質問主意書

第5回国会(特別会)

答弁書


答弁書第七十二号

内閣参甲第七八号
  昭和二十四年四月二十八日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員北條秀一君提出引揚開拓民の入植についての質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員北條秀一君提出引揚開拓民の入植についての質問に対する答弁書

一、終戦後の新規入植の実績について

1.入植者の数一六三、八五九戸(二三年一二月末現在)
 内引揚開拓民二二、五二八戸(二三年一〇月二〇日現在)
2.入植者開墾面積十五万六千町歩(二四年二月末現在)
 内引揚開拓民分二万町歩(但し、概数とする。)
3.経 費
 政府融資額三十七億五千万円
  内引揚開拓民分約五億円(但し、概数とする。)
 開墾補助額三十三億五千万円
  内引揚開拓民分三億七千万円(但し、概数とする。)
 その他約 五十一億五千万円
 合 計約 一二二億五千万円
4.落伍者数二五、六四五戸(二三年一二月末現在)
(内引揚開拓民の数は不明)
5. 落伍の理由
 終戦直後の混乱期に入植した者の中には落伍した者が多かつたが、昭和二十二年度以降は慎重な選衡を実施して入植せしめる方針をとつているので、落伍者も激減している。落伍の理由とみとめられるのは次のようなものである。
1 開拓営農の困難に基因するもの
2 開拓営農の意思薄弱又は身体の虚弱によるもの
3 家庭的事情によるもの(生計の不安、世帯主の死亡等)

二、本年度においては、新規入植者を引揚開拓民のみに限定することは、その後の関係方面の意向により困難と思われる。

三、本年度入植し得ない引揚開拓民の積極的救済については、明年度において考慮したい。

四、開拓者に対しては、現在政府の家畜預託制度は実施されていないが、これに代るべきものとして、融資制度が採られている。それは開拓者に家畜を預托することは比較的危険も多いので、開拓者に対する営農融資金の一部を現物にかえて貸付ける方法を講じているが、五年据置十五ケ年償還の条件はむしろ極めて有利であると考えている。この方法は牛、馬に限つており、比較的廉価で購入容易な他の中小家畜については営農融資金の現金部分を以て適宜購入させるように指導している。

五、入植者に対する現物貸与の現行方法について、

1.炭カルの例
 青森県に導入する炭カルを東京から持つて行く、とあるが、そういう事実は全然ない。青森県における昭和二十三年度の特殊融資(開拓者融資金のうち現物で斡旋融通しているものをいう。)炭カル需要に対する割当量は、一、三〇三屯(一〇〇%)であり、その出荷工場は青森県北日本石灰株式会社二〇〇屯、岩手県の東北炭カル株式会社一、一〇三屯である。前者の工場において一〇〇%出荷することができなかつたのは、工場立地その他の条件から見て時期的にこれ以上の出荷能力がないので、後者に出荷させたわけであり、炭カル工場は各農地事務局の区域毎にあるので大体地区単位に需給が出来るものと考えている。
2.馬橇の例
 これも亦東京から輸送した事実は全然ない。東北、北海道に送付した橇は、函館の全ゴム車輌株式会社と青森県の佐々木農機株式会社の製作にかかるもので、同会社と需要者との間には、型その他については打合せ済のものである。
 以上のように目下のところ不合理な点はないものと確信しているが、なお今後とも研究を加えて、この制度の適切な運営を図りたい。