質問主意書

第12回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三号

水産基本政策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十六年十月三十日

青山 正一      

       参議院議長 佐藤 尚武 殿



   水産基本政策に関する質問主意書

一、水産資源対策の確立

(一) 近時各地に発生している漁業紛争の大半は、水産資源の枯渇荒廃に基因すると考えられる。これについては、既に水産資源枯渇防止法が制定せられたが、実際は僅かに西部底曳網漁業の調整に役立つたに止まり、又漁業法に基く漁業取締法規もないではないが、これが必ずしも充分に励行せられていないことをまことに遺憾とするのである。
(二) 水産資源の枯渇防止又は保護育成を効果あらしむるためには、全国的規模における基本的調査を実施して、その成果を公表周知せしめることの必要は勿論、特に稚魚介の濫獲の防止と保護増殖とに有効適切な制度を整備して、これが徹底的励行を期する等の根本的対策を確立すべきではないか。

二、漁船関係の行政の一元化

(一) 水産行政は、この性格において複雑化することは、避けられないにせよ、現在の如く、漁船の建造、検査、運航については海運局(運輸省)、就業出漁等については水産庁(農林省)の監督下に置かれていることは、漁業の実情に適応するものではないから、これを一元化すべきではないか。
(二) 漁船の乗組員については、総屯数三十屯を限界として、適用法規を異にするため、集団的操業の場合においては、同一作業に従事する者の間に、法律上の取扱を異にするものを生じ、実情に適応しない結果となるから、例えば漁船船員法の如きものを制定して、かかる不都合を除くべきではないか。

三、漁業金融の改善

(一) 漁業の経営を不安定ならしめ、又産業として危険視せられる最大の原因は、不測の災害に対処するに足るべき補償制度の確立せられていないことにあると考える。かかる補償制度は、必ずしも、漁業金融のためのものではないが、それが有力な裏づけとなるべきは論を俟たないから、速やかに適当な対策を講ずべきではないか。
(二) 漁業金融改善の当面の急務は、現に漁業金融を行つている金融機関に対し、低利資金融資の枠を大巾に与えることではないか。
(三) 漁業手形制度並びに漁業共済基金制度は、速やかに法制化さるべきではないか。
(四) 漁業共済基金の積立に対しては免税すべきではないか。
(五) 漁船建造その他設備資金について五年を下らざる期間、就業資金については、既存のものについては一年乃至二年の期間において融資し得るよう措置すべきではあるまいか。
(六) 旋網漁業に実施せられた漁業手形の償還期限の到来せるものも、漁業の不振、経済界の不況等に悩まされ、期限内に完済し得ないものを生じたことはまことに遺憾であるが、この際、償還期限延長の応急措置を講ずべきではないか。

四、漁業に対する課税方法の改善

(一) 漁業に対する課税については、若干の改善が行われたが、今なお徴税目標達成のための割当課税方法が行われており、不当課税を誘致していることは遺憾である。かかる方法を廃止する考えはないか。
(二) 漁業に対する課税にあたり、不漁の場合の減免措置が講ぜられないか。
(三) 漁業経営費の決定にあたり、漁業者側の意見を求めて、査定標準を定めるべきではないか。又年度内に支出された漁具代金及び漁船の修理費は、当然、当該年度の経費として算定せらるべきではないか。
(四) 自家労力の対価を経費として認むべきではないか。
(五) 漁業を附価価値税の対象から除外すべきではないか。
(六) 青色申告の帳簿様式を簡易化する考えはないか。

五、漁況調査並びにその速報

(一) 漁況調査の万全を期するため、現に各県が保有する指導船を、国費をもつて活用するの考えはないか。
(二) 水路部及び各水産試験機関の作成せる海洋図により、漁業の実態に即する、内容の簡易なものとして、漁業者に速報すべきではないか。

六、旋網漁業調整案の実施

(一) 現に、水産庁において立案中と伝えられる、旋網漁業調整案は、速やかに実施さるべきではないか。
(二) 旋網漁業に対する禁止区域は、魚族保護又は漁業調整上必要な最少限度に止め、旋網漁業の操業を不当に抑制することにならぬよう配慮せられているか。
(三)一定の海区における許可独占の弊を排除すべきは勿論、隣接海区からの入漁についても予め考慮を払い、妥当な許可総数を決定すべきではないか。
(四) 漁船の増屯については、真に止むを得ないものを許可すべきではないか。
(五) 海区制の決定にあたり、漁業調整上可能な範囲において、なるべく広い区域を採り、旋網漁業の特徴を害しないようにすべきではないか。
(六) 現在の漁業調整機構は、漁業権漁業の処理に偏し、沖合漁業の処理が立遅れているの感はないか。

七、荒廃漁場の復旧

 暴風雨等に因る漁場の荒廃、沈没船、墜落機体その他のため、旋網漁業その他の漁業の操業を妨げている実情については、関係当局において調査済のものから、速やかに適当の復旧措置を講じて、漁業生産の増進を図るべきではないか。

八、連合軍演習に因る被害の補償

(一) 連合軍演習のため、漁業者の被る損害について、実情を考慮せられ、現在の区域以外に拡大せられないよう要請すべきではないか。
(二) 演習場設定に因り、漁業者の被る直接間接の損害については、国費をもつて補償せらるべきではないか。

 以上の諸案件の多くは、関係団体等から、請願又は陳情せられた当面の急務であるから、既に関係当局において、夫々対策が講究せられていると信じるので、この際、政府の具体的の見解を詳細に承りたい。