質問主意書

第13回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

青少年不良化防止に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十七年一月八日

田中 一      

       参議院議長 佐藤 尚武 殿



   青少年不良化防止に関する質問主意書

 参議院では昭和二十四年第五通常国会において「青少年の不良化防止に関する決議」(五月二十日)をなし、政府に対し強力なる施策を要望するところがあつた。政府も亦この決議に即し、青少年問題協議会の制度を設ける等対策に力を用いた点は認められるが、青少年の不良化傾向はその後も減退することなく、寧ろ更に一層の関心を払わざるべからざる実情にある。
 即ち国家警察本部の発表によれば、少年刑法犯罪において昭和二十五年度は二十四年度に比し十四歳未満にあつては六十一%、十四歳以上十八歳未満にあつては二十一%の増加を示し、検察庁が二十歳未満なるをもつて家庭裁判所へ送致したものは本年一月から五月に至る僅か五ケ月間に六万三千七百十名の多きに達している。右実情により家庭裁判所が少年保護事件として本年上半期に受理した件数は検察庁の送致その他を合して九万五千件に垂んとし、昨年上半期に比して当に二倍に及び、而も吾人が最も憂えざるを得ないのは、年少少年の件数が年長少年に比して多数であることであつて、この事実は少年の保護教育の施策に重要な観点を与えているものといえる。
 政府は前に行政整理の構想を樹て、地方自治に対しても亦地方行政簡素化本部を設けて、その簡素整理を企図しているが、その企図が整理簡素化等の名目に囚われてさきの決議の意に反し、青少年不良化防止の施策制度の弱体化をもたらす惧ありとすれば重大なる関心を払わざるを得ない。巷間簡素化本部の案なるものが伝えられているが、それによると年少少年を直接の対象とする児童福祉法の諸機関を社会福祉制度に吸収統合せんとしているもののようである。もしこれが真実なりとせば、制度を弱体化し国民の要望に悖る惧なしとしない。よつて本議員は児童の福祉を減退し、青少年の不良化防止の機構を弱体化することを憂え、寧ろその増進強化の策を樹てんことを希望し、左の事項に関し政府の真意を質問する。

一、行政簡素化案に青少年不良化防止の施策、殊に児童福祉制度を如何に具体化せんとしているか。

二、非行少年殊に十四歳未満の児童の指導に関し専門的責務を有している児童福祉司を廃止する意図がないか。