質問主意書

第2回国会(常会)

質問主意書


質問第百五号

軍事思想の排除に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十三年五月四日

市來 乙彦      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   軍事思想の排除に関する質問主意書

 今や民主主義の昂揚を必要とするに拘わらず、動もすれば今猶封建思想、全体主義等の残滓ありと伝唱せらるることあるは頗る注目すべき事体である、この時に当り軍事思想の思い出となる原因を為すものは、一切これを撤廃すべきは勿論の義と信ずるのである。

一、彼の靖国神社境内に屹然として兀立し、世間を睥睨せるの観ある故大村兵部大輔の銅像は正にこれに該当するのである、同地の附近を通行し仰でこれを見る場合、民主主義に徹する者と雖も、自然軍事に関する思想の思い出を、喚起するを免れないのである、その思いでの向う所如何を問わず、民主主義思想に煩累を及ぼすものである、聞く所に依れば、彼の銅像は技術の上乗なるがためこれを存置するのであると、果して然らばこれ全く事の大小本末を転倒せるの甚だしきものである、彼れ大村兵部大輔は明治軍閥の巨頭にして、好戦の性格を有せし者である、而かも昭和の軍閥は、総て彼の後継者である、既にその銅像が、民主主義の昂揚を阻害するものであるに拘わらず、単に技術の上乗なるの故を以てこれを存置するは甚だしき失態である、宜しく速かにこれを撤去すべきものであると信ずるのであります。

二、通俗の習慣による端午の節の、飾り物たる武者人形は、これ亦反民主主義の性格を有するものである、既に郵便切手の軍人像を印刷せるものは、これを廃棄することとなつたのである、然るにこれ等武者人形の製造、販売、陳列を禁止せず、政府当局者を始め警察官が、冷然としてこれを看過せるは、民主主義の昂揚に熱心ならざる一例を示すものと言うべきである、思うに来る五月の節日を限りとし、将来に向て一切これを禁止し、その旨を宣言すべきものであると信ずるのであります。

  右二項に付政府の意向を承知致したく、何卒文書をもつて御答弁あらんことを希望するのであります。