質問主意書

第5回国会(特別会)

答弁書


答弁書第三十七号

内閣参甲第四〇号
  昭和二十四年四月一日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員池田恒雄君提出反税運動取締に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員池田恒雄君提出反税運動取締に関する質問に対する答弁書

一、反税運動の見解

 所謂反税運動とは種々なる意味に用いられているようであるが、警察取締の対象となるのは反税行為の意味であつて、反税行為とは国税犯則取締法第二十二条の法益を侵害する行為及徴税を阻害する税務代理士法違反行為を云う。
 即ち国税の納税義務者が為すべき課税標準の申告(申告の修正を含む)をしないよう、若は虚偽の申告をするよう、あるいは国税を納付しないようせん動する行為、又は税務官吏に国税の徴収をしないようせん動する行為及び直接に国税の納税義務者のなす申告を阻害したり、あるいは虚偽の申告をさせたり、又は納付若しくは徴収を阻害する目的をもつて暴行脅迫をなす行為並びに徴税を阻止する税務代理士法違反行為を云う。

二、地方機関に通牒した内容

 昨年十二月十九日指示せられた経済九原則の中に、財政収支の均衡並びに徴税の強化と脱税者に対する刑事訴追が指適されており、更にこれに関して十二月二十一日第一軍団司令官より覚書も出されているので、それらの趣旨にかんがみ反税行為取締の根拠を示して来た。且又反税行為取締の根拠法である国税犯則取締法第二十二条違反は同法にいう犯則事件ではなく、従つて収税官吏に調査の権限がないので他の税法犯と異り本条違反は警察官又は検察官が取締るほかないので特にその旨を示したのである。即ち
 第一回目二月十日の通牒は租税徴収による歳入の確保が健全財政維持の要諦なるにかんがみ、経済九原則に逆行する反税行為の取締に対する根拠法として国税犯則取締法と税務代理士法及び徴税に随伴して生ずる刑法犯に対する刑法各法条の解釈を示したのである。
 更に二月二十八日には税務代理士法の解釈について法務庁、大蔵省と協議した点を更に詳細に説明し併せて税法犯一般の捜査について税務官吏の調査と警察の捜査の関係及び協力の方法等について説明すると共に税務官吏のとく職をも取締るよう指示した尚第一回及び第二回の通牒により国税犯則取締法第二十二条により反税行為者を取締る趣旨は明らかであるが更にこれを明にすべく念のため三月九日通牒した。即ち
(1) 反税行為を国税犯則取締法第二十二条により取締るを本旨とする
(2) 尚税務代理士法違反は反税行為を伴う場合これを取締る

三、地方機関に通牒した根拠

 国家地方警察本部は国家公安委員会の事務部局として同委員会の事務である警察法第四条に掲げる事項を掌るのであるが、都道府県国家地方警察の運営管理を円滑ならしめるための行政管理は国家公安委員会の権限であり又責務である。従つて都道府県国家地方警察の運営管理即ち取締りを全からしめるため凡ゆる関係法規の制定、運用、解釈等その他について連合軍総司令部及び中央各官庁に対し接渉打合せをし又はこれら官庁の意図を協力に連絡すること、及び取締を円滑ならしめるため一切の資料の提供等は警察法第四条に認められた国家地方警察本部の責務と思考する。