質問主意書

第5回国会(特別会)

質問主意書


質問第六十一号

生活保護者の子女の高等教育に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十四年四月十二日

姫井 伊介      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   生活保護者の子女の高等教育に関する質問主意書

 生活保護者(以下被保護者という)が、その子女の高等専門教育につき、悲痛なる進退難に悩んで居ることは御承知の通りである。
 文化国家建設については、教育の機会均等に即する高度の適能教育が行われなければならない。
 しかるに、被保護者の子女で、進んで高等教育を受けようとすれば、生活保護を停止せられるので、如何に優秀なる天分に恵まれた者でも、義務教育以上の高等教育は正式に受け得られないことになつている。
 かくては、個人としては、天分発揮の門戸は閉ざされ、自然貧乏相続を強いられ、やがては、思想の悪流におぼれること無きさえ保し難く、又、国家としては、あたら英能良材を地中に埋めることとなり、広く及ぼすその損失は、実に計り知られないのである。
 ここにおいて、被保護者の子女中、有能の者に対しては、当面の措置として、大日本育英会(以下育英会という)の奨学金の貸与を受けさせるの道を開くことが緊要であると思う。けれども、育英会の現行事業では、この辺のことが考慮せられていないから、社会上特に関心を持たなければならない被保護者の優良児は、高等教育の天地から締め出しを食い、憲法第二十六条第一項における応能受教の権利を奪われている状態である。
 故に、今後、育英会の事業にワクを設け、採容すべき奨学生の総数の内、少くともその六〇%は被保護者の子女を採選するようにすれば、育英会の国家的、社会的使命達成上、その成果は一層高揚し、一方、問題事業の欠陥は補われ、他面、防貧救貧の施策上、有効なる一助ともなると信ずる。

  右に対する政府の処見を問い、文書答弁を求める。