質問主意書

第5回国会(特別会)

答弁書


答弁書第九十一号

内閣参甲第一〇八号
  昭和二十四年五月二十三日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員松井道夫君提出電源開発に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員松井道夫君提出電源開発に関する質問に対する答弁書

一、経済九原則は経済安定を当面の第一義としているが、その究極の目標は生産の復興殊に輸出産業の振興による経済の自立を図るべきことを指示しているものと考える。これがため産業の基礎動力たる電力の供給を豊富にする必要があり、わが国の電力供給力の現状から見て電源の開発が必要であることは質問の通りと考える。

二、電源開発に要する資金として自己資金の調達等によることは諸般の状況からみて多くを期待し得ない事情にある。従つて見返り勘定特別会計よりの支出の要請に関しては電源開発が諸産業伸長の基礎をなす点、投資対象把握の簡明、経理監査の容易、担保能力、収益力等よりみて援助資金の投資先としては最も適切な事業であると考える。

三、政府ではかねてより、経済復興計画に対応して電力復興五ケ年計画を策定しているが、客観状勢の変転に伴つてまだ結論を得ていない。
 ここに昭和二十八年度における貿易収支、鉱工業生産等に一定の条件を設け更に電力部門に対する配当資材を普通鋼々材四〇万トン、セメント三八〇万トンと見込んで計画した数字を示すと次のようである。
1 水力電源拡充
 増加出力(電気事業分)      一、一五一、〇〇〇キロワツト
2 火力発電施設
 拡充による増加出力        三一五、〇〇〇キロワツト
 補修改良による恢復増加出力    三七八、〇〇〇キロワツト
 老旧施設廃止による減少出力    二三〇、〇〇〇キロワツト
  差引増加出力          四六三、〇〇〇キロワツト
本計画を実施すれば、昭和二十四年度における電力需用三三二億キロワツト時に対して供給は六億七千万キロワツト時の不足を生じ、昭和二十八年度においては電力需用三九五億キロワツト時に対して、供給も三九五億と推定せられ、過不足がない状態になる。但し、渇水期の供給力においては昭和二十八年度においても約三十四万キロワツトの不足を生ずるので、これを水力発電によつて充足するためには本計画の外に、更に二十八年度までに六十七万キロワツトの開発が必要である。
 なお本計画実施に要する資金は五ケ年間に
設 備 資 金    二、〇〇六億円(うち二十四年度 二九〇億円)
補修復旧資金     六二三億円(うち二十四年度 一四一億円)
  計        二、六二九億円(うち二十四年度 四三一億円)
 を要するものと推定しているが、資金の調達は本計画遂行上の最大の問題である。目下政府においては見返り勘定特別会計よりの融資を計画し、関係方面と極力折衝中である。

四、尾瀬原を含む只見川の未開発水力資源は吾国最大のものであつて、しかも大貯水池築造に好適な地形と地質とを有していて、渇水期に補給電力を発生し得る点において特に重要性を有するものであり、急速にその開発を図るべきものと考える。
 商工省は速やかに本地点の開発実現をはかるため、一昨年以来鋭意調査を進めて参り、只今の所計画の基本となる要部の測量調査をほぼ完了し目下その開発計画の根本方針について研究中である。
 右開発計画において考慮される案には只見川沿いに下流までダム式に連続して発電する場合(所謂日発案)と只見川上流部より信濃川流域へ流域変更をなして発電する場合(新潟県案)の二案があり、その優劣について技術上の比較研究をしているが政府としては大局的見地より又技術的見地より最善の開発計画を樹てるよう目下検討中である。
 従つてその実施方策についても未だ具体的方針は決定していないが、この種大開発工事については現存の最高度の土木技術を動員し、最新の機械を利用することの必要であることはいうまでもない。なお、米国の援助要請については更らに研究することといたしたい。