質問主意書

第2回国会(常会)

答弁書


答弁書第十三号

内閣参甲第一二号
  昭和二十三年二月三日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員北條秀一君提出官庁労働組合に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員北條秀一君提出官庁労働組合に関する質問に対する答弁書

 第一、官庁労働組合の組合事務に専従する者に対しその給与を国費支弁とすることが労働組合を健全に発達させる所以でないことについては、御趣旨はご尤もと思う。本来から申せば、労働組合運動の大道として組合事務に専従する者は労働組合の負担においてこれを雇用すべきものであつて、政府においても夙にこのような基本的観念を以て事に臨んでいる次第であるが、現内閣成立前から官庁労働組合の労働協約等において官庁職員たる組合員をそのままいわゆる組合事務専従者として認めておるものが甚だ多い実情にあるために、これを一挙に全廃することは実際上困難且不適当な状況にあるので、政府としては、労働組合側の自覚を促すことに努めると共に過渡的暫定措置として例外的にいわゆる組合事務専従者として若干名を認めるが而もその員数を漸減する方針を採つている次第である。従つて労働協約の更新又は改訂の如き場合に当つては、政府側よりその員数の縮減方の申入を行つておるわけである。
 右に申し述べた通り、このようないわゆる専従者を認めることになつたのは、何分にも現内閣成立前のことに属し、その間の事情を詳かにしないが、今日までに承知しておるところでは、労働組合員の労働能率増進のためということで労働組合側の要求があつたからではないかと思われる。現に昭和二十一年八月三十日農林大臣と農林省職員労働組合委員長との間に締結された労働協約によると、その第九項には「農林大臣は組合員の労働能率増進の為組合事務に専ら従事する組合員若干名を限度として認める」旨を規定しており、この頃からいわゆる専従者を認めることになつたものと思われる。なお、右の若干名というのは別途覚書により組合員二百名に対し一名の割合と定めているが、例えば、昭和二十二年二月二十一日に締結された国鉄労働協約の方では、組合員五百名につき一名とし、そのほかに五百名を別に認めることとしているような次第で、いわゆる専従者の員数は各省労働組合によつてその割合が不同である。

 第二、政府は過般来国費を支給している職員でいわゆる組合事務専従者と考えられるものの調査をいたしている。そして、この調査が全国的の広般なものである関係上一部なお調査未完了のものもあるが今日までに判明しておるところを申し上げると、昭和二十二年十一月一日現在におけるこれらの員数は、総理庁部内及び各省部内を併せ大体五千六百名見当である。その内訳を各省部内別に見ると、総理庁九、外務省三、(進駐軍要員労働組合の関係を除く。)文部省四、(日本教職員組合関係を除く。)厚生省二十三、運輸省千六百五十五、逓信省三千百五十四、農林省百八、大蔵省六百十七、商工省二十五、内務省十五、となつている。尤もこの数字は前にも申し述べた通り全体として調査完了のものではないので、この点御諒承を願いたい。なお、今後努めて正確を期したい。

 第三、先に申し述べたいわゆる専従者と考えられている者の員数を前提として、これに対する給料としての国費支弁額は、今日までに判明しておるところでは、昭和二十二年十一月の一箇月分について計上すると、大体千百二十六万円見当になる。

 第四、憲法第八十九条は、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」と規定している。然るに労働組合は労働組合法第二条に明かな如く労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主なる目的として組織する団体であつて、国費支弁を受けている職員のかかる団体の事務従事を認めているに過ぎないのであつて、この関係は憲法第八十九条の規定とは全然関係のないものと考えている。然し乍ら、政府としては、官庁労働組合の御用組合化を防止しその健全なる発展を期する観点から、先にも申し述べた通り、官庁労働組合のいわゆる専従者に対する給与を国費支弁とすることを極力止めたいという方針で臨んでおることを重ねて申し上げる。