質問主意書

第15回国会(特別会)

答弁書


答弁書第一二号

内閣参質第一二号
  昭和二十八年二月十七日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員油井賢太郎君提出製油工業危機対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員油井賢太郎君提出の製油工業危機対策に関する質問に対する答弁書

一、(一)大豆の政府買入については、先般成立した飼料需給安定法に基いて飼料の需給及び価格の安定を図り、もつて畜産の振興に寄与する目的をもつて、昭和二十八年度において食糧管理特別会計で輸入大豆最高約四〇、〇〇〇屯を買い入れる計画であるが、買入の時期、数量、払下げの価格等については未だ検討中の段階にあり、この実施に当つては、国内製油工業に対する影響を充分考慮して運用に遺憾なきを期する積りである。
(二)最近における菜種の増産は著しいものがあり、昭和二十八年産は既に定植済みであり、増産が確実視されている。これをこのまま自由に放任すれば菜種価格は低落と変動に見舞われ、農家経済と製油企業は極めて困難な事態に置かれることが予想されるので政府においては菜種の如く、国民経済上重要な資源で且つ、農業所得上主要な源泉である農産物の価格が適正な水準から低落することを防止するため農産物価格安定措置に就て検討中である。
 なお、菜種の増産に伴う大豆の輸入調整と大豆粕の輸入については、製油企業に及ぼす急激な影響を最少限度に止めるよう充分配慮したい。なお具体案については事務的に検討中の段階であり、大豆搾油業界とも連絡を密にして遺憾のないことを期している。

二、(一)菜種の増産については、三に記載の通り未利用裏作への作付導入及び生産費の切下げによる油の消費並びに輸出の増進を図るものであつて、長期的観点から見れば麦の増産及び大豆の輸入による大豆粕搾油企業の育成に不当な圧迫を加えるものとは認められない。
(二)製油企業の振興については、企業合理化促進法の対象業種に指定し企業の合理化と設備の近代化を促進し、且つ、中小企業等協同組合法に基く組織化に努め、設備・運転資金のあつせんを図る一方油脂の消費増進と海外への輸出振興対策を講じて操業度を高める等諸般の施策を研究中である。

三、菜種の増産は、農家経営の安定と土地の改良に役立つので大いに奨励しているが品種改良と肥培管理の改善による反当収量の増加と、東北、北陸地方における未利用裏作への導入普及に重点を置いている。菜種増産による麦作の減産は九州南部の湿田地帯のように麦の不適地に菜種が導入されるなど例外的な場合に限られている。

四、製油製品中、油脂については、自由に輸出を認めると共に極力その輸入を抑制しているが、油粕類については、肥料等の需要に対して国内供給量及び価格の点で充分とは云えないのでその輸出については慎重に取扱つている。
 最近における亜麻仁粕のような一時的な特異事情に対しては、一定の条件を附して国内消費用を確保する一方相当量の輸出を認める措置を講じその調整を図つている。