質問主意書

第2回国会(常会)

答弁書


答弁書第五十六号

内閣参甲第五八号
  昭和二十三年四月二十三日

内閣総理大臣 芦田 均      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員岡村文四郎君提出農地利用等に関する質問に対し別紙答弁書を送付する。



   参議院議員岡村文四郎君提出農地利用等に関する質問に対する答弁書

(一) 裏作可能地土地改良等に関する開発事業計画の概要

一、一毛作しかなし得ない原因には次の様な諸点が考えられる
1 耕地が湿田であること
2 用水不足の乾田であること
3 気候的に裏作不適であること(長期積雪地域、高冷地)
4 その他肥料や労力不足で休閑地となつているもの、災害復旧、土地改良事業等の工事中で裏作を行えないもの
 昭和十九年の調査によると
全国水田面積二、八七五、〇〇〇町
内訳一毛作田一、四〇三、〇〇〇町
二毛作田一、四七二、〇〇〇町
であつてこの一毛作田を原因別に別けると
1 排水不足六三一、〇〇〇町
2 用水不足一四、〇〇〇町
3 気候不適四六三、〇〇〇町
4 その他二九五、〇〇〇町
である。

二、一毛作田を二毛作田とする施策
 前述の原因の内土地改良事業によつて二毛作可能となるもの
1 湿田の場合
 明渠排水、暗渠排水、機械排水、客土等の土地改良に依る乾田化
2 用水不足の場合
 即ち排水不良地、用水不良地の約七十万町歩の大部分は土地改良事業施行により二毛作可能地となる。
 農林省においては昭和二十三年度において年間四十八億円の土地改良及農業水利事業の予算を要求中であるが右の内三割前後が従来の表作の増産に寄与するのみならず一毛作田を二毛作田にするために役立つ経費である。

(二) 関東地方において適品種の改良は如何なるものを実施しつつあるや

 優良増産品種を育成しこれが普及により生産力の増進を図ると共に裏作用適品種の育成を図り耕地の利用増進を推進するために農林省農事試験場及び園芸試験場においては人工交配その他基礎的研究を行うと共に左記の如く新品種の育成上適地と認められる場所に農林省農事改良実験所を設けて育種の現地試験を行いその結果育成された優良品種についてはこれを都県農事試験場に配付し広く県内における地方的適否試験を行いその結果により優良なものについては農林何号と命名して奨励品種に決定している、かくして決定された奨励品種の種子については計画的に原種圃、採種圃を経て、農家に配付することにより優良品種の普及に遺憾のないよう措置している。
 関東地方における適品種育種の現地試験地
(イ)水稲 農林省熊谷農事改良実験所(埼玉県熊谷市久保島)
(ロ)陸稲 農林省石岡農事改良実験所(茨城県新治郡石岡)
(ハ)麦 農林省前橋農事改良実験所(群馬県前橋市)
(ニ)甘藷 農林省千葉農事改良実験所(千葉県千葉市)
(ホ)大豆 農林省石岡農事改良実験所(茨城県新治郡石岡)
(ヘ)棉花 農林省龍王農事改良実験所(山梨県北巨摩郡龍王)
(ト)菜種 農林省安積農事改良実験所(福島県安積郡富田村)
(チ)蔬菜 農林省立川農事改良実験所(東京都立川市富士見町)

(三) 単作農地にして裏作可能地に対する綜合的開発又は指導計画の有無

単作地の農業土木的開発促進計画については(一)の項において既に説明したところであるが、更にかかる事業の結果得られたる裏作可能地の綜合的利用については技術的にみて適品種の育成及びその普及栽培法の確立普及等のことが最も重要となるので適品種については(二)により裏作に適する麦類新品種-特に早熟品種-の育成を図りつつあるは勿論ひとり麦類の作付のみにとらわれることなく紫雲英の導入更に又春馬鈴薯の作付等その土地の農業生産条件をみて綜合的利用を考えこれに要する種苗等の斡旋について積極的に努力しつつあり。
尚栽培法の確立及び普及等については国及び都県農事試験場は勿論農業会(協同組合)等と協力して或は現地伝習会の開催、巡廻指導その他の方法により農民に普及しつつある次第である
尚これら適品種作物栽培法の確立普及のみならず家畜の導入による有畜農業の普及等についても極力推進中である。
以上の如く農地の積極的綜合的利用を推進するため、目下農林省、都道府県及び地方における生産経営両面における農畜一体の研究指導機構を確立するため連合軍最高司令部の積極的助言指導の下に新体制を研究立案中である。