質問主意書

第5回国会(特別会)

答弁書


答弁書第五十号

内閣参甲第五五号
  昭和二十四年四月十五日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員小林勝馬君提出海上保安庁職員に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小林勝馬君提出海上保安庁職員に関する質問に対する答弁書

 海上保安庁の所掌事務は、海上における治安の維持と航海の安全の確保とに大別され、その業務内容は何れも海上の保安に関するものであるが、その所掌事務のすべてが海上において執行するものとは限らず、又海上実歴者を必要とするもののみではない。例えば灯台局関係では、航路標識の建設保守、運用等の業務は陸上において行い、その方面の専門技術者であれば必ずしも海上実歴者であることを要しない。水路局関係では、水路測量原図の調整、潮汐潮流諸元の推算、天文諸元の推算等は専門の物理学者でなければ研究処理し得ないものである。
 保安局関係においても、船舶検査は必ずしも乗船経歴者に限定すべきではなく船舶工学に通じた専門技術者の技術的検査も必要であり又巡視船の設計等についても造船又は機関工学の専門家を必要とする。
 逮捕した犯人の処置については、司法警察事務に通じた法律家であれば必ずしも海上経験者であることは必要でない。
 以上の如く海上保安業務を遂行する上において海上実歴を有することは一面絶対に必要とする部面があることは勿論であるが、全般的に見ると、海事に関する知識は必要としても、必ずしも海上実歴を必要としない職域が相当ある。
 陸上職員の内海上実歴者の占める割合を示すと別紙のとおりで、中央では六%地方では二二%合計すれば一六%となつて居るが、前述の事情を参酌すれば、陸上職員に対する海上実歴者の比率は左程低いとは言えないと思う。しかしながら地方の人員配置を検討した結果、海上実歴者を必要とする部署にこれを欠いているものが見受けられる。
 この点は至急改善したいと考えている。
 これを要するに海上保安庁は海上勤務者と陸上勤務者、海上実歴ある者と海事行政経歴ある者とが海事に関する知識と経験と理解とを持ち寄つて建設すべき新制度であり、全職員が機会均等に発展してゆく組織としなければならぬと考えている。

 陸上職員中海上実歴者の占める割合

 部 局 別陸上職員数
(1)
内海上実歴者数
(2)
(1)に対する
(2)の割合
備       考
(中   央)一、五三八九〇(四四)五・九(二・八)( )内は海技免状受有者を示す
 長 官 官 房二〇三一一(五)五・四
 保 安 局三二八四九(二一)一四・九
 水 路 局七九五二二(一六)二・八
 燈 台 局二一二八(二)三・八
(地   方)二、五八一五七六(二三〇)二二・〇(九・〇)
 横   浜二九二一一一(四一)三八・〇
 名 古 屋一三六一四(八)一〇・三
 神   戸三二三八三(四八)二五・七
 広   島三八〇九二(二八)二四・二
 門   司八一九二一九(七五)二六・七
 舞   鶴一一〇三五(一二)三一・八
 新   潟九四三(三)三・一
 塩   釜一八〇一〇(六)六・一
 小   樽二四七九(九)三・六
 合   計四、一一九六六六(二七四)一六・〇(六・六)

(参考)
 区 別全 職 員海上である海上実歴者海上職員海上実歴者の合計全職員に対する比
中   央一、六六三九〇一四五二三五一四・一三
地   方五、五〇四五七六二、九〇二三、四七八六三・一九
 計七、一六七六六六三、〇四七三、七一三五一・八〇