質問主意書

第2回国会(常会)

答弁書


答弁書第百二十九号

内閣参甲第一三三号
  昭和二十三年六月二十二日

内閣総理大臣 芦田 均      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員田中利勝君提出化学肥料及び農薬の需給と価格に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員田中利勝君提出化学肥料及び農薬の需給と価格に関する質問に対する答弁書

一、本年度硫安生産計画遂行に必要な硫化鉱一三〇万トン生産の目標計画策定に当つては、商工省その他関係方面と十分連絡し、この計画遂行には幾多の困難が伴うと予想せられるが、官民共に万全の措置を講じて目標達成に努力することとなつたのである。
 昨年十一月に「昭和二十三年一月乃至七月の期間に於える肥料割当計画」を決定(二二、一一、二一閣議報告)以来特に硫化鉱の増産が痛感せられ、「昭和二十三年度重要物資需給に関する暫定計画に関する件」(二三、二、一〇閣議報告)において硫安九〇万トン、硫化鉱一三〇万トンの本年度生産計画が樹立せられ、更に本年三月二十六日「春肥供給確保緊急対策要領」(閣議決定)において四―七月間の生産計画を四二一、〇〇〇トンと定め、この目標達成に努力することとした次第である。

二、硫化鉱の現行価格に付ては現在鉱山によつて、鉱名の品位生産条件等による原価の開きが相当あるので、個別価格と群別価格を併用する三本建価格へ第一種柵原鉱山、第二種松尾鉱山、第三種その他鉱山を採用している。これは硫化鉱増産の確保と低物価政策との調和を計る為と、山を得る措置と考へる。
 現行価格が不当に低位に決定されたということはない。
 柵原鉱山に付て二十二年度第三四半期の実績を見ても指摘の如き大きな赤字は出ていない。ただ最近の情勢においては物価改訂のずれ、一般物価の昂騰等によつて一部採算性を来していることは事実である。
 今回改訂しようとする価格においては価格の建方は現行価格と大差はないが、過去の実績原価を基礎とし、これに新価格体系の値上り倍率をこれに織込み、更に個別価格を採用せんとする柵原及松尾については、生産鼓舞する為特に相当程度の利潤を織込む等充分生産対策に即応した価格を決定するつもりである。

三、硫化鉱鉱山に対する資金、資材の割当に当つては、硫化鉱が肥料生産に欠くべからざる原料である点に鑑み肥料工業と同順位の重要性のあるものとして極力所要資金、資材の割当を行うよう考慮している。

四、硫化鉱の輸送上の制約によつて、硫化鉱の生産計画に支障が来すことのないよう、石炭に準じて極力輸送力確保に努力している。
 本年度の重要物資の輸送計画においては、硫化鉱一三〇万トンの輸送を実施しうるよう計画しているが、東北地方の輸送力不足の実状に鑑み特に硫化鉱の優先輸送の対策を講じつつあり、目下の所輸送難のため生産が低下することはないと考えている。

五、亜砒酸の二十三年度生産計画は二一九〇トンであり、現在一ケ月の生産量は約一一〇トンで計画に及ばないが、今次の物価改訂が適正な価格に落着けば予定の生産は可能と考えている。なお不足分に付ては亜砒酸並びに原鉱石の輸入を考慮し、一方国内資源の開発増産を計画している。一面亜砒酸の主要な需要先である農薬については、砒酸鉛がより有効なDDTに置換えられる傾向があり、既に一部これが輸入を見ている次第であるから、亜砒酸の需給関係は漸次好転するものと思われる。

六、亜砒酸の輸入については昨年十一月GHQに懇請したが米国の国内事情により拒否された。しかし前記の農剤としてDDTの輸入申請は受理され、その半量は既に輸入された。なおこれに付て不足を生ずる場合は国内生産のDDT剤でまかなう積りである。