質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第九十四号)昭和二十二年十月二十七日配付

内閣参甲第一〇三号
  昭和二十二年十月二十四日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員小川友三君提出鉄道並びにバス新設等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小川友三君提出鉄道並びにバス新設等に関する質問に対する答弁書

一、鉄道の敷設経営は国有国営主義を採つているのであつて、国の交通網を形成するような路線はできる限り国営で行くこととし、一地方の交通を目的とするものについては民営を認めることとしている。
 従つて民営の出願に対しては、既存交通機関との関係、申請者の信用程度、成業見込の有無、技術上の適否、資金関係等の審査及び経済調査の結果適当と考えられるものにつき、免、特許をなす方針である。
 次に自動車については、民営を原則としているが、国有鉄道との関連性において必要欠くことのできないもの及び民営事業としてはその経営困難なるものについては国営とする方針である。

二、客車の安全度は実験の結果によると、マ形客車では定員の二〇〇%、その他の客車では二五〇%までの乗車を許容することができる。一方列車の平均乗車効率は最高二〇〇%程度であるから全般的に見れば安全度内にあると思はれるのであるが、若しもこれを上廻るような場合には乗車を制限することにして居る。
 このためには列車別に乗車券を発売したり改札口で乗車人員を調整したりすることが適当な方法であつて、御説示の点は旅客の安全輸送の立場から、又客車の保存の点からみても等閑に附せられない問題であるから現在の少ない列車回数の条件下では中々困難なことではあるけれども鋭意努力をしている次第である。

三、本年七月下旬及び八月中旬の二回に亘る大洪水により被害を蒙つた地方鉄道、軌道は、東武鉄道、京成電鉄、西武鉄道、上毛電気、羽後鉄道、小坂鉄道、栗原鉄道、日立電鉄等二十社に及び、中でも東武鉄道の如きは殆んど全線に亘り橋梁の流失、土砂崩壊等随所に生じ、浸水程度を含む被害線路の延長約四二一粁で、その被害最も著るしく、これに要する復旧費は約三千八百万円に達するものと思われる。
 因つて取りあえず当省としては、一方において復旧資材たるセメント、木材、枕木、道床砂利、鋼材を始め鉄鋼第二次製品、カーバイト及び銅の割当を行い、他面復旧工事費資金の融資方につき斡旋に努めたいと考えているが、復旧費は直ちに全額を要しないので目下のところ同社は自己資金の中で差当りの復旧をなしているが、今後の問題については篤と考え、同社の経営につき支援したいと考え上毛電気鉄道に対しては曩に回答しておいたとおりである。
 小坂、栗原、京成、日立その他の被害を蒙つた各地方鉄道に対しては復旧に要する資材の割当を行つた。
 小坂鉄道に対しては七月下旬の分に対してはセメント、木材、鋼材その他鉄鋼第二次製品を、八月中旬の分に対してはセメントを、それぞれ割当した。同社の復旧工事費は概ね二百万円を要するものと認められ、その中七十七万円を復興金融金庫に申入れているので、これが斡旋をする考えである。
 栗原鉄道に対してはセメント、木材、鉄鋼第二次製品を割当てた。同社の復旧工事費は約二百万円を要し、その中百五十万円の融資を申入れているので、これに対しても斡旋したいと考えている。
 京成電鉄に対してはセメント、木材、枕木、道床砂利、ガソリン、その他カーバイト、銅等復旧所要資材の割当を行い、又復旧工事費は約百万円に達しているが、同社では市内銀行より借入れることとしている。
 日立電労に対してはセメント、木材、道床砂利、ガソリン、その他鋼材、銅等の割当を行つた。同社の復旧工事費は概ね百六十万円の見込みで、その中約百十三万円を復興金融金庫に申入れているので、これについても融資方斡旋したいと考えている。
 以上の外水害を蒙つた地方鉄道に対しては、その被害の程度及び会社の経営状態を調査し、これに要する資材の割当も既に終り、他方被害を受けた鉄道の中復興金融金庫に申入れているものに対しては出来得る限り融資方を斡旋したいと考えている。
 なお災害復旧費に対する補助は、その金額が相当多額にのぼり、現状においては、これを交付することが困難と思われる。