質問主意書

第4回国会(常会)

答弁書


答弁書第十三号

内閣参甲第二〇九号
  昭和二十三年十二月十七日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員板野勝次君提出塩業政策に関する質問に対する答弁書に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員板野勝次君提出塩業政策に関する質問に対する答弁書に関する質問に対する答弁書

第一問答弁

 第一問に対しましては、先般の答弁書を再読玩味せられたいとお答えするのが適当であるが、くりかえして申せば次の通りである。即ち、政府が国内塩業の全廃でなくして、その保持を根本方針としている以上、全面的外塩依存政策ではない事は明らかでありますし、国内塩業の復興のためには、その合理化近代化と、国民経済全般の復興とが要件である以上、国内塩業合理化への拍車でもあり且つ、国民経済全般の復興に必要でもある外塩輸入は、直接間接に国内塩業復興への契機であることは明かであると思われるのであります。

第二問、第三問、第四問答弁

 第二問乃至第四問に対し、総括的にお答えします。
 わが国に豊富な資源である海水の活用が思うように参らない現状はまことに遺憾である点は、同感であります。併し、その第一次的原因は熱源問題であり、海水資源と石炭電力資源との不均衡であると考えます。
 その石炭電力の使用効率に関連して、旧式製塩方式の問題が登場します。
 さて旧式製塩設備を出来るだけ早く近代的設備に切り換えることは洵に肝要でありますが、それが早急に参らぬ根本原因はやはり熱源問題であります。熱源の充分な見透しがつかぬ部門へは、新設改良のための資金資材の配分も充分に参らない。かかる全国民経済的な理由が新設改良抑制の理由であります。従つてその対策及び解除時期もかかる全国民経済的な、復興テムポとの関連において決定さるべきであります。
 目下、経済復興長期計画の一部門として資金、資材計画雇傭計画を鋭意研究中でありまして、塩業だけを特別にきり離して論議することは不可能であります。

第五問、第十三問答弁

 第五問と第十三問とは関連ある問題でありますので一括お答えします。
 塩業の民主化、近代化は、塩業政策の基本的要素でありますから政府においても塩業経営形態の近代化従つて労働関係の近代化をも考究中であり、塩業組合法もこの線にそつて、改正案を練つて居り、目下関係方面と折衝中であります。
 専売法、従いまして専売行政の運営につきましても今回の専売公社創立を機会に鋭意改善につとめ、塩業の民主化近代化を促進したいと考えています。
 なおこの機会に強調したいことは、塩業の自主自立性確得でありまして、従来ややもすれば国家保護に依存する如き傾向があつたのは改めらるべきであると考えます。

第六問、第七問、第八問答弁

 第六問乃至第八問に対し一括お答えします。
 本年度の精炭配当計画の変更及び来年度生産計画の対設備能力七割稼働の根本的原因は専ら石炭電力事情、ここにその全国民経済的な重点配当方針に存するのでありまして、塩業が特恵的地位にあるものでないことは申すまでもありません。
 本年度の生産はほぼ三〇万トンの生産計画通りに実行されておりますので、御質問の如く七〇万トン生産せられ四〇万トンがヤミに流れたというのは、事実に反すると思われます。代燃加算賠償費予算の追加が計上せられなかつたのは、国家財政全般の事情と専売局特別会計の独立採算の原則とに因るものであります。
 今回の収納停止は、客観状勢上全く已むを得ざる一時的措置でありまして、このためにのみ閉鎖休止、大量馘首等が行われた事実はないように聞いております。若し、最近、閉鎖休止せられる塩業がありますならばそれは経済界の一般的動向によるものと考えられます。
 なお、今後は収納停止の如き不測の事態の発生しないよう極力努力する所存であります。
 来年度生産が完全稼働に至らない原因は前述の通りでありますが、この結果操業度の低下する企業に就いて設備維持に必要な手段を如何に講ずべきかは困難な問題であるが研究中であります。

第九問答弁

 ソーダ工業用塩価格の問題は、物価政策における安定帯の考え方及び貿易資金の輸入レート等我国経済復興方式そのものに深く根ざしているものでありまして、この方式が大産業資本擁護政策であるかどうかは、イデオロギーの問題であり、立場の相異であるとお答えする外ありません。

第十問、第十一問答弁

 第十問、第十一問に対しましては一括お答えします。
 塩業整備につきましては、塩業整備委員会において検討しておりましたが、十一月下旬、一応の結論に到達致しましたので目下関係方面の諒解を得べく折衝中であります。
 整備の時期、整備対象、等の発表は出来るだけ早く之を行い、業界に安定感を与えたいと考えております。整理交付金の金額、解雇手当等につきましては研究中でありますが、未だ発表し得る段階に達しておりません。失業による職業斡旋、生活保障は、塩業に対して特恵的に考慮さるべきものではありませんので、全般の失業対策に織り込んで行きたいと考えます。
 二十八年度九〇万トン計画は、前回答弁の通り中間的数字でありまして最後的数字は未だ決定していません。
 さて将来かりに九〇万トン要するとしても現在の塩業設備をそのまま、ここ四、五年間温存し続けることは、現下の石炭電力事情及び資材資金事情よりして不可能であります。今回、製塩効率の悪いものを一応整備して云はば精鋭主義による再発足の土台をを固める策に出た所以もここにあります。これが、外塩依存主義と云うべきかどうかは良識の判断に俟つものであります。

第十二問答弁

 専売公社は、差し当つて現在の専売機構を承継しますので、製造部門を直ちに包含する意図は目下の処ありません。