質問主意書

第5回国会(特別会)

答弁書


答弁書第八十六号

内閣参甲第九七号
  昭和二十四年五月十八日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員板野勝次君提出塩業政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員板野勝次君提出塩業政策に関する質問主意書に対する答弁書

第一問答弁

 政府と致しましては、少くともわが国民の生存上必要な最少限度の塩は、これを国内にて確保したいと考え、常に関係方面との折衝にも努力を続けて参りました。ことに近時強調されて参りました日本経済自立化の線に沿う意味におきましても、安定した常時塩供給源として、或る程度の製塩設備はこれを確保する要があるのであります。
 しかし乍ら御承知のような現下の石炭事情によりまして、直ちに現在の設備を高度に操業させるだけの配炭をすることは困難な事情にありますので、復興五ケ年計画の線に沿い、これに織り込んだ配炭を逐次確保して、生産をあげて行きたいと考えております。
 右に述べましたような方針に基ずいて政府は逐次国内製塩の復興に努力しておりまして外塩依存政策というよりもむしろ国内生産の塩需要に対する不足分だけを貴重な外資により已むなく輸入に仰いでいる次第であります。塩に対する需要面は、人口増加及びソーダ等の生産計画増加によりまして昨年度一四五万屯から本年度一六五万屯に増加しておりますが、これに対し輸入は昨年度実蹟一二三万屯のところ本年度も一二五万屯とほぼ同程度でありその外塩依存度は七八%から七四%に低下しております。

第二問答弁

 御説の通り為替レートの決定により、外塩の輸入価格は屯当り六、八〇〇円程度となり、現在の国内塩購入価格九、七四五円との差は三、〇〇〇円程度となりまして、この点国内製塩には当初三三〇円レート見込に比し相当有利な条件となり、政府といたしましても、この面から国内塩業に対する方策を積極的に推進したいと考えております。しかし同時に、為替レートの設定は、国際価格への接近であり激烈な国際競争えの第一歩でありますから、円安にてなお上述の差があること、さらに現行の九、七四五円を本年も続けることは無理があることなどを考えると、他の産業と同様国内塩業においても企業合理化に努力しなければならぬと痛感いたします。
 又、国内塩業といたしましては、塩価格の差におきましては、従来より有利になつて参りましたが、配炭面においては、前に述べた通りの事情で、急激な増産は困難でありますから、復興五ケ年計画に沿い、一歩一歩と増産への道を進んで行きたいと考えております。

第三問、第四問答弁

 第三問、第四問に対しましては、当時熱源は需要に対して著しく不足し、従つて塩業に対しても存分に割当がなかつたのでありますが最近熱源の大宗をなす石炭の需給状況が可成り緩和されたため塩業に対しても低級のものではありますが相当額の配炭をみるようになりましたので、各方面と折衝の結果、遊休設備の転活用等による改造等に関しましてはある程度期待できるようになつたのであります。従つて設備の新設改良について了解のえられたものに対しては、政府としてもできるだけ資金資材の割当斡旋に努めたいと考えています。

第五問答弁

 塩の需給調製上必要がありますときは、製造数量を制限することがありますが、その場合同地域において取扱を差別することはなく、又製造制限を行つてもそれが専業製塩であると否とを問わず、補償金を交付することは考えておりません。なお製造制限は需給調節のための一時的のものであるので残存企業の立直りという問題は特別に考慮してはいないのであります。

第六問答弁

 御指摘の同報告書要綱第三項、第一号に謳はれた設備の整備、改良は是非共実現の必要がある事項でありまして、政府としてはできるだけ資材資金の確保に努めると共に確保し得たものは又なるたけ重点的に効果的に使用するよう努力しています。
 ただ資金については従来の復金融資が望めなくなつたため、所要資金は市中銀行に頼らざるを得なくなり、この方面においてなお一層の努力を払いたいと考えています。

第七問答弁

 整備委員会の活動は企業整備という企業面の合理化方策に重点をおいたもので、従つて最も利害の深い業者の意見を聴取し報告書が作成されたのであるが、その実行案の具体的な実施に当つては、勿論関係労働者の利害に影響することが多いので、労働者側の意見をも参酌する積りであつたところ、整備案の眼目をなす調整金の支出については諸般の事情により遺憾ながら実行に至らずして今日に至つている現状であります。なお整備委員会は報告書を提出し一応任務を了したので最近廃止になつています。

第八問答弁

 亜炭については二十四年度から指定生産資材割当規則の適用を除外され自由販売となりました。
 格外炭その他の特殊炭については計画生産の建前になつていないが年間概ね一二〇万屯程度が予想され殆んど全産業に向けられており特に製塩業には引取可能な全量を割当てる方針であります。