質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第百二十二号)昭和二十二年十一月二十五日配付

内閣参甲第一三五号
  昭和二十二年十一月二十一日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員北條秀一君提出入場税等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員北條秀一君提出入場税に関する質問に対する答弁書

一 入場税法第五条に規定する慈善事業の範囲は、大体窮民、孤児その他窮乏に因り又は不慮の災厄に因り自活できない者を救済することを目的とする事業とし、水難救済等自活できるかできないかを問わず一般的に与えることを目的とする事業は含まないこととするように定めているが、慈善事業の範囲については問疑される向もあるので範囲を制定するよう研究中である。「その他命令を以て定むる目的に充つる場合」については、現在のところ政令でその目的を定めないこととしているからこの適用を受けるものはないこととなる。

二 前号の如く慈善事業は自活し得ない者を救済することを目的とする事業であるから、この自活し得るかどうかの認定に相当困難があることと思われるが、入場税法施行規則第五条に規定する如く入場税の免除を受けようとするときは、第一種又は第二種の場所の所轄税務署に申請し承認を受けることとなつているので、慈善事業であるかどうかを判定する責任者は所轄税務署長である。

三 昭和二十一年度の免税興行による免除税額は、一一八、七二二千円余である。
 免税興行申請団体ごとの免税興行による免除税額は、各財務局から報告を徴していないので今直に提出することができない。

四 都市と農漁山村との間に入場税の税率に差等を設けることは次の理由で今直ちにはできない。
(一) 都市と農漁山村とを反目せしめるおそれがあるとともに国民全体に税負担の公平を期する原則に反すること。
(二) 都市と農漁山村との区分は技術的に困難であること。
(三) 都市と農漁山村とにおいては同一の催物であつても入場料金に差等があることと思われるので自然入場税額にも差等がついていること。
(四) 都鄙間に収入の点において著しい差があつて税率を区分するとせば、農漁山村居住者が都市において催物を観覧する場合は農漁山村の税率により、その反対の場合は都市の税率によることとなり、居住証明書等により区分する方法も考えられるが、短時間に相当枚数を発売する興行者を煩瑣にするとともに税法違反を起す基ともなり、取締上相当困難を斎し且つ税率の単純化に反すること。

五 昭和二十一年度入場税課税高に対する統計は、都道府県別に各財務局から報告を徴しているので御指示の計表は今直ちに提出することができない。

六 海外引揚者が所有していた公債に対する未払利子を引揚者の更生資金として活用することは、現在の会計制度においては困難である。従つて引揚者の更生資金として若し必要があれば別の財源を求めて新に予算上の措置を講ずるのが適当である。

七 政府において保留している未払利子は、国債元利払資金として今後支払い得る状態になれば、何時でも支払いができるように留保せられ、他にこれを運用すべき筋合のものではない。
 従つてこの保留利子に対しては別段利子を生じないから、その中から一定金額を引揚者等の団体の社会事業資金として活用することは適当ではない。

八 右については唯今勧業銀行に調査せしめているから、数字判明次第御回答申し上げる。

九 一、各生命保険会社においては、在外契約の処理につき、在外同胞の不幸な境遇に鑑み、特に注意を払い次のようなことを行つている。
1 新聞紙上を利用して、引揚げ後直ちに会社に連絡ありたき旨を、再三広告し、今後も、これを続行する予定である。
2 保険料の払込猶予期間は、特に「引揚げ後六ケ月」まで猶予期間を延長し、全会社同一歩調で引揚者の保護を図つている。
3 多くの保険会社においては、特に「外地契約課」なる一課を設けてこれが処理に遺憾なきを期している。
二、外地契約という中には、終戦直前の契約で本店との連絡がなく従つて本店の帳簿に記載のないものと、もう少し前の契約で本店の帳簿に記載のあるものとの二種が考えられる。
 前者については、保険会社の資産には何等関係がないので、失効その他による会社の不当利得の問題は考えられないのであるが、これについても、前述のように、引揚者が保険契約のあつたことを推知するに足る最少限度の証拠を持参した場合には、会社は、その負担において、その契約を有効なものとして、契約者えのサービスを図つている。
 後者、即ち本店の帳簿に記載のある契約については、前述のような方法で、その整理を進めているのであつて、現在まで、外地契約の概ね半数は内地契約と同様に整理が終り、今後引揚げの進捗と相俟つて、着々と整理を進捗させ、契約者の保護に万全を期すべく努力している。
 然し、この種の契約においては、引揚者が引揚後会社に対してその住所を通知しない限り整理は進まないのであるから、窮極においても若干の未整理のものが残ることも考えられるが、この場合においても、保険会社に対する補償(再建整備法による補償)からその金額を控除する等の措置を講じて、保険会社に対して不当利得を与えないようにする所存である。
三、外地契約に関する調書については、至急、全生命保険会社の分をとりまとめて、回答いたしたい。

十(1) 在外企業者(外国に本社を有する法人、約八〇〇社)の国内保有財産については司令部の指令によつて、その保有並びに移動等については責任ある報告をなさねばならないのであるが、現在之等会社の内地所在店舗のうちには社員も殆ど四散し尚且つ会社の資金も絶無で、指令に対する完全な報告すら不可能な状態にあるものが多いので、これ等の報告等につき、余程手を尽さなければ、満足な結果を得られないので、この方面での中央会の活動に大いに期待致している。この為には、その実費を弁償する必要があるので、政府としては二十二年度追加予算を以て八百万円を要求している。
 尚明年度においても同様の主旨に基く予算を要求するつもりである。
(2) 本年四月二十六日の閣議決定によつて在外企業関係者及び一般引揚者の更生並びに在外企業の国内保有財産等の管理保全の為関係官庁の連絡機関として内閣に「更生事業対策協議会」を設け他方民間機構として「更生事業推進中央会」の設置を見たのであるが、爾来両者は表裏一体となつて右目的の為不断の努力をしているのである。
 その中最も緊急且つ緊要と思わるる在外企業者の国内企業転換並びに参加に対する指導斡旋についてはその主眼を資金及び資材に置いている。何れの企業者も先ず第一に資金、資材に行き悩んでいる状態であるので、両機関において企業内容を充分審議検討し、資金については復金或は市中金融機関よりの融資斡旋を図り、資材面においては関係官庁において極力援助している。
 因に現在審議中のもの三九件(融者斡旋方申込一一九件)決定せるもの五件であるが、両機関共設置後日尚浅い状態であるから今後大いに進捗するものと期待している。
(3) 中央会としては目下のところ自己手持資金がないので十分な活動を為すことは出来ないであるが、これが造成ついては考究中である。

十一 去る九月十三日夜大蔵本省庁舎の一部新館建物より火災が発生致しまして国庫に多くの損失を及ぼすに至りましたことは洵に遺憾とするところでありますが、その原因につきましては当時関係官庁の取調に協力し極力探求に努めたのでありましたが、遂にこれを突き止めることができずその原因は不明であるとの判定に帰着いたしたのであります。本火災による直接の損害額は一二、三三九、七八二円四〇銭と算定されたのでありましてその内訳を申しますと
円  銭
建    物四、二七九、八三五・四〇
備    品七、一〇一、六九六・〇〇
附 帯 設 備九五八、三五一・〇〇

となるのであります。右のように火災原因は不明ではありますが庁中取締の責任者たる大臣官房会計課長に対しましては訓告処分を行い将来を深く戒しめ置きました。

十二 財団法人協助会の業績別紙(一)の通にて、現状としては別紙(二)の計画に基き目下着々実施中であります。
 尚免税興業に依つて得た寄附金は生活困窮傷疾者の救済、過般の水害見舞等の直接救済費に充当し有効に使用されています。

別紙(一)
◎財団法人 協 助 会
 財団法人協助会とは広く傷痍者の相互扶助と援護とを行う民間団体であります
◎傷痍者の現状
 過去数次の戦争や職場工場其の他で両眼を失い、手足を亡くし或は重病に罹る等不幸不具癈疾の身となつた人々の数は無慮五十万に達し其の生活は日を逐うて窮迫し気の毒に堪えないのでありますが、ともすれば世の中から忘れられ勝ちで為に中には世を呪ひ人を怨み或は街頭に助を乞う者、自殺する者さえ生じて今や一大社会問題となつております
◎財団法人協助会の設立
 財団法人協助会は斯る苦境の中にあつて互に励まし合い、再起更生しようとする健気な全国傷痍者の切なる念願を結集し会員制度により之等の不幸な人々の相互扶助と援護を行うことを目的として昭和二十一年三月二十七日に厚生大臣の認可により設立せられたものであります
 本部は東京都新宿区市ヶ谷河田町十七番地に、支部は各都道府県庁所在地にあります
◎財団法人協助会の事業

一、本会の事業の主なるものは次の通りであります
1、傷痍者の相互扶助及び福利更生
2、親睦及び身心の健康恢復
3、身上相談
4、慰問慰藉
5、協助会館の経営

二、発会第一年度(昭和二十一年度)に於ける本会事業の概況
1、相互扶助事業
共同作業場、授産場新設九二ヶ所
職業補導所      新設一〇ヶ所
廉 売 所五一ヶ所
2、福利更生事業
イ、義肢製作修理所開設    四一ヶ所
義肢新調約一、〇〇〇件、同修理一三、五〇〇件(無償又は実費)
ロ、保温具の交付(無償又は実費)     一三、六七四名(三九〇、〇〇〇円)
ハ、その他必要物資の交付
3、身上相談
取扱件数        約二三、四〇〇件
4、慰問慰藉
イ、死歿会員の弔慰     一、一二〇件
ロ、震災、風水害罹災会員の見舞
ハ、国立病院、療養所患者の見舞及び慰問
5、生活困窮傷痍者の金品に依る救済
救済件数      約五、〇〇〇件(五〇〇、〇〇〇円)
6、協助会館宿泊部の開設
利用者数       四、五四二名
◎会 員
 身体障碍又は不具癈疾者即ち傷痍軍人及び戦災者、引揚者又は工場、事業場等で傷痍を受けられた方(但し内疾患を除く)で本会の目的に賛成する者を以て会員とします
 入会は申込書に必要な事項を記入して支部又は分会若は班に差出せばすぐ出来ます
◎本会の主要役員
会   長松  本   學
理 事 長數 藤 鐵 臣
理   事厚生省社会局保護課長高 田 正 巳
原 生 省 総 務 課 長安  田   嚴
厚生省社会局福利課長大  山   正
同胞援護会援護課長牧 野 修 二
同興財団理事増 田 作 太 郎
傷    痍    者清  水   勇
傷    痍    者布 村 道 之
監   事厚 生 省 会 計 課 長小 島 徳 雄
同胞援護会会計課長宮 澤 政 行
評 議 員全国各地区より一名推挙 計八名

別紙(二)
       昭和二十二年度事業計画            財団法人 協   助   会
                               昭和二十二年二月二十一日

第一 方   針

 凡ゆる困難を克服しつつ本会事業を拡充強化し会員の窮状打開を図り其の生活安定を期す
一、会員の自力更生を指導すると共に其の窮状を各方面に訴え之が打開に努力す
二、財政的基礎を確立すると共に支部事業を指導推進し之が拡充発展を図る
三、事業の重点を重度傷痍者及び生活困窮会員の救済、各種授産事業の拡充、会員相互扶助事業の指導援助に指向し物心両面に亘り会員の生活安定を期す

第二 実 施 要 領

一、普及宣伝事業
1、左の方法により会員生活の窮状を訴え其の認識を深めること
イ、国会、官庁、公共団体等に対しては身上調査の結果を具体的に示し請願、陳情等をなし極力傷痍者援護施策の強化促進に努む
ロ、会社、工場、事業場等に対しては傷痍者の雇傭につき其の協力支援を求む
ハ、一般民衆に対しては慈善興行其の他凡ゆる機会を利用し傷痍者の窮状に対する関心と同情を喚起し其の協力援助を獲るに努むること
2、傷痍者一般に対しては本会の趣旨事業の内容等を普及徹底し入会の勧奨に努む

二、相互扶助、福利更生事業
1、重度傷痍者特に失明者、両肢切断者等の職業補導
2、綜合授産場の設置及び之が援助
3、全国国立病院附設授産場運営の援助
4、各支部との物資の交流斡旋
5、相互扶助機関の設立
6、義肢製作の研究及び修理の指導並に資材の斡旋
7、保温具、医療品其の他傷痍者必需物資の斡旋
8、支部に於ける福利更正事業の指導援助

三、生活困窮者救済
 常に生活困窮者の実情を調査し左の方法により救済をなす
1、金銭又は生活必需物資の給与
2、生活保護法等による保護救済の斡旋

四、親睦の増進及び身心の陶冶に関する事業
 特異の環境と心情とに鑑み会員相互の親睦、道義心の昂揚、情操の滋養並に健康の増進を図る、之が為
1、会員の熱意を喚起し懇談会、家族会、運動会、講習会、研究会の開催又は会報による等具体的方策を定めて実施す
2、希望により講師又は職員を派遣す

五、身上相談に関する事業
1、恩給其の他の処遇、就職の斡旋等に関し関係当局と交渉斡旋をなす
2、右に関する研究資料を発行す
3、会報による指導をなす
4、相談事務に関し講習会を開催す
5、支部に於ては共の実情に応じ相談所の設置、巡回移動相談及び会報による相談等相談業務を逐次拡充す

六、慰問、慰藉
1、会員死歿せるときは会長より弔電と其に金弐拾円を贈る
2、天災地変其の他の災害による罹災会員に対し特に救恤慰藉をなす
3、随時傷痍者の慰問をなす

七、協助会館の経営
 協助会館の新設並に拡充に努力す

八、資金調達
 本年度事業を完遂し会員の生活安定を確保する為次の方法に依り資金調達充実に努む
イ、寄附金募集
ロ、慈善興行
ハ、収益事業の経営