質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第七十一号) 昭和二十二年十月九日配付

内閣参甲第八三号
  昭和二十二年十月七日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員小川友三君提出米麦供出空俵等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小川友三君提出米麦供出空俵等に関する質問に対する答弁書

一、米麦の現行生産者価格の算出に当つては、基準年度に対する当該年度の農家購入品価格の値上率によるパリテイ計算によつたが、この際基準年度における生産者価格は、完全包装のものの価格であり、従つてその算出価格も完全包装のものの価格である。
 空俵の全量を農家に還元することは、故藁工品の需給事情並に輸送事情等より見て不可能であるが、可及的多量に農村に還元するよう本年二月故藁工品需給調整要綱を定めた。
 尚空俵の売上代金は、地方食糧営団の収入となつているが、手数料の算出に際しては副収入として控除して算出されているため、地方食料営団が不当の収益を得ているとは云い得ない。

二、

(一) 野菜類の価格について
(イ) 新物価体系に基く蔬菜の統制額は、卸売価格を仮りに東京市場の入荷量で加重平均すると一六円三七銭であつて、これから八分を差し引いたものが生産者の市場持込渡しの販売価格(一五円〇六銭)でこれに二割五分を加算したものが小売価格(一八円八二銭)である。
(ロ) 現在、卸売業者の手数量は五分であるが(前項の八分のうち二分は公認出荷機関へ戻しており、一分は各市場間の転送費の補助等に充てるため、知事の監督下に積み立てている。)殊に蔬菜はその腐敗、目減が相当に多い関係を考慮すれば決して多いとはいえない。
(ハ) 小売業者の手数量は二割五分であるが、これも卸売業者の店先から小売店舗までの転送費や最近の入荷減による取扱量の減少、蔬菜の特性である目減が多い等の関係を考慮すれば決して不当な手数料ではない。

(二) 薪炭類の価格について
(イ) 薪一束七円弱の納入に対し、小売値は二十円以上三十円とのことであるが、薪の生産者価格は一束七円弱、小売価格は生産県では十五円前後、消費都府県では十七円前後である。その差額は、納入してから以後の運賃が大部分を占めている。即ち政府は、生産地の山元で買つているので、そこから消費地までの運賃が必要なわけで、薪では運賃を全国的にプールしているので政府買入価格と政府の売渡価格との差額の八割強がその運賃にあてられている実情である。
 従つて、小売価格を大巾に値下げするためには、運賃を大幅に削減することが必要であり、その結果は集荷輸送ができなくなる。
(ロ) 一方薪炭の納入価格即ち生産者価格は、新物価体系の一環として一般農産物及び木材と同様、昭和九年から昭和十一年における標準ものの薪炭の生産者価格を基準として、その生産者価格を構成する各要素について夫々の今日までの適正な値上り率を乗じ、さらに木材などの価格との均衡をも考慮して、決定したものである。
(ハ) 小売業者のマーヂンは生産県の薪では、小売価格に対して約一三%であるが、これは消費者持込渡しを原則としているので、その大部分はそのために実際必要とする運賃、人件費に当るものである。

三、農林省では八月一日に臨時農業センサスを施行し、全国農家に経営面積、稲その他作物の作付面積等の申告を命じた。
 然るにその結果によると本年の稲作付面積は、全国合計二、七七〇、九四二町歩であつて、これは明らかに過小であると考えられる。従つてこの申告面積は実際面積に対比して何%の内輪となつているかを推計するために目下抽出法を用いて実測を行いつつある。それが完了するのは十一月末の予定であつて、これによつて、他方行いつつある坪刈調査の結果と相待つて、相当精密な米の実収高を推計することが可能であると思う。
 ヤミ農地というのは適切ではないと思うが、従来の農地の申告から一部脱漏のあつたことに付ては屡々実例が挙示せられている。しかし農地改革のための一筆調査によつて、この点は可なり改良されたと思われるが、まだ十分ではないと考えられるから、昭和二十三年度には耕地の実際面積の調査に重点を置いた調査を行うよう目下各般の準備中である。その方法としては、目下のところでは、申告を基礎とし、之を地方的利害に動かされない立場にある作物報告事務所をして一部実測してこれを検討せしめる方法を取るのが適当と考えている。なお飛行機写真を応用して農地面積の調査を行うことは、GHQの好意により、一部研究的に行い、全般の調査のチエツク、データにしている。然し、(1)既存のフイルムが全国を覆つていないこと、(2)一筆毎の面積を精密なものたらしめるには、少くも一万分の一の縮尺にて撮つたフイルムが必要であるのに、その点不完全であること、(3)フイルムの貸下げをうけることはできることになつたが、之を印画及び地図にする設備の現状よりして必ずしも速度において大でないこと等の理由によつて、飛行機写真による調査を農地調査の中核とすることは目下の処無理であると考えている。

四、戦災都市に存在する小面積の国有地には、戦災官衙、官舎又は社寺等の敷地、廃道水路敷等があるが、これ等の国有地の外には官庁建築に不適当な小坪数の土地というようなものは存在しないと思われるが戦災都市に存在する小面積の国有地については、公用公共用に供する必要のあるものを除き財政収入を図る目的をもつて積極的に処分する方針を以て、その処理を促進している次第である。