質問主意書

第5回国会(特別会)

答弁書


答弁書第七十号

内閣参甲第七五号
  昭和二十四年四月二十八日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員橋本萬右衞門君提出漆器に対する物品税の改正に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員橋本萬右衞門君提出漆器に対する物品税の改正に関する質問に対する答弁書

一 終戦後の国家財政は今なお窮迫の事情にあり、又国民は再建のために最低生活に耐乏しなければならない現状であるため、しやし的、高級的物品のみならず、ある程度国民生活に関係の深い物品についても物品税を課することをやむなくせられているのである。ただその物品の品質、消費の状況等の差異に応じて税率又は課税最低限の差等を設け、課税の適正を図つている次第であつて特に最近においては、経済情勢、社会生活状況の変化に伴い、実情にそうよう税負担の軽減を図ることとし、昨年七月に税率の引き下げ、同年九月課税最低限の引き上げ等を行つたのであつて、大体において課税物品間の負担は権衡を得ているものと認められるのである。なお物品税は、重要な財源となつているので適当な代り財源もない今日においては、この廃止は困難であると考える。

二 漆器については、昨年七月その税率を五割から三割に引き下げ、同年九月課税最低限を物価水準に順応し、且つ取引の実情にそうよう引き上げたのであつて、只今の経済情勢、生活状態等からみて直ちにこれを改める理由も認められず、しかも同種の用途を有する陶磁器、ガラス製品との権衡もあり、本品のみを軽減するときは、他にも影響を及ぼすこととなり、ひいて租税収入の確保を期しがたくなるので、税率を一割にし、課税最低限を十倍にする等のことは困難と考える。

三 物品税は各物品についてその品質、用途等の差異により類別、号前に区分し、税負担の権衡を図つており、漆品と同様な用途を有し、型態も類似する陶磁器、ガラス製品とこれを区分することは理由がないものと考える次第である。

四 現行の税率は従価三割であり、この程度の負担の消費の転稼はさして困難とは考えられず、又現行の従価税率による課税方法は漆器のような品質価格に差異のある物については最も合理的であると考えられるのであつて、物品税が生産及び技術の発展を著しく阻害しているとは認められず、又輸出物品については物品税を免除しているのであるから、輸出を阻害するおそれはないと考えている。
 以上の理由により御趣旨にそうことは困難と考えるのであるが、なお生産、取引並びに消費の実情を調査し検討することといたしたい。