質問主意書

第5回国会(特別会)

答弁書


答弁書第八十一号

内閣参甲第九〇号
  昭和二十四年五月十四日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員松井道夫君提出農業政策等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員松井道夫君提出農業政策等に関する質問に対する答弁書

一 貴見の通りである。

二イ 土地の生産力を増強し、地方の維持増進を図る上において、堆厩肥、緑肥等の有機質肥料を施用し、土地腐蝕の増加を図ることは、配給肥料が全面的に無機質肥料化した現在、極めて必要であると認め極力これが増産を奨励しこれに必要な資材の確保に努力しているが、今後共さらに努力する。
ロ 堆肥の理想的な反当施用量は、作物別、地域別により異るが一作当り三〇〇貫以上が望ましい。
ハ 昨年度における堆肥の施用量は昭和二十一年度及び昭和二十年度の実績一作当り反当約二〇〇貫と略同等と推定せられる従つてこの量にては十分であつたとは考えられない。
ニ 堆肥の増産を図るため生産目標を樹てることは一方策であると思われる。現在では各地方の実情に応じ生産目標を樹立してこれを実行している処もある。
 なおこれに必要な資材については極力配給に努めている。
ホ 化学肥料の反当りの理想的施肥量は作物土性、肥料成分の天然供給量及自給肥料の施用状況等によつて一概にいえないことは勿論であると共に、実際的には従来の施肥慣行及農家経済の状態等の制約も又あるので非常に至難なことであるが、現在各種検討の結果作定せられている全国の平均的のものについて述べると大要次の如くである。
作 物 名窒 素 質 肥 料
(硫 安 換 算)
燐 酸 質 肥 料加 里 質 肥 料
(成分五〇%換算)
貫    貫    貫    
八、六五、五一、〇
八、〇一〇、〇一、三
甘藷五、〇四、〇四、〇
馬鈴薯九、〇八、〇四、〇
一八、〇七、〇一、〇
二五、〇七、〇一、〇
ヘ 昨年度における化学肥料の配給実績並に本年度の配給計画は別表の通りである。
肥料の需給事情は現在まだ満足すべき状態でないのであつて、主要食糧作物、輸出農作物等を重点的に考慮することとしてある。
 尚最近(五月七日)輸出農作物に対しては、その輸出産地に特別配給をする計画を決定した。

(別表)昭和二十四年春肥全国平均反当施肥量と前年比較 1/2
(別表)昭和二十四年春肥全国平均反当施肥量と前年比較 2/2

三 開拓適地の選定に関しては、「開拓適地選定の基準」を定め、従来地元農家により採草地又は自家用薪炭林として利用されている土地を開拓適地に選ぶときは、特に慎重を期し、地元農民の福利に重大な影響を与える場合には、土地利用上の調整をはからねばならないこととしており、通常必要とされる採草地又は自家用薪炭林にまで買収がなされる場合には、自作農創設特別措置法第三十七条によつて代地を与え、更に土地の管理を極度に集約化した上での必要最少限度の代地が得られないときは、調査班の判定によつてその土地を開拓適地に選んではならないこととしている。水源の涵養についても考慮を払い、保安林等で治山治水上重大な関係にある土地については、原則として開拓適地に選んではならないこととしている。

四 他に主たる使用目的のない採草地は自作農創設特別措置法第二条第一項の牧野に該当する。従つて同法第四十条の二の規定による基準面積の範囲内であれば買収されることはない。
 農家経営に最少限度必要とする自家用薪炭林を未墾地買収から除外する直接の規定は、現行法にはなく又特にこの点につき法律改正を提案する必要を認めないがしかし本法の運用としてかかる土地を未墾地買収するは原則として不適当である。なお止むを得ず買収するような場合には同法第三十七条で代地を与える途が開かれている。他に主たる使用目的のある採草地は同法第三十条第一項第一号の牧野に該当しないから未墾地買収される場合があるが、かかる場合も同法第三十七条の代地を与えるを適当とする。

五 草生保護の目的にする庇蔭林として、植林することが牧野の利用上有効となり必要である場合がある。但し採草地としての利用度を減少させ採草地の使用目的の変更を招来するが如き植林は認められない。

六 樹冠の疎密度が三割以上であるから牧野でないとは必ずしも言えない。一般的には三割以下のものを牧野として居るが、三割以上であつても、主たる目的が牧野であるか或はその他のものであるか判明しない場合には、放牧の場合には年間放牧頭数が一二〇日以上、採草の場合には反当乾草量三〇貫以上の場合には牧野として扱つて居る。従つて斯かる土地は同法第三十条第一項第一号の牧野に該当するから未墾地買収は出来ない。

七 牧野の認定基準として樹冠の疎密度三割以下としたことについては、別段法的根拠がある訳ではなく単なる行政上の運用方針であるが、これはカラマツの植栽試験における草生量が最も優良であつたのは疎密度〇、三二四であつたという試験成績(林業試験場技師大迫元雄氏)等が参酌されたものであり、この基準は、国有林施業案規程(第三十条)、馬産限定地の管理経営方針に関する件(記第二施業計画)等においても従来から採用されているところである。

八 牧野について草の最低生産量は乾草で反当三〇貫以上と言ふことにして居る。但し之は樹冠の疎密度が三割以上の土地で主たる目的が採草にあるか否か判明しない場合の判定基準であつて、三割以下の場合には考慮しない。故に絶体的のものではない。

九 自作農法第四十条の二の規定により定められている、牧野保有面積は牧野統計と農林統計と勘案して決定されたものであつて、牧野台帳登録の多少により影響を受けているものでないから御質問の点はないと考える。

十 以上の趣旨については、政府はあらゆる機会に現地諸機関に対しその徹底に努めて来たがなお牧野の認定如何に関しては曩に通達を発している。