質問主意書

第24回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇号

小笠原群島関係者に対する見舞金に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和三十一年三月三十日

須藤 五郎      


       参議院議長 河井 彌八 殿



   小笠原群島関係者に対する見舞金に関する質問主意書

一、小笠原諸島関係者に対する援護に関する政府の基本方針として

 「同諸島住民は小笠原諸島への帰郷が認められないことにより損失をこうむつておるので、その損失の補償につきアメリカ合衆国に対し折衝するとともに、その生活の窮迫している実情にかんがみ、差当り政府として見舞金を支給し、その生活の援助並びに更生に資することとしている」(答弁書第九号)とのべている。
 小笠原島民はすべて、財産のあるなしに拘らず、自分の島を追われたのであり、すぐ帰してもらうことを要求している。この要求は全島民が有していた生活の基盤をすべて失つているところにある。ところが現在支給世帯数は合計四六五であり、見舞金の対象は一部の土地所有者および漁業者に限られ、他の多くの人はその対象になつていない。
(イ) すべての島民を対象としていないならば、政府の基本方針と矛盾すると考えるが如何。
(ロ) 一部の土地所有者および漁業者に限ることなく、すべての島民を対象とすることは当然であると考えるが、政府の見解如何。
(ハ) 支給、未支給をふくめて全対象人員はいくらか。
(ニ) 帰郷促進連盟発表によると帰郷できない世帯は一、五六六世帯であるが、政府の数字と相異ありとすれば、その理由は如何。
(ホ) 既支給世帯数は四六五世帯であり、全対象者は約八〇〇世帯と予想されている。これは全島民の約半数であり、土地なく、漁業権なく、金のない窮迫した数百世帯が排除され、保護をうけないとなると、由々しい問題で看過することができない。政府はこれが決定であるとすればいかなる責任を負うか。
(ヘ) 一方、この配分で連盟発表を見ると不在地主に対し三〇〇万円支払うことになつているが、新憲法下において補償さえ問題のある点であり、まして見舞金がこのような形で行われることは、憲法の精神に全く反すると思うが、これに対する見解を問う。

二、現在、サンフランシスコ平和条約により、小笠原は米軍の基地となつているが、これに対し何らの補償も受けておらない現状である。しかし、日本本土内における基地使用の場合は、その住民に対し補償をしている。小笠原島民は何故全島が補償の対象とならないのか、具体的に回答されたい。

三、見舞金一億円のうち約百万円は渡米政府代表の旅費および小笠原関係の事務費として使用されていると発表されているが、事実かどうか、事実とすれば支出内訳ならびに決定の経緯を示されたい。

四、政府の指導する共同事業は、漁業株式会社として設立され運営されていると考えるが、この場合漁業権を約八百万円で買つたといわれている。政府は資金だけ援助を行い、漁業権については特別の認可を行うことはできないのかどうか、これを行う有効な措置をとる考えはないか。

五、見舞金を受けるに当り、戦争のため生活権をうばわれた島民の大多数は、きよ出するより現金で公平に分配することを強くのぞんでいる。かかる島民の実情を政府は知つて促進連盟の配分方法を認めているのかどうか、見舞金のきよ出(答弁書第九号)とはどういう意味なのか、答えられたい。