質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第九十二号)昭和二十二年十月二十三日配付

内閣参甲第一〇七号
  昭和二十二年十月二十一日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員三好始君提出農産物供出理論の適用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員三好始君提出農産物供出理論の適用に関する質問に対する答弁書

一 従来の実収主義に基く供出割当が、末端において往々にして政府の意図に反し、耕地面積の多い農家の過剰保有を可能ならしめるような形において決定され、従つてこのような割当を基礎とする超過供出報償制が、やゝもすれば富農的な性格を帯びていたことは否定できない。しかしながら、このような不公正な供出割当を排除しようとするならば、それは単に政府当局者の努力のみによつては、期しうべくもないのであつて、むしろ耕作農民自らの政府に対する協力を仰ぐことによつて始めて達成しうる。その意味において、政府は、昭和二十一年における食糧調整委員会の設立、去る八月の分の公選制への切替、更には本国会提出中の臨時農業生産調整法に基く農業調整委員会への発展を図ることによつて供出割当に対する農民の意思を適確に反映せしめ、富む者も富まざる者も公平な供出義務を負わしめるように努力を続けているのである。従つて供出割当の公正を期しえられるか否かは、むしろ、耕作農民がいかに自らの意思を食糧調整委員会乃至農業調整委員会に代表せしめるかの問題に委ねられていると云つて差支ないであろう。

二 責任供出制がその責任の基礎となるべき個々の農家の生産及び供出条件の実体を把握することによつてのみ合理的に行いうるとの御意見には全く同感であり、そのためには、単なる農事試験場の調査の結果たる一般的数字のみでなく、農村に直結している食糧調整委員会乃至農業調整委員会の実体把握に依存すべきであることも又当然のことである。臨時農業生産調整法によつて農業調整委員会を単なる割当の議決機関に止まらしめず、独立の行政機関として、病虫害の駆除、予防、水利の調整、農業用施設の共同利用に関する指示権をこれに賦与する(同法第十条)のみならず、その使命達成のために農地その他に関する必要な調査を行わしめることとした(同法第十五条)。政府の意図も全くこゝにあるのであつて、その方針のもとに今後の委員会の運営指導を行つて行きたいと考えている次第である。