質問主意書

第7回国会(常会)

答弁書


答弁書第五五号

内閣参質第四四号
  昭和二十五年四月十八日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員田中利勝君提出開拓農業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員田中利勝君提出開拓農業に関する質問に対する答弁書

一、(一) 営農型態別に分類した開拓地の現況(地区別、農家戸数別)

 開拓地の営農型態は、一年一作地帯においては畜産を大きくとり入れた混同経営、二年三作地帯においては養畜穀作混同経営、一年二作地帯においては主穀有畜経営の原型をとり、これに農畜産加工、果樹、特用作物を立地条件に即して適当にとり入れ、消費地に近いところでは蔬菜を多くとり入れた適地適生産、適地適生活の営農型態をとらせることとし、現在経営規模、経営組織の整備充実に向つて進んでいるが、未だ完成の域に達しないものが大部分で、概ね一部家畜を加味した穀菽中心の経営の段階である。しかして現在入植者の約五割は食糧自給を達成していると認められる。
 従つて現在の状態を営農型態別に分類すると大略左の如くである。(昭和二四年二月末現在、開拓地営農統計による。)
   型態別入植戸数
     千戸
  一年一作型二一
  二年三作型二〇
  二年一作型六七

(二) 開拓地に導入された家畜の種類頭数(総数及び開拓農家当頭数)、政府の助成内容、将来の導入計画概要

1 開拓地(純粋入植者)に導入された家畜の種類頭数は昭和二十四年二月末現在(開拓地営農統計)で左の通りである。
  家畜別内地北海道
 役馬   四、八七七  六、七九二  一一、六六九
 役牛  一五、一七七     二〇三   一五、三八〇 
 乳牛   三、五六〇   一、三〇三    四、八六三 
 緬羊   六、一一三   二、四五四    八、五六七 
 山羊  二五、一三四   一、四四一   二六、五七五 
 豚   一二、二二二   二、六五六   一四、八七八 
 家兎 一〇三、四五六   六、一〇〇  一〇九、五五六 
 鶏  二三一、八七〇 四二、七五〇 二七四、六二〇
 あひる  五、四八〇      六七    五、五四七 
2 開拓農家当種類別頭数
 昭和二十四年二月末現在において純粋入植者一〇〇戸当頭数を示せば左の通りであつて、参考のため既存農村の農家一〇〇戸当頭数と比較すると役牛馬の数はその半ばであるが、乳牛及び中家畜は開拓地の方が多く導入されている。
  家畜別入植者
一〇〇戸当頭数(A)
(参考)既在農村
農家一〇〇戸当頭数(B)
Bに対する
Aの比率
 役馬   九 一八 五〇%
 役肉牛 一四 三五 四〇  
 乳牛   四  三一五〇  
 緬羊   七  六一一五  
 山羊  二三  八二九〇  
 豚   一三  八一六〇  
 兎   九五 三〇三一〇  
 鶏  二三九二八〇 八五  
 あひる  四  ― ―  
3 政府の助成の内容
 昭和二十一年度は牛馬二、〇〇〇頭の購入補助金を交付し、昭和二十二年度には牛馬三七〇頭の導入を助成したが、昭和二十三年度以降は開拓者資金融通法による営農資金をもつて導入を図ることにし、同年度は馬一、九六〇頭、牛四、八〇五頭、乳牛九八一頭、計七、七一六頭(この融資金三一一、九九〇、〇〇〇円)を導入した。昭和二四年度は同様に融資金三六四、七八〇、〇〇〇円をもつて役畜五、六一二頭の導入を図ることとして発足したが牛馬価格暴落のため実際においてはこの資金で約一万頭の導入が行われたと推定される。
(二四年度実績は目下取りまとめ中)
4 将来の導入計画の概要
 従来と同様国の資金融通による導入を行う計画で昭和二十五年度は牛馬資金二五〇、〇〇〇、〇〇〇円を予定している。
 その他開拓者が信用基金制度を自主的に設け農林中央金庫から短期資金約一億円を借入れて主として中小家畜の購入を行うはずであるし、また各都道府県に対し努めて地方費をもつて家畜導入補助費の計上を勧めているが、昭和二四年度予算において総額約六千万円にのぼつている状況であつて、上記の政府の融資による導入と相まつて一層家畜の充実を図らせる計画である。

(三) 開拓地に建設された営農上必要な諸施設の種類別、個数―政府の助成内容、将来の建設計画

1、種類別個数
イ、開拓者資金融通法第三号資金(共同施設資金)により過去三ケ年(昭和二二、二三、二四年)に導入された共同加工施設は左の通りである。
農産加工施設三五〇ケ所畜産加工施設四五ケ所
林産加工施設六五ケ所水産加工施設一〇ケ所
其他三二ケ所総計五〇二ケ所
右五〇二ケ所に対する国の融資額は一六、一〇〇万円である。
ロ、開拓地(純粋入植者)の昭和二四年二月末現在(開拓地営農統計)における主要農機具の設置数は左の通りである。
           台               台
電動機    一、三三四   その他原動機    九七六
和すき   一一、八二四   ブラウ     九、二三五
砕土機    七、七四六   中耕除草機  一一、六七七
ふんむ機  一〇、四六四   人力脱穀機  二〇、〇四一
動力脱穀機  一、三五三   とうみ    一四、二六四
動力米麦機    五五九   動力製粉機     四八八
リヤカー荷車二二、五〇六   牛馬車    一〇、五三〇
2、政府の助成内容
 開拓者資金融通法による営農資金、(入植後三ケ年まで貸付)、共同施設資金の融通を営農指導と結びつけつつ行つている。
3、将来の建設計画
 前項の助成内容を継続し新規入植者に対して営農資金を融通して営農の基本施設を備えさせるとともに共同施設資金の融通により農産加工等の共同施設を普及し営農の確立充実を図らせる計画である。

(四) 開拓地における土地改良事業の実施状況

1 開墾国庫経費年次別調

内地

開墾進度状況

代行開墾経費及び戸数

補助開墾経費及び戸数

開墾進度表

入植並びに増反戸数

2 開拓地土壌改良事業
 開拓地の土壌は概ね強酸性、燐酸欠乏、有機質欠乏等が甚だしいので、これを速かに熟地化するため左の事業を実施している。
イ、土壌調査、施肥試験の実施及び改良指導
 既入植地区の開墾地を対象とし各都道府県農事試験場に委託して、昭和二十三年度内地四万町歩、昭和二十四年度内地四万町歩、北海道一万五千町歩、昭和二十五年度内地三万町歩、北海道一万町歩の土壌調査を行い、あわせて代表地区の施肥試験を実施し、その結果を発表周知させるとともに開拓地常駐営農指導員等による現地展示圃の設置、巡回指導班派遣等により、開拓者に土壌改良の急務を認識させ改良に努力をさせつつある。
ロ、酸性矯正のため炭酸カルシウムの導入を行つている。即ち開拓者資金融通法の運用により特殊融資の方法をもつて、昭和二十三年度六万トン、昭和二十四年度五万トン(土壌調査の結果に基き適量を入れるが、平均一町当二トン程度)を導入した。昭和二十五年度は米国対日援助見返資金によりこれが導入を引続き実施の計画である。
ハ、燐酸質肥料の増配措置を講じている。即ち農業生産計画による主要食糧作物に対しては基準配給量のほか開拓地には特に昭和二十三年秋肥(反当以下同じ)一貫昭和二十四年春肥一貫、秋肥二貫昭和二十五年春肥二貫を増配し、また供出対象とならない新墾地にも特別に昭和二十四年春秋肥各三貫、昭和二十五年春肥五貫を増配した。
 なお窒素質肥料についても昭和二十四年秋肥は作物別を問わず三貫、新墾地には昭和二十四年春秋肥及び昭和二十五年春肥各三貫の増配を行つた。
ニ、有機質の増施については家畜の導入と相俟つて厩堆肥緑肥の増産を奨励しつつある。

(一) 開墾作業補助金について

1 内地分

二 北海道分

(二) 開拓農家に対する営農資金融資の実績と償還成績

 開拓者融資金は営農資金、住宅資金、共同施設資金に分かれており、営農資金は昭和二十一年度より貸付け、二十四年度迄の貸付総額四、五〇五、六九八、四七六円五〇で住宅資金は同じく昭和二十一年度より貸付け、二十四年度迄の貸付総額五九四、六五一、一七八円で共同施設資金は昭和二十三年度貸付け二十四年迄の貸付総額一六一、二一三、二四〇円であつて、資金別、年次別貸付状況は別表の通りである。
 営農資金、住宅資金は五ケ年据置十五ケ年均等年賦償還であつて昭和二十六年度において定期償還が始まるが、共同施設資金は据置一ヶ年十五年均等年賦償還であるので、昭和二十四年度は第一回定期償還期で別表の通り八、六二七、三八〇円が償還予定額であるが四月十日迄に六、九六二、六〇五円納入ずみであつて好成績と認められ、未納の分も出納閉鎖期(四月末迄)には完納の見込みである。
1 営農資金
貸付年度貸付戸数貸 付 金 額備   考
                           円
昭和二一年度  四四、八〇五   三一四、六〇二、一二八
〃 二二年度  四六、四〇一   三八一、三〇九、四九四
〃 二三年度 一〇三、九六一 二、三五八、五九二、八五四・五〇
〃 二四年度         一、四五一、一九四、〇〇〇予算額
 計             四、五〇五、六九八、四七六・五〇
2 住宅資金
貸付年度貸付戸数貸 付 金 額備   考
                           円
昭和二一年度  四四、八〇五    九六、三九七、八七二
〃 二二年度  四七、〇六二   四二〇、四一七、三〇六
〃 二三年度   三、七二三    七七、八三六、〇〇〇
 計           ―   五九四、六五一、一七八
3 共同施設資金
貸付年度貸付戸数貸 付 金 額備   考
                           円
昭和二三年度     四二六    九八、三一三、二四〇
〃 二四年度       ―    六二、九〇〇、〇〇〇予算額
 計                一六一、二一三、二四〇
4 昭和二十四年度年賦償還予定額
償還年度資金別償還予定額備   考
                           円
昭和二四年度共同施設資金     八、六二七、三八〇

(三) 償還不能の場合政府のとるべき措置

 共同施設資金についてはその事業経営の内容からみても相当の収益があるので、年賦金の償還は困難ではなく、現にその第一回の二十四年度成績も前述の如く好成績を示しているが、昭和二十六年度から始まる一般営農資金及び住宅資金の償還についてはその償還不能のものも予想される。
 これについては法令にその措置を明記し完全なる回収を期している。

三、(一) 緊急開拓事業の対象となるべき開墾適地面積

 終戦直後に立てられた緊急開拓事業計画においては、一五五万町歩の開墾が目標になつているが、この面積については、その後色々と論議されている。この数字を再検討してわが国になお残されている開拓適地の面積を適確に知ることは今後開拓政策を進めて行く上に必要なことであるが、そのためには既存の資料を利用するほか、更に詳細な現地調査を必要とする。しかし全国に汎つて実際に現地調査を行うことは経費や調査に参加できる技術者の数などから考えて実施し難いので目下農地局をして抽出法によつて一部の現地調査を行い、その結果と既存資料とから右の面積を算出する作業を実施せしめているが、これは大体六月中には完了の予定である。

(二) 昭和二十五年度以降開墾地取得見込面積

 昭和二十五年度においては、多額の国家投資を必要とせず容易に開拓可能な土地を取得すること。即ち開拓のための基本施設に多額の経費を必要としない土地を優先的に取扱い、また国家の物質的助成を必要とする入植用地よりも地元農家の増反用地及び助成を必要としない入植用地を優先的に取扱うことを第一条件として都道府県が自主的に定めた取得目標面積に従つて次の如き面積の取得を計画している。
 なお、本年度の未墾地取得見込面積は(三)の3の次に掲げた通りである。昭和二十六年度以降については未だ決定していない。

(三) 開墾予定地取得の公正を期するために取りつつある措置

 開拓適地を公正に選定するためには次の諸点について適切な措置を講じておく必要がある。即ち
1 開拓地として取得せらるべき土地は開拓しても将来安定した農業が成立つ見込があり、且つ開拓に振り向ける方が他の利用に振り向けるよりも国民経済的に有利であり、また土地保全に重大な悪影響を及ぼすおそれのない土地でなければならないから、この点開拓地となし得る土地の自然的社会的な資格条件を定め、その条件を満足しないような土地は開拓適地として選定しないようにすること。
2 右の条件にてらして適地であるかどうかを定めるための調査をできる限り科学的且つ周到に行うようにししかもこの調査には有能な技術者を従事せしめること。
3 調査並びにその判定が果して妥当であるかどうかを公正に審議すること。
 政府は、関係各省及び総司令部天然資源局と協議の上、右の諸点に関し一定の基準を定め、昭和二十四年一月十八日付農林次官通達を以て(二四開第六三号開拓適地選定の基準に関する件)都道府県知事、営林局長、農地事務局長に指示している。
 昭和二十四年一年十八日以後における開拓適地の選定はすべてこの基準が定める方法及び手続きに従つてこれを行つているからすべて公正に行われているものと考える。

未墾地取得見込面積 1/3
未墾地取得見込面積 2/3
未墾地取得見込面積 3/3

四、(一) 海外開拓引揚者の入植数と現在入植を希望する者の数及び今後の入植可能数
         入  植  数 二五年度入植希望数 今後の入植希望見込数
 満 洲 開 拓 民  二六、四九九    一一、五〇〇 一〇、〇〇〇
 樺 太 農 家   六、三〇〇     三、〇〇〇  一、五〇〇
    計     三二、七九九    一四、五〇〇 一一、五〇〇

備考
(一) 「入植数」は昭和二十五年三月末現在戸数(推定)である。
(二) 「昭和二十五年度入植希望数」は、昭和二十四年八月末現在戸数である。
(三) 今後の入植希望見込数は、今後の帰還推定戸数の概ね五〇%である。
 なお二十五年度入植計画(予算)戸数は一〇、〇〇〇戸であるから、本年度の実績に応じて、本年度希望者一四、五〇〇戸中入植のできなかつた者は、今後の入植希望見込数に含めることになる。

(二) 入植者の審査の結果に関する概要
1 入植者の場合

イ、応募数

ロ、選衡数

ハ、適格数

2 増反者の場合

(三)昭和二十五年度以降入植予定戸数(純粋入植農家及び増反農家別)
1 入植
 昭和二十五年度においては国家財政の都合により一〇、〇〇戸を認められたが、二十六年度以降最低毎年一〇、〇〇〇戸以上実施したい。
2 増反
 昭和二十五年度においては国家財政の都合より八〇、〇〇〇戸を認められたが、二十六年度以降最低毎年八〇、〇〇〇戸以上実施したい。