであると考えるが、こうした指導措置をとつているかどうかも併せてうけたまわりたい。

六、東南アジア諸国においてすら、不充分ながらも自国で生産の見透しがついたものは輸入を禁止して、国産の奨励を行つている実情である。十七万KWの火力設備にしても政府の適切な指導と援助が平行して行われるならば、製作も決して不可能ではないと考えるが、採算本位で輸入を許可するようでは、国産愛用も空念仏に終り、経済自立も極めて困難となるが政府の見解如何。

七、今回の輸入機は三十三年度の渇水期に補給せんとする計画と聞くが、米国のメーカーは発電機器に対し、その生産能力の二ケ年以上の手持工事を所有している。三十三年冬期渇水期までに完成する保証を有するかどうか。政府の見解如何。

八、政府はこれら設備の輸入に対し、二〇億円を超える輸入税を免除する予定だと聞くが、かかる輸入は禁止すると同時に既に決定しているものに対しても輸入税を課し、その一部を国産化の研究費にむけることが国内産業の発展のためにも極めて有用であると考える。これに対する政府の見解をうけたまわりたい。