質問主意書

第5回国会(特別会)

質問主意書


質問第八十四号

課税に対する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十四年五月六日

青山 正一      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   課税に対する質問主意書

 漁業に対する課税の問題は、全国的に重税に喘ぐ漁民の悲痛な叫びとして表面化し、税金亡国の域にまで追込まれている。
 吾等は元より課税を否定するものではないが、その限度は、適正なる課税にあることは、論を俟たない。現在の徴税が果して適正に行われているであらうか、強く否定せざるを得ないのが実情である。吾等が特に強調したいことは、所得の決定に際して必要経費の控除の点である。水揚量即ち所得なりと、簡単に片付けられることは余りにも実際を無視した行方である。税務署が漁業経費に付、幾等の理解と認識を有するかの点は、寧ろ大なる危惧を持つている。
 試みに鰤大敷網一統を整備するためには、直接的な網、ロープ、燃油等の資材費のみで、九、四三三、四七〇円を必要とし、鰮瓢網は、二、三九一、三七一円を必要とする。勿論右は、昭和二十二年末の価格を基礎としての経費であり、消耗率鰤は七九%、鰮は七九%の計算における数字にして新規敷設経費は、鰤二一%、鰮二一%が更らに加算されるのである。右は上述の如く直接資材費のみで漁船、人件費、消却費、金利、雑費等は、全然除外されている。しかも右の経費は、一尾の漁獲なくとも当然消耗される必要経費である。各種各様の業態に応じて以上の如く最低経費が控除されているのであらうが、更らに蒐荷面に及ぼす影響についての問題である。
 例えば京都府は、集出荷の点については、全国一を誇り得る実績をもつている。私等の想像する処では、ルート外に逃げる量は一割未満と見ている。しかるに偶々一部落において、仮りに三割の横流しがありとすれば、全量正規ルートに出荷する部落も、不正部落と同率に三割の闇を加算して所得を算定する実情に在る。かかる査定が正規ルートへの出荷を阻害することは、必然的となり、横流しを奨励する結果となる。ルート統制は、依然として強化されている反面、この精神に逆行する結果を生ずることは、闇と正規を混同し課税の対照として正直者も一律に闇屋視することに原因していることである。
 かかる不穏当な査定方針が正直者を毒することは、極めて、顕著な事実であり不当な査定に起因して正常ルートより漸次魚は逃避することは争えない現実の姿である。
 政府は統制と課税のこうした矛盾を如何に調整し、完全課税を遂行せんとするか、具体的な所見を伺う。