質問主意書

第10回国会(常会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質第三号
  昭和二十六年二月二日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員青山正一君提出以西底曳網漁業対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員青山正一君提出の以西底曳網漁業対策に関する質問に対する答弁書

第一 以西底曳網漁業が現在ほう着している諸種の困難は主として漁区の制限に起因することは御意見の通りであり、従つて政府は従来とも鋭意その拡張について種々総司令部に懇請して来たが、今なお拡張を見るに至らぬことは誠に遺憾である。
 しかし農林大臣は去る二十二日総司令部に天然資源局長を往訪し、本年初頭の現地視察に基いて、漁業の実情を説明するとともに重ねて漁区拡張を懇請したし、今後共政府は機会あるごとに漁区拡張に向つて最善の努力を傾注し、関係業者は勿論広く国民の御期待に副いたいと考えている。

第二 単に以西底曳漁船のみでなく凡ての漁船がその操業区域を厳守すべきことは、恢復しつつあるわが国の国際的信頼を更に昂揚する上に絶対的に必要な要件であり、又総司令部より常に注意せられている所である。従つて漁業監視船の任務の重点を指導保護に置いて、取締を第二義的にすることは、却つて関係諸国の疑惑を招き過去に払い来つた幾多の努力を水泡に帰せしめ、今後の漁業の発展に禍根を残す懸念が多分にあり、他方現下諸般の情勢からすれば寧ろその取締を一層強化する必要があるものと認められる。

第三 旧臘から年頭にわたつて六隻の底曳漁船が韓国及び中共側に拿捕されたことは誠に遺憾であるが、最近乗組員全員及び韓国に拿捕された漁船が夫々帰還し又は返還せられたことは御同慶に堪えない。
 なお中共側に拿捕され、未だ返還せられない漁船については拿捕当時の状況を取調べた上関係方面と連絡し、その返還を計りたいと考えておる。
 政府としては現在のところ直接保護対策を講ずることは困難であるので、各漁船に対しては注意を喚起するとともに場合によつては総司令部に対しその保護方を依頼することも考慮中である。

第四 漁業用燃油、漁業用綿撚糸、綿漁網、マニラ製品等漁業用資材は主として海外からの輸入に仰ぐもので国際物価の高騰に伴いその変動は避け得られず、これがため漁業経営に致命的打撃を与えているが、この場合、公定価格の設定ある燃油及び漁網等の値上については関係方面と接衝し極力最少限度に止めるよう努力している。
 なお、漁獲物を有利に販売するため対日援助見返資金の活用により漁業者のため産地並びに消費地の製氷、冷蔵庫網の整備を図り、需給の調整を行い魚価の維持に努力しつつあるの外、水産貿易を振興し、漁獲物の高度利用を奨励する等漁業経営の安定に資する諸策を考究中である。