質問主意書

第22回国会(特別会)

質問主意書


質問第三号

韓国海苔輸入に伴うわが国浅海漁業に及ぼす影響についての質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和三十年五月二十三日

青山 正一      


       参議院議長 河井 彌八 殿



   韓国海苔輸入に伴うわが国浅海漁業に及ぼす影響についての質問主意書

一、韓国海苔の輸入によつてわが国二十数万人に達する零細な海苔漁業者のうける経済的損失は測り知れないものがある。政府が日韓貿易の改善を国策として推進するにあたつて、独り零細な漁民にのみ損失が皺寄せられることは黙過し難い問題である。参議院水産委員会は昨年五月十日国内海苔生産者の保護とその振興のためには将来韓国海苔の輸入は禁止すべきであるとの結論に達し、やむを得ない事情によつて輸入を許可する場合は、最少限度に留むべきは勿論、国内生産増強を期するために生産者の納得する適切な輸入方式を樹立してしかる後に輸入すべきであるとの決議を行い、通産、農林、外務各大臣に手交している。この問題について政府は右の決議を尊重して生産者擁護を第一義とし、国内生産の増強を図る方針を今後も引き続きとるものと考えてもよろしいか。

二、昭和二十九年度の輸入に際しては、通産省の示唆に基いて韓国海苔輸入を取扱う貿易商社、国内販売業者及び生産者の三業界代表は韓国海苔需給調整協議会を設立して、国内生産の擁護と日韓海苔需給の円滑を図るために輸入数量、時期、国内流通の調整を自主的に統制しようとした。通産省の二十九年度の輸入割当は九十商社に割当てられたが、新割当受領者の一部はこの協議会に参加せず独自に輸入を行い国内市場の秩序を乱して異状な高値を現出したことは協議会設立の趣旨に反して遺憾に耐えない。よつて政府は、更に一層この協議会の自主的統制を援助強化する行政措置を考うべきではないのか。

三、昭和三十年度の輸入について去る二月二十四日韓国海苔需給調整協議会は、国内生産量を勘案して生産期終了後の四月以降一億枚の輸入を妥当とする旨を答申し、併せて、海苔需給の円滑を図るために協議会のアウトサイダーをなからしめるよう万全の措置を講ぜられたい旨を申し添えている。しかるに政府は生産期終了後海苔の最大消費時期を見過して二ケ月になんなんとするにもかかわらず何等輸入に関する措置を講ぜず今日に至つている。これは生産者の損失をカバーしてもつとも影響の少い時期に計画的に輸入せしめようとする協議会の自主的な意図を無視していると考えるが、如何なる理由に基いているのか明らかにされたい。

四、仄聞するところによると、輸入方式をめぐつて幾多の暗躍する者が続出し、通商当局の決定を遅らせているといわれ、またその割当一億枚の半量を協議会員外に割当てることに内定したとも聞いている。かかる割当が行われる場合は、昨年度九十商社の割当より商社数を増大し、全く輸入業務を行わない者を実質的に増加せしめ、単なる形式的割当と化するとともに協議会を構成する貿易、問屋商社はその営利的性格より会員たることを避けるに至り、協議会自体は漸次崩壊のやむなきに至ることは明白であつて、生産者代表が参画して行う需給調整はその足場を失つてしまうことも自明である。従つて前年に比すべきもない市場の混乱が起ることは必然である。かかる割当方式は協議会を崩壊せしめる意図といはざるを得ないと思う。自ら協議会中心に運営し得るような割当方式をとり協議会のアウトサイダーをなからしめるよう措置をとるべきであると考えるが、如何であるか。

五、韓国海苔の輸入は日韓貿易の改善に寄与する一面があることは諒承し得るが、国内生産の保護育成が先決の第一条件であり国内生産量の確保によつて漁村永年の恒久策を樹立すべきであつて、それには生産者の意図を強く反映し得る統制機構を自主的に作らせる必要があると考える。よつて政府は協議会の強化の方策を積極的に図るべきではないか。即ち政府は、国内経済と相関連して問題を提起しているとわれるバター、その他の特殊輸入品においてとられている輸入調整方式を樹立して恒久的対策をとり、徒らに紛争を反覆しないよう考慮すべきではないか、これに対する確たる対策を明示されたい。