質問主意書

第3回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参甲第一六四号
  昭和二十三年十一月十三日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員北條秀一君提出在外同胞引揚促進に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員北條秀一君提出在外同胞引揚促進に関する質問に対する答弁書

一、現在各港に帰還輸送に配船されている船舶と輸送力は
(イ)ナホトカ向舞鶴港の配船隻数は十三隻、九二・三三六総トン、定員四五・一〇〇人
(ロ)真岡向函館港の配船隻数は十一隻、二一・五一〇総トン、定員一七・四〇〇人
(ハ)朝鮮、中国、沖縄向佐世保港の配船隻数は五隻、九・四七三総トン、定員六・四〇〇人外に興安丸七・〇七九総トン、定員三・〇〇〇人が下関において待機中であるから合計三〇隻、一三〇・三九八総トン、定員七一・九〇〇人、月間一六〇・〇〇〇人の輸送が常に可能である。
 なお、砕氷船としての設備を有している保有船舶は六隻、一四・三七二総トンでその中四隻は帰還輸送船として既に配船してある、その他二隻は鉄道連絡及び定期船として使用中であるが必要あるときは何時でも出航しうる用意をととのえている。

二、引揚船の就航日数が少ないのは米ソ協定によるソ連側の予定帰還者が協定通り実施されていないからであつて連合軍側において促進につき努力中である。
 帰還輸送船の転用については、これらの船舶は連合軍において特に帰還輸送協定実施の為に指定された船舶であり何時でもソ連側の要求に応ずる為に準備されたものであるから外に転用することは現在の所出来ない。しかし冬期において一応帰還輸送が中止された場合は重要物資の輸送に配船する予定である。

三、引揚船は航海途中における天候不良その他の原因により予定航海日数を超過する場合があるのでこれ等の事情を考慮し予備食糧を積載している。
 現在実施中の積込状況は引揚船収容能力の約二倍に相当する所要量を積込んでいる。
 従つて順調に航海を終れば一航海分の予備食糧が残るのである。
 但し副食品中生鮮食糧品は航海中変敗する虞があるので情況により乾野菜缶詰等の加工品を積込んでいる。

四、舞鶴港貯炭場の帰還輸送船焚料炭は十一月一日現在で一・六〇〇トン、なお上旬中に一・四〇〇トン中旬に二・〇〇〇トンの着炭予定であり合計五・〇〇〇トン貯炭の見込。

五、ナホトカ港の乗船能力は各船共予め二・〇〇〇人と協定されてあるので各船より乗船に関する人員の打電は原則としては行わないことになつている。
 大郁丸の打電については船長が便宜上行つたものと思われる。

六、従来地方引揚援護局においては引揚者の健康状態を考慮し上陸後一、二食は一般的に軟食を給食していたが現在はその必要を認めないで一部の患者を除き普通食の給食を実施している。

七、今日までに各船が受托した郵便物は次のとおりである。
年 次郵袋数重    量郵 便 物 数備       考
一九四六六、九四キログラム四二、四一七  十二月のみ
一九四七五六二、〇九一、一              四一九、四八一
一九四八二一四六四                一五五、六八八  五月より九月末日まで
 計七八二、五六二、〇四          六一七、五八六

 なお引例された七月十六日到着の大郁丸に搭載郵便物の重量は一八キログラムであるから念のため申し添える。

八、引揚者の帰郷途中における歓迎歓待は国民総意の発露であつて政府も絶えず之が強化充実に努力しきたり、本年五月の引揚再開以降は各都道府県の主導する各種民間援護団体の奉仕を主体とし、湯茶、味噌汁の接待及び医療等応急の援護に当つて来たのであるが、之等の援護団体を始め引揚者の出迎人多きため各駅頭は頓に混雑を呈した上に、一部の団体は集団をなして駅ホームで赤旗を振つて歓迎し、また駅構内においてビラ、パンフレトを配布し、あるいは演説を行うなどの行為をなした。これらの事実は徒らに駅内を混雑させ、案内、接待、施療にすら困難を生じさせたのみか、一部団体の右行為は鉄道営業法違反の行為であるのみならず列車の運行にも支障の虞れがあつたので運輸当局引揚援護庁は関係方面と協議の結果、主導の任に当つている各都道府県及び現地鉄道当局の協議の下に各駅の実情に即して援護に適正なる人員を定め、駅内の混乱を避けることとしたのである。右は単に一部の者を優先視したり、あるいは取締的態度に出たものでないことは勿論で全く事故を未然に防止して援護の完全を期する意図に出たものであつて引揚列車に対する国民的熱意が昂揚し整然たる秩序の下に歓迎歓待が行われることが期待せられる次第である。
 幸い民間関係団体が協同して此の主旨の下に十二月十七日より一週間「引揚援護愛の運動」を全国的に提唱実施するのであるが駅頭の引揚列車の歓迎に対する国民の熱意も此の機会に一増昂揚されることを希望する次第である。