質問主意書

第5回国会（特別会）

質問主意書


質問第九十号

徴税に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条に依て提出する。

　　昭和二十四年五月十三日

市來　乙彦      

　　　　　　　参議院議長　松平　恒雄　殿


　　　徴税ニ関スル質問主意書

第一、曩ニ首相ノ施政演説ニ対スル私ノ質問中政府ノ答弁ナカリシ事項ニ付茲ニ質問致スノデアリマス。

（一）　私ノ質問中ノ一節
　「私ノ考ヘヲ以テスレバ、納税者トシテハ正確ナル基礎計算ニ基イテ正確ナル申告ヲナシ、政府モ亦正確ナル基礎計算ニ依テ査定ヲナスベキモノデアルト考ヘルノデアリマス。若シ此慣行ガ今日廃レテ居リマスナラバ此慣行ヲ馴致スル様ニ政府ハ指導スベキデアルト考ヘマス。此私ノ鄙見ニ対シテ政府ノ意見ヲ承知シタイノデアリマス。」
　右ニ対シテ茲ニ政府ノ意見ヲ承リタイノデアリマス。
（二）　私ノ質問中ノ一節
　「近頃所得税ノ徴収、査定、決定ト云フコトニハ如何様ナ方法ヲ採ツテ居ルカト云フコトヲ、政府当局者カラ致シテ極メテ率直ニ極メテ詳細ニ御話ヲ伺イタイノデアリマス」。
　右ニ対シ政府ガ質問ノ趣旨ヲ諒承セラレ懇切ニ説明セラレンコトヲ希望スルノデアリマス。

第二、更ニ其際政府ノ答弁中

「所得税ガ非常ニ増加シテ居ル之レダケ取レルカト云フ御質問デアツタト思ヒマスガ、只今ノ物価其他ノ状況カラ申シマシテ、今ノ現行税制ノ下ニ於キマシテ大体取レルト見込ンデ居リマス、又取レル確信ガゴザイマス」。
　右確信ノ根拠ハ単ニ物価其他ノ状況ト云フ唯漠然タルモノデアリマスカ、又ハ何等カ確実ナル基礎ガアルノデアリマスカ、ソレヲ詳細ニ承リタイノデアリマス。

第三、本年五月一日発行ノ毎日新聞紙上ニ次ノ様ナ投書ガアリマス。

　去ル十七日附ノ徴税ノ裏表「税ヲ納メル立場ト取ル方策」ト云フ座談会ノ記事中デ平田主税局長ハ吉阪氏ノ問ニ「税ハ税法ニ依テ取ルベキモノダ歳入ガ足リナイカラ税法ニ依ラナイデ納メサセルト云フコトハトンデモナイ（後略）ト言ツテ居ル（中略）、私（中略）税務署カラ出頭通知ヲ受ケ出カケタ処、吏員ガ『実際ハコンナニ多額ノ取引ガアル訳デハナイデシヨウガ、私達ノ方モ取立テ額ヲ割当テテ来ラレルモノデスカラ、皆サンニ御諒承ヲ願ツテ納メテ頂クヨリ他ハナイノデス、ソレガ厭ヤナラ差押ヘラレタ時ニペコペコ頭ヲ下ゲテ謝ツテモ知リマセヌヨ』。ト言ツタ、何ト云フ言葉ダロウ（中略）主税局長ノ話ト下部吏員ノ話トガコンナニ違ツテ居テモヨイモノダロウカ（下略）。
　此投書ハ徴税上ニ何等カ公正ナラザル手段ガ行ハレルノカト云フ様ナ疑惑ヲ局外者ニ起サセルモノデ誠ニ遺憾デアリマス。ソレトモ若シヤ左様ナ取扱ガ実在スルノデアリマスカ、ソレヲ承リタイノデアリマス、之ト共ニ此投書ノ記載事実ニ対スル政府ノ意見ヲ承リタイノデアリマス。
又連合軍総司令部当局者ハ左ノ通リ申シテ居ル。
　租税法ハソレガ如何ニ理論的ニ正シク公平デアロウトモ、ソレガ公正正当ニ施行サレネバ国民ハ不当ナル税負担ニ悩マナケレバナラナイ、（中略）税務ハ政府ト国民一人一人トヲ実際ニ結ビ附ケルモノデアルカラ（中略）国民ノ間ニ税務ニ関スル職務ガソレガ受ケルニ足ル威信ト尊敬ノ念ヲ喚ビ起コス様ニ努メナケレバナラナイ。（下略）（昭和二十四年五月十一日毎日新聞）
之ニ由テ観テモ前述ノ疑惑ヲ起コサセル様ナ公正ナラザル手段ガ万一ニモ実在スルトセバ、国民ハ不当ナル税負担ニ悩マサレ政府ト国民トノ結合ハ望ミナク税務行政ハ威信ト尊敬トヲ失ヒ、茲ニ民心ハ政府ニ離反シ国民思想ニ一大変化ヲ来タスデアロウ、誠ニ懼ルベキデテル、政府ハ人心ノ機微ヲ察シ真剣ニ之ヲ考慮セラルベキデアル。
　私ハ之ニ対スル政府ノ意見ヲ承リタイノデアリマス。

　　以上書面ヲ以テ御答弁アランコトヲ希望致シマス。