質問主意書

第2回国会(常会)

質問主意書


質問第八十五号

行政整理に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十三年四月二十日

参議院議員 市來 乙彦      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   行政整理に関する質問主意書

 過日私は均衡財政の確立に関する質問主意書を提出致しました。
 私の解釈に依れば、均衡財政とは約言すれば財政の関する限り諸般の情勢が調和して釣り合いを保つ体制を謂うのである。歳計予算の収支の釣り合いを得ることは均衡財政の僅かな一部分であつてその全部ではない。而して均衡財政の確立は「インフレーシヨン」の克服とその揆を一にするのである、随つて仮令その何れの名義を以てするとしても、その手段としては国費を緊縮することがその基準であり中核である、これが為めには行政整理を徹底的に断行することが、避け得べからざる絶対要件である。
 回顧すれば、外国より提供する二億五千万円の金を以て金本位兌換券制を新設し、財政経済の体制を確立した記念すべき先例がある。今回外資導入を得て「インフレーシヨン」を克服し均衡財政を確立するの基礎を築くことを得るならば、この先例をも凌駕する誠に千歳一遇の最も望ましき大事業である。若しこの機会を失わば「インフレーシヨン」の克服、均衡財政の確立は決して容易に実現し難いものと思考せらるるのである。
 行政整理を徹底的に断行する場合、最も困難なるは失業対策である、政府の構想に係る諸般の対策を以てしても、国庫窮乏の今日、完全なる対策を行わんとせば、結局資金の不足を告ぐるは到底免れ難い所であろう。
 右の実情に鑑み、導入外資の内一億弗を失業対策に利用し政府資金の不足を補充するの途を講ずることは、政府の誠意ある努力と適正なる施策とに依れば必ずしも不可能ではなかろうと信ずるのである、何となれば経済復興、経済自立のためには「インフレーシヨン」を克服し均衡財政を確立することがその基礎であり、この克服確立のためには、行政整理による国費の緊縮が最大必要の条件であり、しかして失業対策が行政整理を徹底的に断行し得べき最大必要の条件であるからである。
 失業対策に要する公共事業中、開墾、道路開設その他事業の成果を後昆に垂るるものであつて、その利用に依り当面の生産を助成し、成るべく多数の労務者を必要とする事業を選定し、完全にして遺算なき行政整理の成案並びに公共事業の計画案を具し、これを連合軍司令部に提出して、導入外資の使用とを併せてその賛成を求め本国に対する斡旋を懇請し、その認容を受くるを得たならば必ずその目的を達し得ることと思考す。又これに基いて外資導入の受入れ体制も出来るのである。
 尚これ等の計画と共に高物価を低物価に転換せしめ、物価の低落、「生産コスト」の低下により、物価の安定、食生活の安定、賃金の逓減等をも想定するの必要ありと思考するのである。
 右私の提唱に対し政府の意向を承知したいのであります。何卒文書を以て御答弁ある様希望致します。