第6回国会(臨時会)
質問第一四号 高物価政策の不成績並びに徴税の苛烈に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。 昭和二十四年十一月五日 市來 乙彦 参議院議長 松平 恒雄 殿高物価政策の不成績並びに徴税の苛烈に関する質問主意書 第一 高物価政策の不成績について。 輸出を増進するためには、品質、意匠、信用その他諸般の取扱について最善を尽すと共に、最後の決定的条件は価格の低廉である。 第五国会において、政府は私の質問に対して、低価格ならずとも種々の方策ある旨を答弁された。しかるに輸出は果て不振に陥つた。それは主として高物価政策の不成績である。 鉄道運賃は、乗客が減じ収入が予期に達しない、高物価政策の失敗である。 煙草は、ミス煙草なる偶像をもつて宣伝する、高物価政策の失敗を自白するものである。 民間業者が、高価格を唱うる商品は売れ行きが悪い、果物の如きは、腐敗委棄するもの多数である。 人事院が、賃金の引上げを発表し、鉄道労務者が、賃金の引上げを要求するのは、高物価政策の失敗を立証するものである。 政府が、綿布一万数千ヤールを放出しても、価格が高いため一般大衆の手に這入るのは少いのである。 綿布について、連合軍司令部は値下げを指令したと伝えられている。 企業合理化は、高物価政策の下では完全には行われない。 高物価政策の下では、物価も賃金も安定しない、随て産業の振興も国民生活の安定も得られない。 右につき、 (1) 政府は、高物価政策の不成績を認めらるるか如何。 (2) 政府は、低物価政策を特に急速実行の意思なきか如何。 (3) 猶高物価政策を支持せらるるとせば、その理由如何。 右各項毎に答弁を望む。 第二 徴税の苛烈について。 割当を基準とする徴税が実行された。それは公正なる税額以上を徴収するものである。税務官吏は強者であり、納税者は弱者である、加るに差押公売をもつて強要する、相当に結果を収めたものと認められる、実に苛烈である。 第五国会において、私は実証を挙げて質問したのに対して、政府は、割当は実行しないと答弁された。 右につき、 (1) シヤウプ博士が、割当の不当を説かれたのは、割当徴税の実在を、調査の結果に依り重ねて実証するものである、政府の所見如何。 (2) 政府は、当初において、割当徴税の事実を知られなかつたのであるか。 (3) 政府がこれを知られた後において、税務官吏に対し如何なる訓諭を与へられたのであるか、又はそのままに放任されたのであるか。 右各項毎に答弁を望む。 第三 徴税の苛烈に因る国民思想の変化について。 徴税が苛烈であれば、国民思想は変化するものである。国民の間には、徴税がかように苛烈であれば我々の思想は変化せざるを得ないと云う声が、夥しく聞かれるのである。 古の言葉に、苛政は虎よりも猛なりとある、この言葉を借りて説明すれば、徴税の苛烈は虎よりも恐しい、それ故に、徴税の苛烈を免れるために、虎の林にでも逃げ込もうというのである。 右につき、 (1) 政府は、これらの実情を知られなかつたのであるか如何。 (2) 政府は、一面においては、思想の変化を抑制されている、しかるに一面においては、徴税の苛烈に因て自然思想の変化を来している。政府の施政方針が不統一である、政府の所見如何。 右各項毎に答弁を望む。 以上文書を以て答弁あらんことを望む。 |