質問主意書

第5回国会(特別会)

答弁書


答弁書第六十三号

内閣参甲第六八号
  昭和二十四年四月二十六日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員池田恒雄君提出食糧確保臨時措置法の運用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員池田恒雄君提出食糧確保臨時措置法の運用に関する質問に対する答弁書

一、生産者別農業計画が未だ完了していない町村があることは御指摘の通りであつて、政府としても二月中旬以降しばしば、都道府県知事に対しても早急に個人別割当を完了するやう督励して来たし、今後も督励する積りである、尚生産者別割当があいまいとならない様二十四年産農業計画は必ず所定の文書によつて、市町村長から生産者に指示する様指導している(昭和二十四年三月十八日付二四食糧第一三一九号「昭和二十四年産主要食糧農産物の農業計画の生産者に対する指示に関する件」通達)
生産者別農業計画が遅れている理由は主として
(1) 二十三年産米の供出が遅れていたため末端機関は先づ供米督励に全力を傾注したこと、
(2) 従来の供出実績から見た末端では個人別割当の公平を期するため資材の再整備及び地力調査の再検討を行う必要に追られたがこれ等の資料の整備に日時を費したこと、
(3) 震災地、水害地等においては災害を受けた耕地の未復旧、或は異動の整備が遅れたこと、等に基くものが多いが県でも目下ラジオ、新聞等の弘報機関の活用或は督励班による現地指導等によつて、未端割当の完了を急いでいる。

二、昭和二十三年産米の超過供出は各農家に対して食糧管理法に基く追加割当を行い強制するのではなく我国の現状から、農民の同胞愛的な表情に訴えての自主的供出を強力に勧奨する方法によつたもので各町村では各種弘報手段を最大限に活用して趣旨の未端浸透を図り経済再建超過供出運動を展開し農民の自主的供出を要請したのである。

三、供出割当の不公平によつて農家の階層分化が歪んだものとなることは御説の通りである、各農家別にみると一体どの農家が真の供出により不当な利得を受け、どの農家が不当な損害を受けているかは実際上判定が非常に困難であり、それが可能ならば公平な供出割当が出来るのである。

四、国の機関が科学的調査を基礎として直接供出割当を行うことが公平なる割当実現の一つの方法として考えられるがこれは現在の財政事情から云つても直に実現は困難であるから、政府は諸般の情勢からも農業調整委員会の運営改善により均衡ある割当の実施を期している次第である。

五、事実飯米農家に割当をすることがあつた場合には農家配給によつて、出来る限りの訓示を行つている。

六、農林大臣は都道府県知事に供出期限は三月末迄に定めなければならぬことを指示しているから四月になつて農家が供米に追われるとすれば、それはそれ迄供米を怠つた農家と考えられる。現在供出の確保については法律上都道府県知事乃至市町村長が責任を負つているのであるから責任上も当局者が供出の督励を行わざるを得ない。

七、農林大臣の指定している雑穀は食糧管理法施行規則第一条第一項の農林大臣の指定する雑穀と同様で農林省告示で定めている。
 大豆、小豆、えんどう、いんげん、そらまめ、ささげ、緑豆、そば、えん麦、ライ麦、あわ、ひえ、きび、もろこし、とうもろこし、落花生で現在迄知事の指定する雑穀はない。知事は農林大臣の指定している雑穀以外の雑穀について必要あるときに指定する。

八、昭和二十四年度の奨励措置中決定済のものは麦、馬れいしよの報奨物資のみで、米、甘しよの報奨物資超過供出奨励金については目下検討中である。
 麦、馬れいしよリンク物資の種類及数量は左表の通りである。
リンリ物資単 位数   量備   考
(一) 繊維製品及作業用品二十三年度
 (イ) 綿織物千反二、五〇〇二、一八四
 (ロ) タオル千反二、三五〇(作業手袋)五二二
 (ハ) 地下足袋千足八七六六五八
 (ニ) 自転車タイヤチユーブ千本一〇〇一〇〇
 (ホ) リヤカータイヤチユーブ千本一〇一〇
(二) 嗜   好   品
 (イ) 国産煙草千本二八八、〇〇〇一五七、二〇〇
 (ロ) 酒四八、〇〇〇三三、〇〇〇

 昭和二十四年度主要食糧に対する割当生産資材の購入所要金額は左表の通りである。
生 産 資 材同  金  額備   考
肥     料二〇〇億円
農  機  具一二二〃  
農     薬二九〃  
三五一〃  

 右に対し本年も二月十二日よりこれが購入資金の調達に関し農業手形制度を実施し金融の円滑化をはかつている。

九、農業計画の公表については掲示板に掲示することを指導している。

一〇、生産者の意見を徴するため経営申告のごときものを提出せしめるか、部落集合を持つて意見を徴するようにし意見を徴せずして割当することがなきよう指導しているが意見を徴せずして割当した場合は市町村長は改めて意見を徴し割当を行わなければならない。

十一、勘案する六項目は第五条によつて市町村長が生産者別の農業計画を指示する場合に考慮することになつているので市町村長は本年の割当に際しては当然六項目を勘案の上生産者別の農業計画を指示しているものと思はれる。
具体的事例は調査資料を欠くため不明であるが農林省において各都道府県別農業計画を指示することに際しては、国の食糧需給と統計調査による県別の面積農家人口、家畜、主要食糧作物並びにその他の作物の作付状況を考慮して府県別の農業計画を指示しているのであるから未端における農業計画の指示も当然これらの点が考慮せられているものと思考せられる。かかる末端における農業計画指示の実態については今後適当な機会に調査をすすめる予定である。

十二、国の調査によれば茨城県の生産者別農業計画は未だ完了していないので早期に完了し生産者に公表する様督励している、県としても三月十八日以後において、多少事務的にあいまいな市町村もあることを発見したので目下継続して指導督励中である、本県が事前割当の遅れて居るのは昨年の地力調査の不備を修正するため、徹底的な地力調査を実施したためである。