質問主意書

第2回国会(常会)

質問主意書


質問第百四号

農機具生産行政事務機構強化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十三年四月二十八日

宿谷 榮一      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   農機具生産行政事務機構強化に関する質問主意書

 食糧の生産には農機具、肥料、農薬等は密接不可分の重要性を有することは今更論ずる迄もないが、此の農機具生産行政の現状はどうであろうか。
 之を見るに二十三年度における農機具に見ても主要資材量にして凡そ普通鋼材壱万八千トン、銑鉄九千トン、木材百万石であつて、之を農機具の製品価額にして凡そ六拾億円余に達し、又商工省機械局産業機械課が直接製造割当指示を行う、全国工場数だけでも四五四工場に及びその他に地方商工局において直接生産行政を担当している工場として地方農具製造工場五四七四、野鍛冶工場二一七一〇に達するが之等に対しての総ての生産行政の中枢機関としては上述の産業機械課が行つているが食糧と重大な関係を有する全国農機具の生産行政を行う同課における農機具行政担当事務陣容としては担当官僅に技官一名、事務官二名、物資需給調整官一名の貧弱なる陣容に過ぎず、而も此の少数の人員を以て全体期別の生産計画及工場別生産割当、更に資材調整事務等の全部の他主要資材は勿論、副資材一切の割当証明書の発券事務に至る迄行つている。之等の資材の発券だけでも小は何トンから大は何十トンに至る迄各種多様にして複雑至極であり、その仕事の分量たるや、到底三人や五人で扱い得るものではない。従つてその人員の割合に仕事の分量が過大なるため、製造割当資材割当事務、資材発券等の生産行政事務の総てが渋滞勝で適切迅速に行われていない現状である。
 故に現在の機構では生産割当資材割当資材発券事務に忙殺されるのみで製造工場に対し積極的に生産上必要なる指導、助力、援助が与えられず、又企業の実態等を把握する余裕を持たない。従つて現に農機具製造工場においては生産資金の極度の手づまりで割当資材の購入資金にも困難し、生産推進に重大な支障を来しつつあるが如きは畢竟生産責任官庁において生産現場把握の不充分なるため適切な措置がとられなかつた事に大きな原因が求められる。
 上述の現状を改善する所なく、このままに推移するならば食糧生産に重大なる悪影響を及ぼすことは火をみるよりも明かであろう。多数の人員を以てする事が最善だというのではない。量よりも資が問題であることは勿論であるが、しかし斯る点を云々すべく余りにもかけはなれた現状である。
 食糧生産の基底である生産資材たる重要な農機具生産を一課内の一部において少数の人員を以て担当していることは一升桝に一斗の水を盛るが如きものである。故に農機具生産の重要性に鑑み、この際緊急に農機具部門を独立なさしめ、一課を新設し迅速果敢なる生産行政を強力なものにして食糧生産に支障なからしむるべきではあるまいか。
 一課を新設することは生産行政機能を充分に発揮し又関聯官庁との生産行政上における連絡も円滑に行われ、最近農村からやかましく言われている不良農具の優良化指導或いは農機具工場に対しての助力援助等も行われるからこの際緊急に一課を新設して機構を拡充整備することが絶対的に必要であると信ずるがこれに対して政府は如何に考えられるか行政整理の必要の喧伝されている今日課の新設唱導することは時代錯誤的なものを感じさせるかもしれない。しかし行政整理は飽迄も合理的である事が重点であり、真に必要なる機構を拡充し、生産増強に資することは止むを得ざる事、否、積極的に推進すべきことであると信ずる。
 若し政府において独立の一課新設が必要なしと言うなれば如何なる方策を有するや以上に対し速なる答弁を要求するものである。