質問主意書

第2回国会(常会)

質問主意書


質問第四十三号

米、麦、馬鈴薯、甘藷及び一般農作物の病虫害に依る損害に対する調査質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十三年三月二十六日

宿谷 榮一      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   米、麦、馬鈴薯、甘藷及び一般農作物の病虫害に依る損害に対する調査質問主意書

 国民生活の安定と経済の復興とは食糧問題の解決に依る他はないと考える。我が国の食糧事情はその不足分を海外より仰ぎつつある現状であることを考えるとき、食糧の増産ほど重大且つ緊急なことはないと思う、殊に不足食糧を海外より輸入することに依つて国民の食生活を賄うことを将来も継続するに於ては、経済的国力の恢復ということは到底望み難きものがある。故に食糧は完全なる自給自足の実現を期さなければならないと信ずる。従つて重要食糧の増産に就ては総ゆる施策を講じ之が実施に就ては一時一刻と雖も忽せに出来ないものがある。勿論之等増産に就ては肥料、農薬及び優秀なる農機具等の配給の増加に依らねばならないことは言を俟たぬ所であり、その他開拓、開墾等の手段に依らねばその目的を完遂し難きものがあるが、斯に増産確保上重大なことは農作物の毎年各地方に於て病虫害に依り生ずる減収の問題である。
 自然より我等に与えられたものは、一粒一菜と雖も完全収穫の途を計らねばならないのである。又病虫害に依り之等収穫を失うときは、之に要したる農家の一年間の労苦と生産資材をば消耗することとなり国家経済の見地よりして之程大なる損害はないと信ずるのである。之等の損害に対し完全なる防止を実施するときは全農作物の収量の増加は一割或は二割それ以上にも昇るのではないかと推測される。現に昭和二十一年度関東、北陸地方等に於ける馬鈴薯の病害に依る減産は最近に於ける顕著なる事実の一例であらう。
 全国農家をして重要食糧及び一般農作物に対し病虫害駆除予防の完璧を期せしむれば食糧問題は急速に好転し、政府の唱えている食糧一割増産は勿論それ以上の増産を容易に実現し得るものと信ずるのであるが、近時政府及び一般農家は之に対して極めて消極的であることは誠に遺憾に堪えないものがある。
 それは
(一) 政府の病虫害防除に対する指導、奨励、助成等の措置が充分に講じられていなかつたこと。
(二) 農業薬剤及び農用噴霧機の普及不充分であること。
(三) 病虫害防除に依る増収の経験なき地方に於て認識の不充分なること。
(四) 農作物の価格の低廉なるに比し農業労賃の高騰のため労力を惜しんで実施せられざること。
等がその原因であらう。
 政府に於ては之等に対し、積極的強力なる方策を速に樹立し、防除の完璧を期することに依り、増産、増収の実を挙げねばならぬと信ずるが、之に対して如何なる方策を実施せんとしつつあるか、その方策を知りたい。
 尚重要食糧を始め一般農作物の病虫害に依り毎年蒙る損害状況即ち最近数年間に於ける全国都道府県別損害の詳細なる調査統計資料を承知したいから併せて調査表を要求したい。