質問主意書

第2回国会(常会)

答弁書


答弁書第百二十三号

内閣参甲第一三〇号
  昭和二十三年六月十一日

内閣総理大臣 芦田 均      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員岡村文四郎君提出農家経済に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員岡村文四郎君提出農家経済に関する質問に対する答弁書

(一)鋏状価格差対策に関する研究経過の概要

(1)鋏状価格差対策に関する研究は農林行政上頗る重要な問題であるが、現在、農家経済乃至農村物価の動向として夫々関係部局において検討しており、鋏状価格差対策そのものの研究は統一的には行われていない。近く行政機構の改革に伴つて、これらの研究を総括する部局が設けられることになつている。
(2)パリテイー計算は、一応理論的には鋏状価格差を解消する方式ではあるが、これについて最近検討したところによると次の如くである。
 パリテイー計算の採用によつても米価は固定せられているに対し、パリテイー計算の基礎となつた各物資の価格及びウエートが変化することから生ずる時間的ヅレが存在し、鋏状価格差は進行する。例へば二二年産米のパリテイー指数六二・五五は五月一日現在で七〇・四二に上昇している。
闇価格の面の鋏状価格差についても、最近食糧事情好転し農産物の闇価格のインフレによる騰勢は次第に鈍化しつつあり、これに対して、衣料品その他工業生産物即ち農家購入品の価格は供給量が増加せず、これに対する需要は食糧事情の緩和しただけ増加し、その闇価格は農産物のそれに比し、相対的に騰貴率が大となつている。日銀調査の闇価格指数によれば終戦後と二二年十一月及び二三年三月との比較は次の通りである。
年  月  日主  食  品繊  維  品日  用  品
 二二、一一二二七・一四七五・四三一六・四
 二三、 三三一三・九五六六・九三九九・二
二〇年九月―二一年八月の平均指数を一〇〇とする
全国農業会調査部の農村物価指数によつても、農林生産物、農業用資材、家計用品との三つの夫々の綜合指数によれば、家計用品最も騰貴率高く、農林生産物それに次ぎ農業用資材は農林生産物を下廻つているが、これは綜合指数であつて、農業生産物中の米麦等主要食糧と農業用資材中の肥料、農機具をとれば、その方が遥かに米麦等の価格騰貴を上廻つている。

(二)最近における鋏状価格差是正の具体策

(1)二二年産米についてパリテイ計算を採用したが、これはその時期における農家購入品の価格との均衡を考慮したもので鋏状価格差の是正を意図したものである。
(2)供出に関連して右のパリテイー方式による米価を実施するにあたつて必要なことはパリテイ計算の裏づけを物資によつて行うことで、それは見返り品たる農機具、肥料の見返り物資の配給の円滑化であり、これについては鋭意努力し、例えば農機具中動力脱穀機(六五〇七七台)、籾摺機(四〇八一九台)、粋土器(六九一二八台)等の二三年上半期における需要申請に対しては配給見込量は夫々六九八四七台、四三七五一台、一二六九七〇台と上廻つており、肥料についても二三年一月から五月迄の配給計画窒素肥料七二二千トン、燐酸肥料三四二千キログラムに対し五月二十日現在夫々七二〇千トン、三六〇キログラムを肥料公団より出荷している。
(3)報償物資はパリテイ公価を実効価格たらしめる有力な一方法であるが、政府はその完配に努めその重要なものの農家への配分状況は五月二十日現在で次の通りである。
計画量に対する遂行率
作 業 衣 類約    九九%
ゴム製靴類〃   一〇〇%
自 転 車〃   一〇〇%
日 用 品 類〃 八〇―九〇%
煙     草〃    九二%
(4)肥料については価格騰貴を抑制するため、補給金を支出している。
(5)先般来実施中の農業手形制度もこの対策の一つである。