質問主意書

第5回国会(特別会)

答弁書


答弁書第四号

内閣参甲第五号
  昭和二十四年二月二十三日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員小川友三君提出産業振興対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小川友三君提出産業振興対策に関する質問に対する答弁書

一、復金の融資額の減少に対する対策

(一) 復金融資の現状
 復金融資は従来生産第一主義殊に石炭生産に関する最重点主義の線に沿い、比較的順調に行なわれており、ために、石炭生産も、逐年増産の率を高めて来たのである。しかしながら昨年末三原則、九原則の実施以降急激に、金融政策は引締められ上期炭鉱住宅資金九六億、下期設備資金九八億に対しては、四、四半期の石炭資金枠六〇億に圧縮されたため、三月末においては設備、四九億、炭住二一億の融資残を生ずるため、設備資金関係においては、相当程度の未払が発生することとなる。

(二) 対策
 現下インフレの克服と日本経済の復興のためには、通貨金融政策と、生産政策との完全なる調整が必要であることは勿論であるが、現に、昨年の金融引締政策は或程度効果を発し一昨年の二分の一の通貨増発量に止まり物価は横ばい状態となり他方生産も戦前の六〇%に回復しつつある。
 この趣旨を体し従来共、復金融資に当つては、事前に、炭鉱別、工事別の厳重なる審査を行い、資金繰を勘案して、総花式融資方式を一擲して貴重にして尨大なる国家資金の放慢支出を防止していたのである。しかる所昨年末の三原則、九原則の実施は、未だ炭鉱企業の自立態勢の確立ならざる所に、急激に強行されたるため、炭鉱企業は、経常経営の軌道に策るべく鋭意努力中ではあるが目下は非常に苦境に陥つていることは事実であるがしかし既に、このことあるを予想して、昨年十月賃銀改訂を機に炭鉱企業は、従来の政府依存主義を一擲し企業の合理化と能率の向上による企業の自立え邁進してきたのである。
 かかる現実の事態に対しては、政府当局としては具体的に左の諸対策をもつて臨むつもりである。
(1) 第四、四半期の資金枠六〇億に対しては、設備、炭住の工事進捗未払額の実績整い次第約三〇億の追加要求を三月中旬になすつもりである。
(2) 新勘定赤字の処理が年度内に行われるため、四月以降は或程度企業内容も改善され、自立態勢えの一歩を踏み出すつもりである。
(3) 炭鉱経理については、冗費の節減殊に、労務費について、従来ややもすれば闇賃銀の事実が見受けられたが、来年度以降においては賃銀協定の厳格なる遵守を励行せしめる。
 これがため常時経理監査を行うと共に、協定内容につき審査を行う。
(4) 来年度以降においては資金の重点的配分を行い、所謂、良質炭炭鉱の設備、炭住資金のみを考慮し、且つ返済能力なき炭鉱には、融資を行わず、他面必要なる資金については、自己調達によらしむるを原則とし、復金融資は最少限度に止める。

二、坑木対策

 次に坑木に就いては需給状況よりみて相当逼迫しているが本年度割当量原単位は出炭トン当り〇、三一九石で来年度見透しはこの原単位を引上げることは目下の所困難と思われるから極力適木入荷を図ると共に使用合理化を促進し出炭目標達成に要する坑木は必ず確保するよう努力する積りである。二十三年度出炭三、六〇〇万トン計画達成に必要な坑木一、一五〇万石は既に割当を了し現物化状況も概ね良好にて年度当初全国平均維持日数三五日であつたものが十一月末現在四七日に向上した。
 来年度出炭計画に必要な坑木は出炭トン当り所要石数〇、三三石とするとき、約一、三〇〇万石を所要することとなるのであるが木材資源枯渇の現状を考慮するとき、一、二七〇万石以上の供給は困難と予想される。抑々戦前戦時中における出炭トン当り坑木所要量は〇、二石前後であり、戦後急激に増大し〇、三石乃至〇、三三石を要する様になつたのであるが、この増加原因は戦後の炭鉱の荒廃及び新たなる坑内発展工事等の必然的原因の外、炭鉱の使用技術資材管理面の欠陥と共に戦後の経済条件に左右されている不適木入荷による浪費部分もあると考えられるので本年二月よりこれが原因を徹底的に調査するつもりである。なお坑木資源需給の現状よりみて今後共炭鉱における使用の合理化を一層徹底せしめると共に更に坑枠レールの確保と鉄支柱の普及により絶対必要量の確保を図ることと致したい。又出炭確保に必要な坑木の生産確保のため、坑木業者の必要とする資金に関しては、復興金融金庫よりの融資に就いて極力これが斡旋に努め、十一月十五日現在融資残品七億七千五百万円となつているが、今後の出炭増に伴う所要坑木の生産資金に就いては、目下極力その融資の円滑化を期すべく努力中である。