質問主意書

第22回国会(特別会)

質問主意書


質問第七号

農業協同組合に対する通運事業免許に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和三十年七月九日

鈴木 一      


       参議院議長 河井 彌八 殿



   農業協同組合に対する通運事業免許に関する再質問主意書

 農業協同組合(以下「農協」という)の通運事業免許に関し、去る六月十七日及び同月二十四日付をもつて答弁書を受領したが、右答弁書の内容はまことに抽象的かつ事務的であつて、問題の核心をさけているかの如く思われるので、左記の点につき、より具体的に、かつ確固たる回答を願いたく、重ねて質問します。
        記

一、米穀の事前売渡申込制の実施に際して、農協の通運事業免許の必要性につき、関係機関と打合せの上、六月二十四日付て補足答弁されたが、これは農林大臣の了解を得ているのか、どうか。

二、答弁書「四、却下理由」の「(一)申請者の確保数量が充分でなく従つて健全経営の見透しがない」ことをあげているが、
1 確保数量は年間どの程度を必要とするのか、又取扱数量、集配数量の基準を示されたい。
2 健全経営という収支計画の基準を示されたい。
3 限定免許は経営規模や事業内容も一般免許の場合と相違しているので、健全経営の基準も当然に差異があるものと考えられるが、農協の如き限定免許の場合の健全経営という基準を具体的に示されたい。

三、同じく却下理由「(二)店舗、倉庫等の施設又は運搬具等が単協に依存し云々」とあるが、
1 店舗、倉庫等の施設は完全に自己所有のものでなければ免許はしないのか、どうか。
2 店舗、倉庫等の施設を他人からの賃借による申請で免許した事例はないのか、どうか。

四、申請駅の営業貨物が僅少な駅は、免許しないというが、何トンを基準にしているのか、又基準トン数以下の駅は、今後も複数化しないのか、どうか。

五、複数化が完了した駅、及び未だ複数化されていない駅は何駅か、又既に複数化された駅については今後は申請があつても免許しないのか、どうか。

六、農協に対する通運事業の免許について「殊更に阻止している事実はない」と答弁されたが、従来、農協の場合は免許申請から免許又は却下までに長期間を費しており、甚しきに至つては、三年間もかかつたとのことであるが、
1 答弁書「一、免許申請件数」の八件、九九駅について、各件ごとの申請年月日、聴聞会開催年月日、及び免許又は却下年月日は各々いつか。
2 前項八件の免許申請に対する処分について、長期間を費した各件の個々の具体的理由は、どうか。
3 免許申請から処分まで、通常どの位の期間を必要とするか。又短期間に処分することができないのか、どうか。
4 長期間にわたることは「阻止している」とのソシリを免れないが、これに対する見解は、どうか。

七、通運事業は複数化され、独占形態も是正され、又事業は民主化されたというが、既存業者のうちには、本年三月期決算で一〇億七千五百万円の所得を申告し、全国で第七位を占める程の厖大な利益をあげている特定業者があり、その反面には経営も必ずしも特定事業者ほどの利益をあげるに至つてなく、全面的な組織力がなく、かつ個々に分散しているため、特定事業者の支配下にあり、形式的には独占形態は崩壊したようにみられるが、実質的には何ら民主化されてなく、依然として独占と集中の形態に変りないと断せざるを得ないが、
1 右に対する見解は、何うか。
2 前記の特定事業者外の通運事業者を育成強化する施策は、どうか。
3 全国的に組織化され、かつ保管や輸送施設も充分もつている農協に免許することは、特定事業者の実質的な独占と集中が是正され、事業の合理化がより一層に促進されるとともに、農林生産物資や農村必需物資の運賃、コストの適正化が期せられるものと考えられるが、これに対する見解は、どうか。

八、秋田県経済農業協同組合連合会の免許申請を却下したとのことであるが、申請の各駅ごとの具体的な却下理由を明示されたい。

九、通運事業法第三十三条により事業の免許、許可、認可、その他の処分をしようとするときは、運輸審議会にはかり、その決定を尊重して、これをしなければならないと規定しているが、
1 運輸審議会の答申は委員の多数決によるのか、又は全会一致によるのか。
2 若し、多数決制とすれば、秋田県経済農業協同組合連合会の申請に対して、これを免許すべしとの少数意見は全然なかつたか、どうか。
3 右に関しては、運輸審議会委員の任命の経過よりして、国会より求められるならば、当然、その審議の内容を明かにすべきものと考えるからであるが、明示できないとすればその理由はどうか。

十、農協は農民の利便を増進するため、免許を必要とし、倉庫、運搬具は勿論のこと、側線、専用線などの施設も所有しており、従業員も組合員によることが出来るように各種条件を具備しているばかりでなく、資力、信用も漸次充実し、事業を適確に遂行する能力も充分に備えている。このように免許基準にも合致し、他の個人や法人とは異なる農協の特殊性からして、一定基準を設けてこれが申請には免許すべきものと考えられるが、農協の免許に対しては、一定の具体的基準を設けて免許する方針はないか、どうか。